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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は、身近なあれも?セルロースナノファイバー使用の日用品と驚きの効果、というお話。
「セルロースナノファイバー」という言葉を聞くと、何となく研究室や工場で使われる未来の素材というイメージがあるかもしれません。ところが実際には、セルロースナノファイバー(CNF)はすでに私たちの身近な製品にも使われ始めています。紙や木材などに含まれるセルロースをナノサイズまで細かくしたCNFは、非常に細い繊維でありながら、軽さ、強度、保水性、増粘性、分散性など、さまざまな特徴を持っています。こうした性質を生かして、紙おむつや吸水ケア用品、ボールペン、化粧品、シャンプー、トイレクリーナー、スポーツ用品などへの応用が進められてきました。
しかも、CNFは製品そのものをすべて置き換える材料として使われるとは限りません。ごく少量を添加することで、液体の粘度を調整したり、消臭機能を高めたり、樹脂を強くしたりする「機能性添加剤」として使われるケースもあります。
ここでは、セルロースナノファイバーとはどのような素材なのかを整理しながら、実際の日用品への利用例と、なぜCNFを加えることで性能が変わるのかを詳しく紹介します。
ということで。
この記事では、身近なあれも?セルロースナノファイバー使用の日用品と驚きの効果、について管理人が調べたことをお伝えしたいと思います。
セルロースナノファイバーとは?
セルロースナノファイバーは、英語では「Cellulose Nanofiber」と表記され、一般的に「CNF」と略されます。
名前の通り、植物などに含まれるセルロースを非常に細い繊維状にした素材です。木材をチップ化してパルプにするところまでは、紙の製造工程と似ています。その後、化学的処理や機械的処理などによってパルプをナノレベルまで細かくしていきます。近畿経済産業局によると、CNFは直径数~数十ナノメートル程度の繊維状物質です。
1ナノメートルは10億分の1メートルなので、一般的な繊維と比べると非常に細いことが分かります。
この「細さ」がCNFの特徴を生み出す重要なポイントです。繊維が極めて細かくなることで表面積が大きくなり、水やほかの材料との接触が増えます。その結果、普通のセルロースとは異なる粘性や分散性、補強効果などを発揮できるようになります。
CNFにはどんな特徴がある?
セルロースナノファイバーが注目されている理由は、一つの性能だけではありません。複数の特徴を持っていることが大きなポイントです。
- 軽くて強い
- 非常に細い繊維である
- 比表面積が大きい
- 熱による寸法変化が小さい
- ガスバリア性が高い
- 水中で特徴的な粘性を示す
- 植物由来のバイオマス素材である
日本製紙グループもCNFの特徴として、軽量・高強度、超極細繊維、広い比表面積、低い熱膨張、ガスバリア性、水中での特徴的な粘性などを挙げています。
そのため、CNFの用途は「強い材料を作る」だけに限定されません。
例えば、液体に少量加えて粘度を調整する、成分を均一に分散させる、保水性を高める、シートに機能を持たせるといった使い方もできます。
この幅広さが、日用品への応用につながっています。
身近な日用品その1:紙おむつや吸水ケア用品
CNFの実用化例として特に興味深いのが、紙おむつや吸水ケア用品です。
CNFそのものを大量に使って紙おむつを作るというより、CNFに機能を持たせてシートとして利用する方法が実用化されています。
日本製紙クレシアでは、TEMPO酸化CNFに抗菌・消臭機能を付与してシート化し、大人用紙おむつや女性用吸水ケア用品に利用しています。2015年には、抗菌・消臭機能を持つCNFシートの実用化が行われました。
ここで重要なのが、CNFの「表面積の大きさ」です。
ナノサイズの細い繊維は、同じ量の材料でも表面積を大きくできます。その表面に機能性成分を担持させることで、消臭などの機能を発揮させる設計が可能になります。
つまりCNFは、単なる「植物由来の繊維」ではなく、機能を持たせるための土台としても利用できるわけです。
身近な日用品その2:ボールペンのインク
意外に感じるかもしれませんが、CNFはボールペン用の水性ゲルインクにも応用されています。
ボールペンのインクでは、液体として流れやすいことと、紙に出たときに適切な状態になることの両立が重要です。
CNFは水中で特徴的な粘性を示すため、インクの粘度をコントロールする材料として利用できます。CNFの実用化事例として、水性ゲルインクやボールペンが挙げられています。
これはCNFの「チキソ性」と呼ばれる性質とも関係します。
チキソ性とは、力が加わると粘度が低下し、力がなくなると再び粘度が高くなるような性質です。
例えば、液体を静置しているときにはある程度の粘りがありながら、ペン先から押し出されるときには流れやすくなる、といった性質を利用できます。
「ボールペンとナノ素材」というと意外な組み合わせですが、実際にはCNFの物理的な特徴が筆記具の使いやすさにつながる可能性があります。
身近な日用品その3:シャンプーやコンディショナー
CNFはシャンプーやコンディショナーなどの化粧品・日用品分野にも応用されています。
ここで活用される代表的な特徴が「増粘性」「保水性」「分散安定性」です。
CNFの水分散液は静置した状態では高い粘度を示します。一方で、力を加えると流れやすくなる特徴があります。大王製紙の研究情報では、CNFを利用した液体の粘度コントロールや、スプレー用途に関係するチキソ性についても紹介されています。
シャンプーなどの製品では、単純に「粘ければよい」というわけではありません。
容器の中では適度な粘度があり、液だれしにくい一方、ポンプを押したときにはスムーズに出てくると使いやすくなります。
CNFの独特な粘度特性は、こうした製品設計に活用できる可能性があります。
さらにCNFは水との親和性が高く、保水性を生かした化粧品用途も研究・実用化されています。日本製紙グループでは、CNFについて泡質改善、乳化・分散安定、保湿、さらっとした触感などの化粧品用途が紹介されています。
身近な日用品その4:化粧水やクリームなどの化粧品
化粧品分野もCNFの特徴が生きる代表的な用途です。
化粧水や乳液、クリームなどでは、水と油、さまざまな成分を安定した状態で混ぜ合わせる必要があります。
CNFは水中で粒子や油などを分散させ、状態を安定させる機能が期待されています。また、増粘剤として少ない量でも粘度を調整できる場合があります。
さらに、CNFは非常に細い繊維がネットワーク状の構造を作りやすいため、製品のテクスチャーを調整する素材としても研究されています。
ただし、「CNF配合=必ず肌に良い」という単純な話ではありません。
化粧品では、CNFの種類や処理方法、配合量、ほかの成分との組み合わせによって性能が変わります。そのため、CNFそのものの特徴だけでなく、最終製品としてどのように設計されているかを見ることが重要です。
身近な日用品その5:トイレクリーナーやペーパークリーナー
CNFは掃除用品にも利用されています。
実用化事例としてトイレクリーナーやペーパークリーナーが挙げられており、紙製品の機能性を高める素材として研究・開発されています。
CNFは紙や繊維との相性が良いため、シート状の製品に機能を持たせる用途との相性があります。
また、CNFは繊維同士の結びつきや材料の構造に関係するため、紙の強度や形状保持などを改善する方向でも活用できます。
「掃除用シートにナノ素材」というと特殊な製品に感じますが、CNFはもともと植物由来のセルロースをベースにした素材です。紙やパルプから出発していることを考えると、紙製品への応用は比較的イメージしやすい分野ともいえます。
身近な日用品その6:スポーツシューズ
CNFは日用品だけでなく、スポーツ用品にも利用されています。
代表的な用途の一つがシューズです。
CNFを樹脂などと複合化することで、軽量化や強度、耐久性などを高める方向で利用できます。CNFを使ったシューズが商品化され、多数販売された事例も紹介されています。
ここでは「添加剤」として液体の性質を調整する用途とは違い、CNFを材料そのものの補強に使うという考え方になります。
CNFは軽量でありながら高い強度を持つため、樹脂やゴムなどに組み合わせることで、軽くて丈夫な複合材料を作ることが期待されています。
スポーツ用品では、軽さと耐久性の両方が重要です。
そのため、CNFの「軽くて強い」という特徴を活用しやすい分野といえます。
身近な日用品その7:家庭用品の樹脂製品
CNFは、プラスチック製の家庭用品にも応用されています。
CNFを樹脂に混ぜることで、樹脂の剛性や寸法安定性などを高める研究・商品化が進められています。
経済産業省関連の資料では、家庭用品分野でCNFと樹脂を複合化した製品開発の事例が紹介されています。CNF複合化によって軽量化や寸法安定性、剛性の向上などが期待されています。
ここで面白いのは、CNFを加えることで「単に強くする」だけではなく、製品の触ったときの質感などにも影響する可能性があることです。
家庭用品は、強度だけでなく、持ったときの感触や重量感、成形後の寸法安定性なども重要です。
CNFはこうした複数の性能をまとめて改善する材料として研究されています。
なぜCNFを少量加えるだけで効果が出るの?
CNFの大きな特徴は、非常に細い繊維であることです。
細くなることで比表面積が大きくなり、周囲の材料と接触する面積が増えます。
例えば、樹脂にCNFを加えた場合、CNFの細かな繊維が樹脂の内部に分散し、材料を補強する役割を果たします。
一方、液体に加えた場合は、CNFの繊維が水中でネットワーク状の構造を作ることで、流動性や粘度に影響を与えます。
つまり、CNFは「細いからこそ、少量でも材料全体に影響を与えやすい」という特徴を持っています。
もちろん、どんな製品でも少量で劇的な効果が出るわけではありません。CNFの種類、繊維の長さ、表面の化学的性質、分散状態、添加量、組み合わせる材料などによって性能は変わります。
CNFを活用する技術では、この「どのCNFを、どのように、どのくらい使うか」という材料設計が重要になります。
CNFは環境にやさしい素材なの?
CNFが注目される理由の一つに、植物由来の素材であることがあります。
原料として木材などのセルロース資源を利用できるため、化石資源由来の材料とは異なる選択肢として期待されています。
また、CNFは軽量化や材料使用量の削減につながる可能性があるため、製品全体の環境負荷低減という観点からも研究されています。
ただし、「植物由来だから、どんな場合でも環境にやさしい」と考えるのは適切ではありません。
CNFを作るためには、原料の調達、化学的・機械的な処理、乾燥や輸送などの工程があります。製品としての環境性能を評価するには、CNFだけではなく、製造から使用、廃棄・リサイクルまでを含めて考える必要があります。
特にCNFは、製造コストが高いことが実用化における課題の一つとされています。高性能な素材であっても、安定して低コストで製造できなければ大量普及は難しくなります。
セルロースナノファイバーの課題は「作ること」だけではない
CNFには多くの可能性がありますが、普及にはいくつかの課題があります。
まず挙げられるのが製造コストです。
CNFは原料となるセルロース自体は豊富でも、ナノサイズまで微細化するための処理に技術やエネルギーが必要になります。
また、CNFを乾燥すると繊維同士が強く結びつき、再び水中へ均一に分散させることが難しくなる場合があります。そのため、用途によっては水分散液の状態で取り扱ったり、表面を化学的に改質したCNFを使用したりするなど、製品に合わせた工夫が必要です。
さらに、CNFは種類によって性質が大きく異なります。
機械的に細かくしたもの、TEMPO酸化などの化学的処理を施したもの、カルボキシメチル化したものなど、製造方法によって水への分散性や粘度、他材料との相互作用などが変わります。
そのため、「CNFなら全部同じ性能」と考えず、用途ごとに適したCNFが選択されていると考える必要があります。
これからCNFの日用品は増える?
CNFはすでに一部の日用品で実用化されていますが、今後さらに用途が広がる可能性があります。
現在は、化粧品、食品、インキ、シート、ヘルスケア用品など、CNFの特徴を比較的少量で活用できる分野が先行しています。産業界では、機能性添加剤として利用する方向と、樹脂やゴムなどに複合化して材料そのものを高性能化する方向の両方で開発が進められています。
特に、増粘、分散、保水、補強、軽量化、消臭など、CNFが持つ複数の特徴を組み合わせることで、新しい製品が生まれる可能性があります。
すでに実用化されている製品を見ても、CNFは「CNFで作った製品」という形で目立つとは限りません。
むしろ、ボールペンのインクや紙おむつ、化粧品、掃除用品などの中に、機能を向上させる材料として組み込まれているケースがあります。
そのため、今後CNFの利用が広がったとしても、消費者が「これはCNF製品だ」と意識する機会は少ないかもしれません。
気付かないうちに、身近な製品の性能を支える素材になっていく可能性があります。
管理人のまとめ
今回は、身近なあれも?セルロースナノファイバー使用の日用品と驚きの効果、というお話でした。
セルロースナノファイバーは、木材や植物などに含まれるセルロースをナノサイズの細い繊維にした素材です。
非常に細い繊維であることから、軽量・高強度、広い比表面積、保水性、増粘性、分散安定性など、さまざまな特徴を持っています。
そして、その特徴はすでに日用品にも活用されています。
- 紙おむつ・吸水ケア用品:抗菌・消臭機能を持つシート
- ボールペン:水性ゲルインクなどの粘度調整
- シャンプー・コンディショナー:増粘や分散安定など
- 化粧品:保湿、乳化・分散安定、テクスチャー調整など
- トイレクリーナー:機能性シートへの応用
- スポーツシューズ:軽量化や強度・耐久性の向上
- 家庭用品:樹脂との複合化による剛性や寸法安定性の向上
特に興味深いのは、CNFが製品の主材料になるだけではなく、「少量を加えることで製品の性能を変える」機能性素材として使われている点です。
「植物から作られたナノ素材」というと遠い未来の技術に感じますが、実際にはすでにボールペンや紙おむつ、化粧品、掃除用品など、生活に近いところで実用化が進んでいます。
今後、製造コストや分散・加工などの課題が解決されていけば、CNFはさらに多くの日用品や生活用品に使われる可能性があります。気付かないうちに、身近な製品の「使いやすさ」「丈夫さ」「軽さ」「保湿性」「消臭性」などを支える素材として、CNFが活躍する時代が広がっていきそうです。
セルロースナノファイバー、上手く使われるといいですね!
(参考)
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セルロースナノファイバー(CNF)のメリット・デメリット
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