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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は新聞紙は再生されるが
チラシは何に使われるのかというお話。
管理人は毎朝新聞を読んでます。
その古新聞は地区の子供会が
回収しているみたいですね。
そのとき、新聞紙とチラシを
分別してくれとは言われていません。
だからそのまま雑多に回収に出してますね。
それがいいことなのかどうか?
管理人は元製紙会社社員ですから
だいたいのことは分かるのですが、
新聞紙にチラシが混入したところで
特に大きな問題にはなりません。
これは会社によって設備が違うので
絶対大丈夫だとは言えませんが。
もちろん、新聞とチラシや雑誌に
分別回収してくれたほうがいいんですが
それは製紙会社の都合の話で
紙原料としてのリサイクルには無関係。
新聞紙古紙と混ざったチラシ古紙は
リサイクルされて新聞紙になりますから。
では分別されたチラシはどうなるかというと
新聞紙よりは白色度が高いので
再生上質紙や再生コート紙の
原料として使用されるんですね。
全部がそうなるわけではありませんが、
比較的白色度の高い紙に使いやすい。
もとの白色度が高ければ
漂白薬品も少なくて済みますし。
こんな感じで、チラシは新聞紙にも
普通の印刷用紙にも使われます。
ただ、チラシを新聞紙に有効に使うためには
クリアすべき問題点がありました。
ということで。
この記事では、新聞紙は再生されるが
チラシはどうなるのかということについて
管理人なりに調べたことを
お伝えしたいと思います。
新聞紙の再生利用とチラシを有効利用するための中性抄紙化
新聞紙は再生利用されて新聞紙になる。
段ボールと並んで新聞紙は
リサイクルの優等生です。
チラシはどうか?
これは時代によって色々変わります。
まだコート紙がこれほど
普及していなかった頃は
紙はほとんど酸性紙でしたから
新聞紙もチラシも古紙として使えました。
混入していて問題になることはない。
ところが、コート紙が普及して
チラシの多くがコート紙になってから
新聞古紙にチラシを配合するのは
かなりやりにくくなりました。
配合率が低ければいいのです。
しかし、量が増えると問題が発生する。
その原因は炭酸カルシウム(炭カル)。
由来はコート紙の塗料にありました。
コート紙の塗料はクレーと炭カルが
メインの顔料として使用されるのですが、
この炭カルは硫酸があると
泡を出して溶けて石膏になります。
これが問題。
炭酸カルシウムの化学式は
CaCO3で、硫酸があると
CaCO3+H2SO4→CaSO4+H2O+CO2
という感じになるんです。
ここで出てくるCaSO4は硫酸カルシウム。
別名は石膏です。
CO2は二酸化炭素、つまり炭酸ガスですね。
製紙原料として炭酸カルシウムは
良く使われるのです。
しかし硫酸と反応すると石膏になる。
このようにして出来た石膏は
水にはあまり溶けないので
スケール(汚れ)となって設備や
配管に溜まってしまう。
これが問題なわけです。
使用量が少なければ
少々のことはいいんです
しかしこれが増えてくると
操業性がとても悪くなる。
具体的には紙に欠陥が増えて
しょっちゅうマシンを掃除することになる。
装置産業にとっては最悪です。
そしてこれは酸性抄紙の
場合に起こります。
ではなぜそんな事が起こるのか?
酸性抄紙の場合は、サイズ剤の
定着剤として硫酸バンドが使われます。
硫酸バンドは硫酸アルミニウムといいます。
化学式はAl2(SO4)3。
これが水に溶けているんです。
炭酸カルシウムと出会えば
硫酸カルシウムが出来てしまう。
抄紙機の中でこれが発生すると
マシンが汚れるというわけです。
結局、古紙原料の中に
炭酸カルシウムがたくさんあるなら
酸性抄紙に使うのは
良くないということですね。
管理人が勤務していた会社では
こういう現象が起こらないように
一部では事前にタンクで硫酸と反応させて
石膏を沈殿させてからパルプを供給する
といったことをやっていたようですが
もちろんこれは邪道です。
本来は塗料に使われていた炭酸カルシウムを
そのまま紙に再利用するのが筋のはず。
それで結局、新聞紙も中性紙化されました。
もともと中性紙というのは化学パルプでしか
出来ない技術だと思われていました。
しかし技術は進化しました。
WP(紙を溶かしただけ)という「汚いパルプ」
メインの板紙でさえ出来るようになったんです。
段ボールも新聞も原料はほぼ古紙ですから
段ボールで出来て新聞が出来ないはずがない。
ということで中性抄紙化されました。
こんな感じで、新聞古紙にチラシが混ざっても
トラブルが起こらないようになってきました。
古紙配合率も増やしやすくなりました。
また、填料に安価な炭酸カルシウムが
使えるのも重要なところなんですね。
新聞紙は薄いので不透明度が必要。
そのため高価な酸化チタンやユーパール、
ホワイトカーボンといった填料を
使っていましたがそれを少しでも
炭カルに置き換えればコストダウンになる。
そういうメリットもあるんですね。
結局、コート紙のチラシが増えたことと
中性抄紙技術の進化がリンクしたので
新聞紙が中性紙になりチラシ古紙が
新聞にも使えるようになったということ。
そこにコストメリットもあったわけです。
管理人のまとめ
今回は、新聞紙の再生されるが
チラシはどうなるのかついてお話しました。
結論としては、チラシは分別されれば
高白色古紙として再生上質紙や
再生コート紙として使われるが
そうでなければ新聞古紙として使われる。
以前はコート紙由来の炭カルの問題があり
酸性紙の新聞紙には使いにくかったのですが、
中性紙化することで炭カルの問題は克服され
今では問題なく使われるようになっています。
むしろ、炭カルの有効利用が出来るように
中性紙化されたという方が正しいのでしょう。
それにしても。
新聞紙の中性抄紙化は
本当に大英断だったと思います。
これまでのやり方を相当変えないと
出来ないことでしたから。
この記事が新聞紙の再生とチラシについて
考えるときの参考になればと思います。
たまには新聞古紙のことも
考えてみて下さいね!