管理人の紙コンサルこと、
べぎやすです。
このカテゴリのお話は
紙の違いについてです。
紙の違いが起こる理由って
何だと思いますか?
管理人の考えでは
用途が増えるからだと思います。
それぞれの目的に合った紙を作る。
当たり前のことなんですが
そうやって種類が増えていると。
新しい用途が出てくれば専用紙を作る。
考えてみればそうやって
新商品の開発をやっていました。
このカテゴリでは紙の違いが起こる理由と
何がどう違うのかについて
具体的な例をあげて
お伝えしたいと思います。
【紙の違いが起こる理由】
紙の違いが起こる理由は
用途に合わせるため。
小さな変更によるものから
大掛かりなものまで色々あります。
いくつか例を挙げてみます。
まず酸性紙と中性紙。
見た目は同じですが抄紙PHが違う。
一般紙質としての
重さや厚さ、色調などが同じでも
使われている薬品が違うので
抄紙技術としては大違いです。
これは長期保存出来る用途のために
開発された紙ということになります。
次に古紙配合品。
再生上質紙とか
古紙入り上質紙と呼ばれるもの。
本来上質紙というのは
バージンパルプ100%の紙なので
古紙入りというのはおかしいんですが
そういう用途が出てきたということ。
これも見た目は上質紙と同じですが、
技術的にはずいぶん違います。
主に原料側の問題で
古紙パルプの漂白度合いとか
夾雑物を少なくするとか
そういう部分でずいぶん違います。
見た目は同じでも
内容や種類は違うんですね。
それから上質系インクジェット用紙と
コピー用紙と上質紙。
これらも見た目は同じですが
中身が違います。
インクジェット用紙はインクジェット用、
コピー用紙はコピー用。
上質紙は印刷用紙とか筆記用紙。
それぞれ用途が違うんですね。
インクジェット用紙とコピー用紙は
今では兼用紙が多いですが、
インクジェットプリンタが
良くなる前は明確に別れていて、
インクジェットプリンタで
コピー用紙を使ったら
にじんでしまって印刷できない、
という状態でした。
もともとは上質紙だけでしたが
コピー機やインクジェットが登場し、
それに合わせて紙の種類が増えた
ということです。
見た目が同じようでも
品質が違うということでは、
白い封筒に使われる晒クラフト紙と
上質紙も違いますね。
どちらも白い紙ではあるんですが、
晒クラフト紙の方が紙力が強い。
何が違うかというと
パルプ配合が違います。
色が白いパルプは
晒クラフトパルプになるんですが、
針葉樹から作られるとNBKP、
広葉樹から作られるとLBKP
と呼ばれていました。
針葉樹というのは、松などが原料、
広葉樹というのは、ユーカリなどが原料。
葉っぱの形が
針状なら針葉樹、広ければ広葉樹です。
こんな樹木の種類が
何の関係があるのかということなんですが、
実は針葉樹の方が
広葉樹よりも繊維が長くて紙力が強い。
逆に広葉樹の方が繊維が短いので
表面が滑らかになりやすい。
だから白い封筒の場合は
針葉樹から作られるパルプNBKPが多く、
上質紙の場合は
広葉樹から作られるLBKPが多い。
これは色が白いということで
見た目は似ているのですが
用途は包装用紙と印刷用紙ですから
種類としてはまったく違う紙です。
【紙の違い 用途が同じで品質が違う】
ここまで紙の違いについて
いくつかの例を挙げました。
これまでとは逆に、
用途が同じでも微妙に品質が違うため
種類が増えてしまう、
というパターンもあります。
たとえば新聞紙。
何気なく毎日見ていると思いますが
実は各新聞社ごとに紙は違います。
正直言うと微妙な違いなのですが
製紙会社からすると明確に違います。
○○新聞社向けの新聞用紙
ということになるんですね。
新聞の米坪(1㎡あたりの重さ)は
何パターンかあります。
こんな感じ。
XL紙(超々軽量新聞用紙)40.5g/㎡
SL紙(超軽量新聞用紙)42.8g/㎡
L紙(軽量新聞用紙)46.2g/㎡
名前に「軽量」と付いているのは
以前はもっと重かったということ
それが淘汰されて現在に至ると。
各社とも米坪にこだわりがあったり
色調にもこだわりがある。
極端なところでは
新聞抄紙機の真ん中の部分だけとか、
印刷トラブルを避ける意味なんですが
そういう要望もありました。
製紙会社としては出来るだけ
品質を同じにしてもらって
ロットを大きくしたいところですが
なかなか簡単にはいかなかった。
せっかく品種統合しても
また米坪を下げたいとか
そういう要望が出るわけで
キリがなかった記憶があります。
そういう意味では
書籍用紙も似たようなものでした。
こちらのほうがロットは少ないし、
こだわりは強い。
しかも新聞と違って
ガンガンと値下げ要求が来る。
製紙会社としては
色調がちょっと変わっただけでも
品種が増えて
管理のコストや手間がかかる。
用途は同じなのに
なんでこんなに品種を増やすのか、
差別化と言われたらそれまでですが、
何だか理不尽だと思ってましたね。
【管理人のまとめ】
今回は紙の違いについてでした。
紙の違いは用途による。
用途が増えていく中で
種類が増えて違う紙になっていく。
そんなお話でした。
具体例もいくつかお話しましたが、
元製紙会社社員としては
むやみに品種を増やさないでくれ
という気持ちが強かったですね。
いずれにしても。
紙の違いは必要あってのこと。
見た目が似ていても中身は違う。
用途に合った紙を作っているので、
その種類を使って欲しい。
たかが紙ではありますが
色々工夫をしています。
紙とは上手く付き合って下さいね!