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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は、コピー用紙で
裏写りしない方法というお話。
管理人は紙の裏写りには
悩まされましたね~
もちろん、元製紙会社社員ですから
製造者としてなんですけど。
そうそう、ここで言う裏写りは専門的には
不透明度と呼んでいる品質です。
紙なんて薄っぺらいモノですから
完璧に裏側が見えないというのは無理。
逆に言うと裏側からの光を感じるから
印刷用紙だろうと思うわけで。
薄くても裏側が見えないように
するのは本当に難しいんです。
そんな中、コピー用紙はどうすればいいか?
ということで。
この記事では、コピー用紙で
裏写りしない方法について
管理人の調べたことを
お伝えしたいと思います。
コピー用紙で裏写りしないなら紙を厚くするのが現実的
結論から言うと、コピー用紙で裏写りしない
ということなら紙を厚くするのが現実的です。
実際、コピー用紙やインクジェット用紙の
両面用は紙が厚くなっているんですね。
たとえば、片面しか印刷しないタイプだと
米坪64g/㎡なのに両面用は78g/㎡とか。
これは裏抜けとか裏写りしないように
こういう米坪に設定しているわけです。
なお、紙が厚くなるというのは
米坪(1㎡あたりの紙の重さ)が
重くなるというのとほぼ
同じ意味になります。
米坪が重くなれば紙も厚くなるということです。
片面用を両面用にするために
裏抜け対策として米坪を上げる。
なんだ、大した技術は使ってないな
と言われるとそのとおりですね。
もうちょっと上手い方法ないの?
と言われてもこれがなかなか難しい。
特に上質系コピー用紙の場合は。
ではなぜそんなに難しいのか?
少し本音をお話したいと思います。
コピー用紙の不透明度対策はなぜ難しいのか?
ここでは上質系コピー用紙の
不透明度対策が難しいお話を。
まず、紙は厚いほうが不透明度が高い。
これは当たり前ですよね。
でも、薄くても不透明度が高い紙もあります。
たとえば新聞紙。
新聞紙は米坪42.8g/㎡が主流。
一般のコピー用紙64g/㎡と
比較してずいぶん薄いですよね。
ただし。
新聞紙の場合は白色度が低い。
白色度というのは色の白さですが。
上質系コピー用紙の真っ白と
比較すると新聞紙はグレーです。
そして、紙の場合白いほど
不透明度は低くなる。
つまり、グレー色の新聞紙のほうが
不透明度的には有利なんですね。
この理屈はどんな紙でも同じで
漫画や雑誌の本文用紙も
中質紙とか下級印刷用紙で
白色度は低めになっています。
その分裏抜けはしにくい。
では、白くて薄くて裏抜けしにくい紙は
ないのかと言うとそうでもありません。
たとえば辞書用紙。
英和辞典とかの紙ですね。
あの紙は薄くて白いですが
裏抜けはしていません。
辞書を引いていて裏抜けがあったら
使いにくくて仕方がないですから。
これはこれでやり方がある。
管理人の記憶では内添填料を
大量に添加するということ。
薬品も炭酸カルシウムだけでなく
酸化チタンも数%添加する。
酸性紙のときは炭カルの代わりに
ビリトンクレーというのを入れてました。
とりあえず、紙の主原料である
パルプとの屈折率差が大きいもの。
そういう薬品を使ってましたね~
このときの酸化チタンは不透明度
向上剤と呼ばれてました。
しかしこれ、入れたら上がるとか
そういう単純なものでもないんです。
というのは、紙の中にどれだけ
残ってくれるかが問題だから。
この不透明度向上剤、
粒子径が小さいんです。
紙に添加するときは重さで添加するので
粒子径が小さいほど粒子の数は増える。
粒子の数が多いほど
不透明度は上がりやすい。
こういう理屈で粒子径は小さくしてます。
しかししかし。
粒子径が小さいということは
脱水するとき抜けていきやすい。
紙はパルプ分散液を乾燥して
製造されるわけですが
その最初の段階では強力に
吸引して脱水するんですよね。
でもこれって水だけ抜ければいいんですが
微細なパルプも内添填料も抜いてしまう。
だから予定通りの量を紙の中に残そうと
思ったら何倍も添加しないといけない。
つまり、かなりの量の薬品が無駄になる。
それでも性能が出れば良いんですが
これ以上上がらないという限界もある。
その折り合いがついたところで
なんとか製造しているんですよね。
こんな感じで不透明度向上剤は
なかなか扱いが面倒なんです。
さらにいうと、この不透明度
向上剤の歩留まりを良くするために
今度は歩留まり向上剤という
薬品を添加することになります。
今では技術が進化しているので
どこでも使っていると思いますが
この歩留まり向上剤というのも
結構制御が難しい薬品なんです。
この薬品の添加量が安定しないと
抄紙が安定しなくなってしまう。
調整していた抄紙条件が
狂うと断紙が起こってしまう。
管理人が関係していた頃は
ギヤポンプを使ってかなり
精密なコントロールをしないと
まともな紙になりませんでした。
専門的になりますが、歩留まり向上剤、
添加場所とかタイミングが難しい。
こういうのも色々試験をして
マシンごとに場所を決めてましたね。
まあ、こんな感じで辞書用紙のような
薄くて白くて不透明な紙は出来ています。
それでも、こんな紙ばかりを
製造するならまだいいんです。
条件がややこしかろうが
扱いが難しかろうが
毎日同じことをやるんなら
慣れて出来るようになりますから。
しかし。
コピー用紙の場合は片面用は普通に
製造するのに両面用は条件が違う。
こんな事になったら当然生産性は落ちる。
企業としてはこの生産性が
落ちるというのが大問題。
薬品のコストがかかる上に生産性まで
落ちるとなるとコスト競争力がなくなる。
コピー用紙はただでさえ安いのに
高くなる作り方は出来ないだろう。
じゃあどうするか?
結局のところ、紙の薬品の条件は
変更せずに米坪だけ上げたほうがマシ。
辞書用紙のように薄くしなければ
いけないというのならともかく
コピー用紙の場合、コピー機や
プリンタで使えればいいだけのこと。
そんなにややこしいことをする
メリットが無いわけです。
だから、製造する側は不透明度対策に
薬品を使うとかあまりやりたくない。
それで結局、誰でも最初に考える
紙を厚くしよう、というところに落ち着く。
方法はないわけじゃないけど
コスト的に見合わないわけですね。
世間一般的によくある話、ですけど。
管理人のまとめ
今回は、コピー用紙で裏写り
しない方法というお話でした。
結論は、両面印刷用の厚い紙を
使うのが現実的ということでした。
不透明度を上げるなら紙の色を
グレーにするとか薬品を入れるとか
方法としてはあるのですが
色を変えると別物になるし
薬品を使うのはコスト的に
見合わないことが多い。
だから結局、紙厚を上げて
対応するということでした。
結局は極力コストアップにならない
というのが決め手ということです。
この記事が、コピー用紙で裏写り
しない方法の参考になればと思います。
コピー用紙は目的に合わせて使って下さいね!