印刷の劣化は何故起こる?インクやトナーの退色防止対策

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管理人の紙コンサルこと、
べぎやすです。

このカテゴリでは印刷の劣化について
お伝えします。

印刷物はだいたい退色しますよね?

写真なんかでも古いものはセピア色
だったりしますし。

特に古い屋外のポスターなどは
変色が激しいですよね。

印刷インクは特に光で劣化しますから。

しかし印刷の劣化も一律じゃない。

劣化しやすいものと
そうでないものがあります。

ではその原因は何なのか?

このカテゴリでは印刷の劣化原因や
印刷方式やインクによって

劣化度合いが違う理由を
自分なりにお伝えしたいと思います。

【印刷の劣化の原因と対策】

印刷物が劣化するというのは
紙が劣化することと

インクが退色することに
分けられます。

紙はリグニンが含有されていると
光による退色が激しい。

酸性紙の場合は
硫酸バンドの影響で紙が劣化します。

印刷インクは染料系だと
光による退色が激しい。

いずれにしても劣化の主な原因は光。

だからなるべく光が当たず
温度湿度が安定している

冷暗所のような場所で
保管するのが良いということです。

<印刷インクについて>

印刷インクは千差万別で
印刷方式によっても、

使用用途によっても
様々な種類があります。

耐光性に関して言えば、
一般的に顔料系が光に強く、

染料系が光に弱い、
と言われています。

たとえば通常のオフセット印刷は、
インクの成分が顔料と樹脂で

50%を占めているので
顔料系だといえます。

またコピーやレーザープリンタは
トナーが使われますが、

このトナーは顔料系ということで
比較的光に強くなっています。

一方家庭用インクジェットプリンタは
ほとんど水性の染料インクです。

耐光性を考慮したインクとして
顔料タイプもありますが、

現実的にほとんどの家庭で
使用されているのは染料インクです。

だからインクジェットの印刷は
レーザープリンタの印刷より

劣化しやすい、
ということになります。

ではなぜインクジェットインクは
染料タイプなのか?

まず染料と顔料の違いについて
説明しておきます。

染料は分子レベルで
水などに溶解していて紙に浸透する。

顔料は粒子が大きく
溶剤などに分散していて紙に付着する。

(分散というのは溶けているのではなく、
溶剤の中に粒子が浮いている状態です)

染料の方が発色はいいですが、
分子レベルなので光には弱い。

一方顔料は発色はそこそこですが
粒子が大きく光には強い。

イメージとしては、
発色している分子が電球だとすると

染料は一個の強く発色する分子で
それが壊れたら発色できなくなる、

という感じですが、

顔料はそこまで強く
発色はしていませんが

染料が凝集したようなもので
光で部分的に粒子が壊れても

全体としてはまだ発色できる、
そんな感じです。

ではなぜインクジェットだけ
染料インクが使われるのか?

それは印刷方式と
密接な関係があります。

インクジェットの場合は、
1pL(ピコリットル,1兆分の1L)

液滴の大きさは直径約15μm
(マイクロメートル、100万分の1m)

という微量のインクを
ノズルから噴射して印刷するので、

このノズルが詰まったら
終わりなんですね。

そうなると粒子の大きい顔料は
ノズル詰まりが恐いので

水に溶けている染料の方が
都合がいいというわけ。

実はインクジェット用顔料インク、
開発はされています。

というか、

自分がまだ製紙会社に勤務していた
平成14年頃にはもうありました。

でも一般にはまだ普及していない。

どうも一般的には顔料インクなんて
必要とされていないみたいです。

管理人も正直言うと、
インクジェットで写真印刷しても

そんなに保存性を気にしませんし、
もしも退色したとしても

データが残っていたら
また印刷出来るので、

価格の高い顔料用インクジェットとか
わざわざ使わないんですよね。

それにインクジェット印刷するなら
染料タイプの方が発色がいい。

特に写真のように
高画質なものほど仕上がりがいい。

ということで
一般的なインクジェット印刷は

染料タイプのインクを使うことになり
特に光に弱いということです。

インクジェット以外のインクは
大抵の場合顔料タイプです。

オフセット用印刷のインクも
レーザープリンタ用のトナーも顔料。

だからそこまで光に弱くはないですが、
それでも光で色素は壊れます。

ですから顔料タイプが
劣化しないということではなく

劣化するまでの時間が長いとか
徐々に劣化するということです。

【印刷物を飾る場合の劣化対策】

ここまで印刷インクは光で劣化すると
お伝えしました。

しかし光に飾っている写真やポスターは
どうすればいいのか?

たとえば額縁に写真を入れるようなら
前面板としてアクリル板を使うのがいい。

実はアクリル板は可視光は通しますが、
紫外線(UV)は90%程度吸収します。

光の中でもエネルギーが強いのは紫外線。

ですからアクリル板を使うと
紫外線の影響が軽減されるというわけ。

遺影とか記念写真とか
そういう場合は検討の余地があるでしょう。

部屋にポスターを貼る場合などは
ちょっと対応は難しいと思いますが。

後は自分で印刷したものなら
古くなったら再度出力する方が現実的。

この辺は臨機応変に
対応した方がいいと思いますね。

【管理人のまとめ】

今回は印刷の劣化のお話でした。

印刷物が光によって劣化するのは
避けられないことです。

特に染料系のインクを使っている
家庭用インクジェット印刷の場合、

顔料系インクを使用している
他の印刷に比べて劣化速度が速い。

なるべく劣化を防ぐなら
冷暗所に保存するのがいい。

そしてデータがあるのなら、
古くなったら再出力。

このあたりは臨機応変な対応が
必要かなと思います。

紙もそうですが印刷物も劣化します。

そしてそれは避けられない。

大切な印刷物は丁寧に扱って
少しでも寿命を延ばして下さいね!

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