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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は、コート紙の品質レベルの
ポイントは印刷仕上が重要というお話。
管理人は元製紙会社社員で
コート紙の担当をしたこともあります。
管理人が入社したのは平成元年。
当時は、コート紙のラインアップが
出揃って少し経過した頃だと思います。
管理人が勤務した会社では
新しいコーターが出来て
これからガンガンコート紙を
作って売るぞという感じ。
ちょうどバブル真っ只中ですから
勢いもありましたね~
今のように紙の需要が減少するとか
そんなことは考えもしなかった頃。
今思えばしあわせな時代でした。
それはそうとして。
このコート紙なんですが、今では
新聞のチラシなんかにも使われる。
周りを見渡しても至るところにあります。
チラシやポスター、カレンダー、写真集、
雑誌の一部もコート紙がありますね。
管理人のように古い人間からすると
本当にずいぶん増えたと思います。
ところでこのコート紙、一番の
品質のポイントはなんでしょうか?
もちろん紙としてのポイントは
色々あるんですけどやっぱり
一番の重要項目は印刷
仕上がりということでしょう。
紙に塗料を塗るのは印刷上がりを
改善するのが目的ですからね。
では、それで何が改善されるのか?
ということで。
この記事ではコート紙の品質レベルの
ポイントは印刷仕上がりということについて
管理人の調べたことを
お伝えしたいと思います。
コート紙の品質レベルのポイントは印刷上がり
先程までにお話したとおりコート紙の
品質レベルのポイントは印刷上がり。
これが最も重要です。
ただこれ、単純に数値で
確認できるものではありません。
それが難しいんですよね。
指標は色々あるんですが。
たとえば印刷光沢。
これは印刷したあと、印刷面の
光沢度がどれくらいかという数値。
光沢計というのがあるので
簡単に測定することは出来ます。
そして、通常は塗料を塗れば
印刷光沢は上がります。
基本的にこの数値が高いほど
高級なコート紙ということになる。
ところが。
印刷光沢が高ければそれでいいのか
というとそんなに簡単ではありません。
光沢が高いと言っても、上品か下品か
というようなポイントがあるんですよね。
単純にギラギラと光っているだけだと
なんだか下品な感じがする、となる。
同じ光沢度だったとしてもその光り方が
均一で上品なものが好まれる。
こういうのってなかなか難しいんです。
上品か下品かなんて人間の主観。
共通認識としてはありますけど
測定した数値にはなりにくい。
仕方がないから官能試験ということで
何人かに点数をつけてもらって評価する。
そういうことになるわけです。
しかもその評価する人は偏ってはいけない。
そんな紙の開発をしているのは
たいていはおっさんですが
その紙が良いか悪いかの実際の
評価をするのは若い女性だったりする。
ポスターにしても雑誌にしても
購入する人が喜ぶかどうかなわけで
アイドル雑誌なんかだと女子高生とか
そういう人が見ることになるわけで。
車のカタログなんかなら開発している
おっさんでちょうどいいんでしょうけど。
美術品のカタログだったらもうちょっと
年配の人の目が必要でしょうし。
こういう作業どうしても感性の
問題から逃れられないんです。
現実には仕方がないので評価機関に
頼んだりすることもあるんですけど
こういうところでもやることは変わらないので
その評価は正しいのか分からないんですよね。
しかも厄介なことに人間の目は
センサーとしてはかなりハイレベル。
なんとなくいいとか悪いというのが
やっぱり評価に出てきてしまう。
開発者は本当に難しいところを
どうにかしようとしているわけです。
それはそうとして。
まあとてもややこしいお話なんですが
基本的にやるべきことは決まっています。
光沢を上げるということで言うと
なるべく紙面を平滑にすること。
上品な紙にするならなるべく
均一な地合いの原紙を使うこと。
そういう感じなんですよね。
ところがまたそれが厄介。
紙面を均一にしたいなら塗料の
粒子径を小さくすれば良いんです。
そうすれば表面の隙間が減りますから。
ところがそんな塗料を作ると
操業性がとても悪くなる。
塗工したときに欠陥が多発するとか
速度がサッパリ上がらないとか。
しかも、白紙光沢、これは白紙状態で
印刷前の光沢ですが、これは上がるが
問題の印刷光沢が上がらないという
結果に終わることもあるんですね。
印刷光沢を上げるにはラテックス系の
バインダーを増やせばいいとか
そういうこともやってましたがそうすると
コストが上がって採算が取れない。
サチンホワイトのような針状の
顔料を使えばいいとか
そういうのもありましたが塗料のPHが
これまでと違うので操業しにくいとか。
こういうのって頭で考えて行けそうでも
実際にやってみると失敗することが多い。
実験を繰り返してようやくこれくらいで
と妥協して製品になっていくわけです。
たかだかコート紙の印刷光沢でも
結構手間ひまかけて開発します。
当たり前のことが当たり前で
あるのはありがたいことなのです。
印刷光沢以外の印刷品質
それから、もっと難しいのは
印刷光沢以外の印刷品質。
先程お話したように上品な
印刷仕上がりになるかどうか。
これはかなり好みもあるんですが
実は最も問題なのは塗工原紙。
この塗工する前の原紙の地合いが
上品かどうかのポイントになります。
どういうことか?
塗工原紙というのは実際のところ
上質紙になるわけですが
この上質紙の地合い、紙の均一性が
いいかどうかが問題なわけです。
地合いが良ければ塗工後の
表面状態が良い。
均一で落ち着いたムラのない
印刷上りになるんですね。
逆に地合いが悪くてムラがあれば
それが印刷品質にも出てきます。
下品な感じになるということ。
下手をすると塗工しないほうが
良いんじゃないかというくらいになる。
実はこのスッキリした印刷上がりとか
そういう部分は総力戦みたいになります。
つまり、パルプ品質、抄紙工程、塗料、
塗工工程の全体レベルが求められる。
どこかがダメだと結局ダメ。
そういう品質になるんですね。
技術部や開発部がいくら塗料を
頑張って開発したとしても
パルプ部門や抄紙部門のレベルが
低いとサッパリということです。
日頃から品のいい上質紙を製造
しているところならいいんですけど、
塗工原紙だけ地合いの良い紙を
と言われてもそれは無理ですよね。
なので、工場の総力戦。
印刷光沢が高いだけの紙なら
まだなんとかなるでしょう。
しかし、上品な印刷上がりの
紙となると地力が必要なんです。
管理人のいた会社でもそれは
分かっていましたが
実現したのかと言われると
体質的に無理だったんですよね。
どこまでも大量生産大量消費で
薄利多売を追求してましたから。
管理人のまとめ
今回は、コート紙の品質レベルの
ポイントは印刷仕上というお話でした。
これは当然のことで印刷品質を
改善するために塗料を塗工する。
しかし、これがなかなか厄介なこと。
印刷光沢を上げるにしても
色々と試行錯誤が必要ですし、
数値にならない印刷品質として
上品な印刷仕上がりがありますが
これを向上させるには工場の総力戦
みたいなところがあって難しい。
会社の地力が問われる感じです。
おそらくそれは今でも続いているでしょう。
管理人がいた頃よりはずっと
レベルは上がってるでしょうけど。
この記事が、コート紙の品質レベルの
ポイントの参考になればと思います。
コート紙の開発も奥が深いですよね!