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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
紙のリサイクルと聞くと、「紙ならなんでもリサイクルできる」と思ってしまいがちですが、実はそうではありません。紙の中にはリサイクルに適さない「禁忌品(きんきひん)」と呼ばれるものがあり、これらが混入してしまうとリサイクル工程がうまく進まず、不良品の原因になることもあります。
この記事では、「紙のリサイクル 禁忌品」「製紙原料にできないもの」といったキーワードを中心に、どのようなものが紙としてリサイクルできないのかをわかりやすく解説します。
紙のリサイクルで禁忌とされるものとは?
「紙のリサイクル 禁忌品」とは、紙としてリサイクルされる過程で支障をきたす、混入してはいけない物のことを指します。これらは製紙原料として再利用することができず、仮に混ざってしまった場合、全体の古紙の品質が著しく下がったり、最悪の場合にはリサイクル自体が不可能になってしまうケースもあります。
リサイクルは分別の精度が非常に重要で、禁忌品が混入することで製紙工場の機械が故障するリスクもあるため、家庭やオフィスなどでの古紙排出時には特に注意が必要です。古紙を再利用するためには、「禁忌品を混ぜない」というルールの理解と実践が求められます。
禁忌品には、大きく分けて以下の3つのカテゴリーがあります。
- そもそも紙とはまったく関係のない異素材
- 紙のように見えて実際には紙ではない素材
- 紙ではあるものの、特殊な加工などによりリサイクルに適さないもの
では、それぞれ具体的にどのようなものが含まれるのか、順に詳しく見ていきましょう。
明らかに紙ではない禁忌品
このカテゴリには、誰が見ても「これは紙ではない」とわかるものが含まれます。たとえば、石やガラスのような硬質異物は、紙の再生過程で使用されるパルパー(紙を水でドロドロに溶かす装置)に深刻なダメージを与える可能性があります。
以下は、リサイクル古紙の中に絶対に混入させてはならない代表的な異物です。
- 石、砂、土砂などの鉱物質
- ガラス破片、金属くずなどの硬質物
- 木片、竹片などの植物性異物
- プラスチック製品、ビニール類
- 布や繊維くずなどの織物素材
これらは紙とは無関係な素材であるため、リサイクル工程において異物除去の手間が増すだけでなく、機械の破損や故障の原因になります。特に鋭利なガラス片や金属は抄紙機を傷つけることがあり、安全管理の面からも重大なリスクです。
紙に見えるが実は紙ではないもの
このタイプは一見しただけでは紙に見えるため、家庭やオフィスなどで誤って古紙に混ぜられてしまうことが多いです。しかし実際には、原料がパルプ(木材繊維)ではないため、紙として再生することができません。
とくに日常生活で頻繁に目にする以下の製品には注意が必要です。
- 不織布製品(例:マスク、ウェットティッシュ)
- 合成紙(例:ユポ紙、耐水ラベルなど)
- ストーンペーパー(石灰石から作られた紙に似た素材)
- 使い捨ておむつやナプキン、生理用品
- ペットシーツや衛生パッド
これらは水に溶けにくく、繊維構造も通常の紙とは異なるため、パルパーでは分解されません。また、衛生面の問題も無視できません。とくにおむつや生理用品、使用済みマスクなどには体液や雑菌が付着しており、他の古紙と混ぜることは衛生リスクを伴います。
紙なのにリサイクルできない禁忌品
最後にご紹介するのは、素材としては確かに紙なのに、特殊な加工や付着物があることでリサイクルに適さなくなった紙製品です。このような紙は、パルプ化の際に異物として残ってしまうことが多く、リサイクル品の品質に悪影響を与える可能性があります。
以下は特に注意すべき紙の一例です。
- 芳香紙(香料付きチラシやカタログなど)
- 昇華転写紙、感熱発泡紙(特殊印刷用紙)
- 食品の油やソースが付着した段ボールや紙皿
- ワックス加工された紙(アイスの容器や一部の包装紙)
- 医療関連の紙類(血液や薬品が染みた紙)
これらの紙は、パルプに異物が混ざるだけでなく、においやベタつき、インクのにじみなどの問題を引き起こし、再生紙の品質を著しく損なう原因となります。見た目で判別しづらいことも多く、リサイクル工場での自動選別も困難です。
特に香料付きの紙や食品汚れが付着した紙は、他の古紙に影響を及ぼしやすいため、分別の段階で確実に取り除く必要があります。
リサイクル工程では好ましくない紙類
最後に、「少量であれば工程上問題ないが、なるべく入れないほうがよい紙類」についても紹介しておきます。これらの紙は、日常生活の中でよく目にするものですが、再生紙としての利用には適していないため、古紙回収に出す際には細心の注意が必要です。家庭ごみとして通常の焼却処分には支障がない場合もありますが、リサイクル工程に混入すると処理が困難になることがあります。
- 金紙・銀紙などの金属箔付き紙
- ターポリン紙、石膏ボード紙
- 圧着はがき、粘着シール付き紙
- 防水加工された紙(紙コップ、紙皿など)
- アルミコーティング紙、ラミネート加工紙
- 感熱紙、カーボン紙、ノーカーボン紙
- 樹脂含浸紙、ろう紙、硫酸紙
これらの紙は、いずれも特殊な印刷や加工によって表面にコーティングや成分の付加がされており、製紙原料として再利用する過程で問題を引き起こします。たとえば、ラミネート紙は表面に薄いプラスチックの膜が貼られており、紙として再溶解することができません。その結果、パルプの質を落としたり、機械のフィルターを詰まらせる原因となったりします。また、感熱紙やカーボン紙に含まれる薬品も製紙工程でトラブルを招く可能性があります。
このような紙類は、通常の古紙と見た目が似ているため間違って分別されがちですが、リサイクル現場では厳密に分けられており、混入が発見されると全体が破棄される場合もあります。そのため、なるべくこれらの紙はリサイクルに出さず、可燃ごみとして処分するのが無難です。
紙の禁忌品をリサイクルに混ぜないことの重要性
紙のリサイクル工程においては、禁忌品の混入は非常に重大な問題となります。たとえごく少量であっても、異物が混ざることで最終製品の品質が大きく損なわれることがあります。再生紙として製品化するには、安定した品質が求められるため、においや汚れ、油分、樹脂などの混入は致命的です。
たとえば、食品の包み紙のように油分を多く含んだ紙は、再生紙に異臭を残したり、紙の繊維に油が染み込んでしまい再利用ができない状態になってしまいます。また、タバコの灰やインクのにじみなどが残る紙も、見た目の品質を損ねるだけでなく、紙を漂白・加工する過程で化学反応の障害になることもあるのです。
さらに、こうした禁忌品は、抄紙機(しょうしき)などの製紙設備に損傷を与えることもあり、工場にとっては大きなリスクとなります。機械が停止すると大きなコストがかかるため、リサイクル業者や工場では、禁忌品の混入をもっとも避けたい事象としています。したがって、私たち一人ひとりが適切な分別を行うことが、全体の効率や品質を保つうえで非常に重要です。
迷ったら「燃えるごみ」で処分が無難
リサイクルに出せるかどうか判断に迷う紙がある場合は、無理に古紙として出さず、地域のごみ分別ルールに従って「燃えるごみ」として処理するのが賢明です。リサイクルの意識が高まる中で、「なんでも再利用しなければ」と思い込むあまり、かえって禁忌品を混ぜてしまうケースも少なくありません。
その結果、リサイクル全体の工程が台無しになり、せっかくの資源が無駄になってしまう恐れがあります。とくに最近では、多様な素材が組み合わされたパッケージや印刷物が増えており、「紙のように見えても実は紙ではない」というケースも多く見受けられます。見た目や触った感じだけで判断せず、少しでも不安な場合は「燃えるごみ」に回す方が、結果的に資源の循環に貢献することになります。
正しいごみの分別は、自治体の処理能力を超えた負担を減らすことにもつながります。小さな判断ですが、積み重なることで大きな効果を生み出します。
まとめ:紙のリサイクルを正しく行うために禁忌品を理解しよう
今回は、紙のリサイクルにおける禁忌品とは何か、なぜそれらが再利用に向かないのかについて詳しく解説しました。紙のリサイクルは、非常に身近でありながらも、素材や加工方法の違いによって分類が複雑になる分野です。
禁忌品は決して稀なものではなく、日常生活のなかで知らず知らずのうちに手にしている可能性があります。「これは紙だから大丈夫だろう」と安易に判断せず、特に「表面に加工が施されている紙」や「変わった色・質感の紙」には注意が必要です。
適切な分別を行うことは、リサイクルを円滑に進め、資源を有効に活用するための第一歩です。「これは古紙として出しても問題ないか?」と一度考えてみることで、全体の効率と品質を守ることができます。正しい知識と行動が、持続可能な社会の基盤となることを意識し、日常の中でできることから取り組んでいきましょう。
(参考)
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