
紙を溶かすとき苛性ソーダを使うのは?離解しやすくするため
紙を溶かすとき苛性ソーダを使うのははぜでしょうか?実は水だけでもある程度はドロドロになりますが、アルカリ性にしたほうがパルプが膨潤しやすくなり、離解もしやすくなるので使っています。紙を溶かすときに使う苛性ソーダは危険薬品なので取り扱いは要注意です。
紙の知識と雑学の世界へようこそ!このブログでは製紙会社に技術者として16年間勤務した元製紙会社社員が、その経験を元に紙の知識と雑学について語ります。紙に関する悩みを解決する紙のコンサルタント、略して「紙コンサル」として紙に関する本音を公開します!
管理人の紙コンサルこと、
べぎやすです。
このカテゴリでは紙の製造方法
についてお話したいと思います。
就職活動で製紙会社が気になる
理工系の人も中にはいるかと思います。
管理人は元製紙会社社員ですから
紙の製造には色々関係しました。
直接自分が担当したものもあれば
研修で教育を受けたものもあります。
実は紙なんて年中同じことやってて
技術の進化なんてないだろう
なんて思ってたんですけど
それは大間違いでした。
ITのような急激な変化はないですが
それでも環境に合わせた変化はある。
製紙産業は装置産業で
一旦機械を導入すれば
簡単に設備の変更はできないので
変化は緩やかではありますが
そんな中でも設備は改造されるし
新規の薬品も開発されていく。
管理人が入社した平成元年から
現在を見たときの変化だけでも
古紙配合率は上がりましたし
中性抄紙化も進みました。
コート紙は安価になり
チラシに使えるようになりました。
新聞紙は軽くなりました。
このカテゴリでは紙の製造について
管理人の体験を交えてお伝えします。
【紙の製造方法 コート紙の場合】
今やチラシは塗工紙がほとんど。
スーパーのチラシなどは
光沢のあるコート紙
不動産や霊園などは
マットコート紙が多いでしょうか。
昔はもっとキザラや上質紙が
多かったように思います。
本当に塗工していない紙は減って
身近ではコピー用紙やノートくらい。
漫画や週刊誌は中質紙や
更紙もありますが
ゲームやアニメ関連の雑誌などは
コート紙または微塗工紙。
文庫本や教科書用紙でさえ
今は微塗工紙になってます。
それにしても。
コート紙は元々高級品で
特殊紙だったんです。
写真集とか美術品のカタログとか
そういう用途に使うものだったんです。
それがどんどんコストダウンして
品質はそこそこ良くて安い紙に。
今では無料で配るチラシにも
使われるようになりました。
技術の進化という意味では
カッコよさとか派手さとか
そういうのは全然ないんですが、
広く普及するというのも一つの方向。
紙の場合は薄利多売が可能な方向に
技術が進化したと言えるでしょう。
こういうことが可能になった要因は?
管理人は塗工速度の
高速化だと思っています。
通常のコート紙はブレードコーターと
呼ばれる塗工機で塗工されます。
ブレードというのは刃物のことです。
原理は単純で紙に塗料を吹き付けて
それをブレードでかき取る方法。
塗工方式というのはたくさんあるんですが
速度が速いのがブレードコーター。
ロールとかロッドとかエアナイフ、
ダイコーター(カーテンコーター)など
色々な種類があるんですが
特許の問題があるとか速度が遅いとか
ただ紙に塗料を塗るだけですが
色々ややこしかったですね。
それでブレードコーターの原理が単純
といってもキレイに塗れるかは別問題。
特に高速でキレイに塗るのは難しく
ブレードと塗料の性能向上が必要。
もちろん塗工原紙の品質も重要です。
こういうものを少しずつ改善し、
塗工速度500m/分程度だったのもが
1500m/分程度で塗工出来るように
なっていたと思います。
管理人在籍時でその速度でしたから
今はもっと高速化しているはず。
なにしろ16年勤務している間に
塗工速度は3倍になりましたから。
製造されるコート紙の品質は
あまり変わっていませんが、
製造方法は地味に少しずつ進化して
塗工速度は約3倍になったわけです。
技術の進化というのは色々ありますが、
安く作る技術というのもあるんですね。
塗工速度が3倍になるということは
固定費も大幅に下るということ。
単純に1/3になるわけではないにしても
相当なコストダウンです。
ちなみに当時のコーターが1台60億円程度
だったと思いますから、
固定費の低減がどれほど大きいかが
分かるんじゃないでしょうか。
品質を変えずに安く作る技術。
あまりにも地味ですが
重要なことだと思います。
【紙の製造 新聞紙の場合】
新聞紙も品質の変化が分からないよう
徐々に変わっています。
たとえば軽量化。
新聞紙の米坪(1㎡あたりの紙の重さ)は
もともと52g/m2(重量紙)だったのが
1972年に49g/m2(普通紙)
1981年に46g/m2(軽量紙)
1990年に43g/m2(超軽量紙)
2000年に40g/㎡(超超軽量紙)
と軽量化されています。
現在の主流は43g/㎡だそうです。
元々の52g/㎡からすると43g/㎡なら
9g/㎡も軽量化されているわけです。
だいたい2割。
軽量化した理由は新聞配達員の
負担軽減と言われていましたね。
管理人は新聞社がページを
増やしたかったからだと思っています。
なにしろ紙は重量取引。
同じページ数でも米坪が下がれば
購入金額は減るわけですから。
製紙会社側はこの要求に応えるために
色んな対策をしたんですね。
たとえば強度と裏抜け。
米坪が下がれば紙の強度は落ちるので
その対策に表面のサイズプレスで
紙力増強剤(澱粉、PMA、PVAなど)を
塗工したりしています。
なおサイズプレスという装置は
抄紙の乾燥の途中に設置されていて
ロールなどで紙に塗工すること
が出来る設備です。
また米坪が下がれば紙が
薄くなって裏抜けするわけですが
その改善のために様々な薬品を
内添(パルプと混ぜて紙にする)し、
裏抜け対策のために
使用しています。
管理人が在籍していた頃は
ホワイトカーボン(シリカの微粒子)や
ユーパール(尿素樹脂の微粒子)を
使っていました。
最近では中性抄紙化が進んだので
炭酸カルシウムの微粒子が使えます。
新聞紙の場合約20年の時間をかけて
米坪52g/㎡を43g/㎡に下げたわけで
ユーザーが気が付かないペースで
技術は進化しているということです。
【管理人のまとめ】
今回は紙の製造について
お伝えしました。
紙なんて何の技術開発があるんだろう
そんなふうに思ってました。
しかしそれはそれは大きな間違いで
見えない所で変化は起きている。
ペースが緩慢なので分かりにくいですが
着実に進化してるんですね。
ここではコート紙の高速化や
新聞紙の低米坪化を例にしましたが
他の紙でも同様の進化は起こっており
各社とも対応しているということです。
本当にすごい技術は
あっという間に広まりますが
地味なコストダウンなどは
ゆっくり進行してなかなか広がらない。
しかしその部分が生き残るかどうかを
分けているようにも思います。
新聞、チラシ、コピー用紙など
結構紙には囲まれていますから
たまには紙の製造技術の
進化のことも思い出して下さいね!
紙を溶かすとき苛性ソーダを使うのははぜでしょうか?実は水だけでもある程度はドロドロになりますが、アルカリ性にしたほうがパルプが膨潤しやすくなり、離解もしやすくなるので使っています。紙を溶かすときに使う苛性ソーダは危険薬品なので取り扱いは要注意です。
紙の製造コストダウンについて。削りやすいという意味では変動費より固定費の削減が重要になります。たとえばマシンが比較的新しい場合、その設備の減価償却が大きいので増産が一番。薬品など足元にも及びません。紙の製造コストダウンは典型的な装置産業のものです。
紙の原料になる木の種類は何があるでしょうか?植林したユーカリや松を使うことが多いです。それ以外だと広葉樹ではアカシアやポプラ、針葉樹では杉、ヒノキなどになります。また、間伐材も利用されます。紙の原料になる木の種類は色々ありますが安定供給が重要です。
紙のフリーネスは叩解度とも呼ばれます。これはパルプをどれくらいカットしたか、ほぐしたか、を示す指標となる数値ですが、品質にどんな影響を与えるでしょうか?微妙なんですが、地合、強度、紙厚、不透明度などに関わります。紙のフリーネスは操業性にも重要です。
紙の表面強度について。これはある意味永遠の課題とも言えます。特に印刷する場合に重要です。強くすることは出来るのですが、コストが上がります。インクが硬くなるとか、印刷速度が速くなるとさらに対策が必要になります。紙の表面強度はバランスが難しいのです。
コート紙の塗料の成分はどうなっているのでしょうか?主成分はクレー、炭カル、バインダー、それと若干の助剤になります。メインは土と接着剤になります。処方は白紙・印刷光沢のような品質、塗工操業性によって多種類あります。コート紙の塗料は意外と複雑なのです。
紙でリグニンが取り除かれる理由は何でしょうか?それは退色や劣化を防ぐためです。実はセルロースだけならそう簡単には黄色くならないんですが、これがあると日光などで簡単に茶色くなってしまいます。ただし、すべての紙でリグニンが除去されるわけではありません。
段ボールに有害物質はあるのでしょうか?これは通常使用する限りにおいて危険なものは検出されません。特殊な薬品が使われる場合もありますが非常に微量で普通は問題になりません。ただし、段ボールに有害物質がないといっても、食べるとか、そういうことは論外です。
段ボールが茶色なのはなぜか?これは漂白する前の未晒パルプの色になります。実際には古紙が多くなるので黄色の染料を添加して色調を調整しています。また紙は劣化すると黄変化するので退色が分かりにくい利点もあります。段ボールが茶色だと製造に都合が良いのです。
段ボールは衛生的でしょうか?これは生産直後の紙としては重金属が含有されていないなどの検査に合格しており大丈夫です。しかし、製造後の保管状況が悪いと害虫が発生することがあります。つまり、段ボールの衛生はよいのですが環境が悪くなると危険ということです。
パルプの原料は何でしょうか?基本は木材のチップ、丸太、古紙になります。その中で化学的に薬品で処理をする化学パルプと機械ですりつぶす機械パルプがあります。古紙パルプの場合は脱墨、漂白という工程になります。パルプの原料は植物繊維ということでもあります。
製紙工場の水使用量はどれくらい?生産量で変わりますが、比率で言うと紙1トンに水100トン程度。パルプ分散液濃度が約1%という計算です。実際には再生水もあるので増減しますが、良質のものを作るにはキレイな水が必要です。製紙工場の水使用量は膨大なのです。
トイレットペーパーの買い占めには意味がありません。紙不足だというのはデマです。パニック状態になったときになぜ関係ないものがなくなるというウワサが出てくるのかは不明ですが、生産能力は十分あるのでトイレットペーパーを買い占めてもすぐに補充されるのです。
管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。 今回は、紙不足の原因。基本的に供給過剰 なので事故や災害以外はデマというお話...
紙の寿命はどれくらいでしょうか?保管状況によりますが、酸性紙だと50年程度でボロボロになるのですが、中性紙であれば100年以上持つし和紙なら1000年以上です。問題は硫酸バンドという薬品の有無になります。紙の寿命は製造方法によって大きく違うのです。
新聞紙が灰色の理由は何でしょうか?原料、価格、品質の面から都合がいいということです。簡単に説明すると、古紙をメインに使って安くしている、薄くても印刷が裏抜けしないように白色度を低くしていることなどです。新聞紙が灰色の理由はそう単純ではありません。
合成紙の耐熱性なんですが、主成分がポリプロピレン(PP)なので一般の紙より低いです。なので、自然乾燥させる用途であれば問題ないのですがレーザープリンタのようにトナーを定着させるときに加熱される印刷には向いていません。合成紙の耐熱性は高くないのです。
カレンダーの紙質はなにがいいのでしょうか?実はこれは用途によって変わってきます。自作する場合、書き込みが前提ならコピー用紙や上質紙がいいですし、キレイな写真をメインにするなら光沢紙になるでしょう。カレンダーの紙質はどう使うか、で決めるべきなのです。
紙が重い理由は何でしょうか?たとえばコピー用紙1枚だけなら気にもならないのですが、500枚包装のものだとかなりずっしりきます。面積の大きいポスターなんかだったらなおさらです。紙が重いのは、この材料が木材と粘土という密度の高いものが主成分だからです。
原油はトイレットペーパーの原料なのでしょうか?紙の主成分はパルプなので木材です。石油価格が高騰したから生産ができずに買えなくなる、というならそれはデマです。間接的にコストアップになりますが、原油とトイレットペーパーの製造にそれほど関係はありません。