紙を白く見せる工夫。製造工程でどんなことをしているのか?

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紙 白く見せる管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。

今回は、紙を白く見せる工夫で製造工程では
どんなことをしているのかというお話。

管理人は元製紙会社社員ですから
このようなお話はある程度できます。

技術的なことは後でお話するとして
なぜ紙は白いんでしょうか?

もうちょっと言うとなぜ白い紙が
上質なものだと思われているのか?

管理人はこれが不思議なんですよね。

よく考えてみると紙は白だけじゃない。

本当に白いのは上質紙だけ。

ノートの紙とかコピー用紙、書籍、
チラシやポスターは白いです。

しかし新聞紙や段ボールは白くない。

マンガの本も雑誌も白くない。

色上質なんて色がついているわけだし。

白いと思っているだけで
白くないものも結構ある。

しかし、紙は白いと言われるんですよね。

本当は白く出来るのであって
何もせずに白いわけじゃない。

これはやっぱり文化の問題で白が
いいという価値観があるんでしょう。

人間が元々持っているものなのか
後から刷り込まれたのかは不明ですが。

少なくともこのブログを読んでいる人は
白い紙は上質なものだと思っているはず。

色がくすんだ再生紙は真っ白じゃないから
イマイチで安いなら上質紙が良いと思うはず。

それに、白い紙は上等なものだから
値段も高いと思っているでしょう。

管理人もそう思ってましたし。

製造する側からすればかつては白い紙が
高かったですが今はなんとも言えません。

でもやっぱり白い紙は良い紙だと思います。

かなり強力に洗脳されているんですよね~

実際、神社に行けば神主さんは白い服だし
巡礼の人や亡くなった人は白装束。

管理人の目から見ると色彩のない
白と黒はなにか特別な色に思えます。

やっぱり文化として深いものなんでしょう。

それはそうとして。

では紙を白くするために
どんな工夫をしているのか?

ということで。

この記事では、紙を白く見せる工夫で
製造工程ではどんなことをしているのか

管理人の体験や調べたことを
お伝えしたいと思います。

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紙を白く見せるために各製造工程でやっていること

パルプ製造工程

白い紙を製造するときに。

一番重要なのはパルプ。

紙はパルプが主原料ですからね。

だからパルプを白くしないと話にならない。

ところでパルプの元は木材なんですが
木材はそんなに白くないですよね?

だからこれを漂白するわけです。

パルプには、

大きく分けて木材をすりつぶして
パルプにする機械パルプと

木材から薬品を使って茶色い成分の
リグニンを取り除く化学パルプがあります。

この化学パルプをさらにオゾンや二酸化塩素で
漂白して晒クラフトパルプを製造します。

機械パルプでも元々の木材の色が白くて
それをさらに薬品で漂白するのもあります。

しかしそれは日本では
白い紙の主流ではありません。

これには理由があります。

ひとつには、木材は時間が経過すると
茶色くなって白色度が下がること。

日本国内の木材はコストが高いので
原料は海外からの輸入になりますが

そうなると輸送は船で行うわけで
輸送に何ヶ月もかかったりします。

その間に木材の白色度は下がる。

白色度が低いものはその分
強力に漂白すればいいんですが

そうなると薬品費が余計にかかるので
何しているのかわからない。

そんなことなら化学パルプで
良いじゃないかとなるわけです。

だから日本では機械パルプを使った
上質紙というのはほとんどない。

ゼロではないと思いますが。

しかも困ったことにリグニンが
あると漂白しても色戻りする。

保存用の資料には向きません。

だから晒クラフトパルプを使います。

紙を白くするなら晒クラフトパルプを使う。

これは工夫とかではありませんが
原料としてはそういうことです。

抄紙工程

紙を製造する工程では少しでも
白くするためにということで

内添填料に炭酸カルシウムを使うとか
蛍光染料を使うとかそういうことがあります。

紙の色が黄色味がかっていたら
青い染料を増やすとかですね。

青み付けとか言ってましたけど。

ただし、こういう見た目の色は
人によって好みが違うんですよね。

青みをつけて白っぽく見せたつもりが
なんだかどす黒く感じると言う人もいる。

赤いほうが白さを感じるという人もいる。

機械で白色度を測定するとナチュラルな
黄色が白いと測定されることもある。

一般的な染料は光を吸収するので
白色度は下がってしまうんですよね。

じゃあ蛍光染料を入れたらいいかと言うと
これも一定以上入れても効果は薄い。

光の強いところなら白く見えても
暗い部屋では効果がないとか。

あんまり入れると染料自体の色が出て
おかしな茶色になったりする。

いずれにしてもそんなに簡単には
白くは出来ないということです。

内添填料に炭酸カルシウムとか
そういう薬品を入れるのもありますが

これも10%以上入れるとなると
操業的にはなかなか大変。

あんまり入れると強度が落ちたり
コシがなくなったりもする。

生産性やその他の品質と相談して
どこまで入れるかということになります。

白色度に影響する水質

ここまでパルプ、抄紙の工程で紙を
白くするためにどうしているかを

お話してきましたが
その他に影響するものもあります。

それが水質。

水ですね。

だいたい抄紙というのは
パルプ繊維を水に分散させて

それをシート状にしてどんどん
脱水していくことになります。

となると、原料にはならないのですが
水は大きなカギになります。

つまり、水が汚れていると
白色度は下がってしまう。

現実問題として工場が取水している
場所を変更したりは出来ませんが

出来るだけ水がきれいな状態で
紙を抄造するほうが白くなる。

たとえば、雨が降ったりすると
水が汚れるわけです。

そうすると雨上がりの次の日の
紙の白色度は下がってくる。

これは何度か経験しましたね~

上質紙だと白いパルプしか
使わないので非常に影響を受けます。

白色度の基準値の下限で
製品を出荷するとかですね。

色があまり白くない中質紙なら
配合を若干調整できますけど。

水の問題は全部の工程に関わるので
なかなか難しかった記憶があります。

塗工工程

塗工工程ではなるべく白い塗料を
塗工するという感じでしたね。

ただ、上質系コート紙の場合
白い紙に白い塗料を塗るので

白く見せる工夫というのは染料を
バイオレット系にするとか

蛍光染料を若干添加しておくとか
そういう感じだったと思います。

カレンダー工程

コート紙の場合は塗工したあとに
スーパーカレンダーという機械で

光沢をつけるという工程があるんですが
この工程も白色度に関係してきます。

カレンダーというのは紙をロールに通し
圧縮してこすってツヤを出すものですが

これをあまり強くかけすぎると
色が黒く見えてしまうんですよね。

だから軽くかけても光沢が
出る塗料処方を選んでました。

それもいつもうまくいくわけでは
無かったんですけど。

管理人のまとめ

今回は、紙を白く見せる工夫で製造工程では
どんなことをしているのかというお話でした。

管理人の経験では各工程で様々な
取り組みがされてましたね。

実際のところ白いものを黒くするのは
簡単なんですが逆はとても難しい。

だから各工程はなるべく白くなるように
という方向で製造していました。

最終的には見た目の白さが問題で
染料を入れたり色々やってました。

紙なんて白じゃないかと思いますが
微妙に色が違うので大変なんですよね。

管理人としては無理して白くしようとしても
そうはうまくいかないというのが実感です。

この記事が、紙を白く見せる工夫の
参考になればと思います。

白い紙、大切にして下さいね!

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