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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は、紙に裏表はあるのかというお話。
管理人は元製紙会社社員ですから
紙の裏表についても知っています。
正直に言うと裏表のない紙はありません。
この表裏差をなくすためにどれだけ
努力をしているかということです。
もちろんこの裏表、紙の品種によって
その状態はずいぶん違います。
書籍の本文用紙やチラシのような出版、
印刷用紙なら表裏差はない方が良い。
でも、包装用紙やダンボールに使う
ライナーだと表裏差は気にしない。
品種によって裏表に対する
感覚はずいぶん違います。
それで。
この裏表はどうして出来るのか?
そのあたりをお話してみたいなと。
ということで。
この記事では紙に裏表は
あるのかということについて
管理人の調べたことを
お伝えしたいと思います。
紙の裏表は製造マシンによって大きく違う
先程、紙の裏表があるかどうかは
品種によって大きく違うとお話しました。
表裏差があるかどうかは品種というか
製造マシンによって大きく変わるんです。
その品種を製造しているマシンによる
と言ったほうがいいですかね。
とりあえず。
管理人の関係したことのある紙の
裏表についてお話したいと思います。
印刷用紙
まずは印刷用紙。
管理人が入社してスグに担当したのが
印刷用紙、特に微塗工紙でした。
管理人が関係した印刷用紙は
コート紙、微塗工紙、上質紙
中質紙、更紙という感じで
結構色々やりましたね。
まあ、なんとなく知ってる
程度の紙も含まれますけど。
それで。
この印刷用紙の場合はほとんどが
裏表がない紙になっています。
正確には、裏表が目立たない紙。
最近はマシンが改善されて裏表が
わかりにくくなりましたが
昔はプロが見ればどちらが
裏か表かは目視で分かりました。
印刷用紙の場合はいかに裏表が
目立たないようにするか。
これが品質的にも重要なポイントでしたね。
極端な話、1枚もののチラシなら
表と裏の色が違っても問題ない。
裏も表も全面に印刷すれば細かい
ところなんて分かりませんから。
しかし、書籍用紙だと大問題。
特に読み物の場合は。
もしも表裏差が大きくて色調まで
違うとしたら、ページをめくるたびに
色が違うということになるわけで
出版社にバレたらクレームです。
だから特に書籍に使われる
印刷用紙は気を使ってましたね~
とはいえ。
紙の表裏差はマシンによるところが大きい。
決まったマシンで製造しているなら
その裏表はだいたい決まってしまう。
いろんな工夫をして対策しますが
根本的な改善はできないんですよね。
ではどうすればいいか?
裏表が出来てしまうマシンの場合
どうしても表裏差を改善するとしたら
ワイヤーパートを変更するのが
根本的な対策になります。
昔は、シングルワイヤーと呼ばれる
マシンが多かったんですよね。
紙を製造するときにはパルプの分散液を
ワイヤーの上に射出してそれを脱水します。
そのときにワイヤーの下から脱水します。
ワイヤーパートでの脱水がそれだけ
という場合はシングルワイヤー。
もう一つ、このワイヤーパートで
上からも脱水する方式があって
その場合はワイヤーが2つあるので
ツインワイヤーと呼んでました。
もうこの部分で裏表が出来てしまいます。
特にシングルワイヤーの場合は
ワイヤーの下側からしか脱水しない。
そのため、ワイヤーに近い側(裏側)は
強く吸引されて微細繊維が残らない。
逆にワイヤーから遠い側(表側)は
あまり吸引されないので微細繊維が残る。
つまり、表側は微細繊維が多くて
裏側が微細繊維が少ないわけです。
この違いはどうなるかと言うと
微細繊維というのは細い繊維なので
これが多いほうが表面がツルツルしやすく
平滑になりやすいという特徴があります。
ただし、細い繊維が多いので表面強度は
弱く紙粉なんかは発生しやすかったですね。
きめ細かな肌になるということです。
それでこの差を挽回するために
カレンダーパートで平滑性を出すとき
裏面のほうが平滑度が高く
なるように調整してましたね。
残念ながら根本的な解決にはならず
数値上裏表が少ないだけでしたけど。
その後のパートでも紙に直接当たる
フェルトの品質なんかも影響します。
コート紙だと、こんな感じで製造された
原紙に塗料を塗工しますから
なるべく裏表がごまかせるように
塗工量を調整してました。
だいたいは平滑度が低い裏側を
ちょっと多めに塗ってましたね。
古いマシンはこういう感じだったんですが
今はツインワイヤーが主流だと思います。
ツインワイヤーの場合は両面から
脱水するので表面性はほぼ同じ。
どちらの面も微細繊維があまりない。
ツインワイヤーにする利点は品質よりも
脱水性能が上がって速度が速くなり
生産性が上がると言うのが大きいんですが
一応は裏表の品質改善でもありました。
ツインワイヤーも色んなタイプがあって
完全に裏表が無くなるわけでもないですが
管理人が製紙会社にいた頃よりは
遥かに表裏差は分からなくなっています。
紙の裏表はマシン、用具、あとは
操業条件の調整で変わってくる。
結局のところそういう感じですね。
情報用紙
これは色々種類がありますね。
一番目にするのはコピー用紙。
これは表裏差がないように製造しています。
だいたいは大型マシンでツインワイヤー。
一応裏表はあるんですけど
ぱっと見では多分分かりませんね。
それ以外だとインクジェット用紙。
これは片面印刷なら裏表があります。
印刷面はその性能を出すために
塗料を塗工しているわけですから。
一方裏面は特に何もしてないか
カール防止などをやってるか。
明確に裏表があります。
両面印刷の場合は裏表は
区別できないでしょう。
両面とも印刷できるように
同じ塗料を塗ってますからね。
その他の情報用紙だと感熱紙でしょうか。
レシートによく使われる感熱紙は
明確に裏表があります。
これも印刷は片面だけなので
印刷面に感熱塗料を塗工する。
反対面はカール防止などの塗料を
塗工しますが表面とは違っています。
結局、情報用紙の場合は
印刷面が片面なら裏表があるし
印刷面が両面なら裏表が
分からないということです。
片艶クラフト紙、キャストコート紙
管理人があまり関係しなかった紙としては
片艶クラフト、キャストコートがあります。
この2品種は乾燥装置に特徴があります。
片艶クラフトの場合はヤンキーマシン。
乾燥機が大きな金属の筒でそこに
紙を押し当てて乾かす方式です。
反対面はフリーになっています。
こうなると金属面に当たっている面は
金属の鏡面を写し取ることになります。
そうなると非常に平滑になる。
表面はツルツルで裏面はザラザラ。
そういう紙になります。
これなんかは表裏差をなくすとか
そういう問題ではありません。
表と裏の品質が違うのが
前提の紙ということです。
キャストコート紙も似たようなもの。
片艶クラフト紙は紙を乾燥するときに
ヤンキーマシンを使ってましたが
キャストコート紙は塗料を乾燥するときに
キャストドラムを使うというところです。
ヤンキーマシンの乾燥機もキャストコータの
キャストドラムも金属の大きな筒です。
結局、乾燥するときに片面だけを金属面に
押し当てて乾燥するということです。
表はピカピカ、裏は普通の紙。
これも表裏差があることが前提の紙です。
品種によって製造方法が違いますから
こんな感じで変わってくるんですよね。
ライナー
ライナーというのはダンボールに使う紙。
ダンボールはライナーと中芯の
組み合わせで作られていますよね。
あの表に見えている紙がライナーです。
このライナーは実は多層構造になります。
4層が多いですかね。
一番上と一番下は目で見えるので
それなりに色調を調整する。
真ん中の2層は目に見えないので
薬品なんかも不要なものは入れない。
いずれも安く作るための工夫です。
それで。
多層抄きですから、各層のパルプ配合や
薬品処方は別々に決めることが出来ます。
当然、一番上の層がキレイ見えるようにする。
裏側はそれなりでいい。
ダンボールの表面に見える部分は一定の
品質が必要ですが裏側は気にしなくていい。
ダンボールに加工されたとき裏側は
結局見えなくなりますからね。
だから表裏差も気にしない。
というか表と裏では品質が違うんです。
そもそもそういう作り方ですから。
管理人のまとめ
今回は、紙に裏表は
あるのかというお話でした。
結論から言うと、紙の裏表は
品種によって大きく違ってきます。
またそれはマシンによって
違いが生まれてきます。
印刷用紙の場合はなるべく
表裏差を無くす努力をしていて
今ではツインワイヤーが主流で
表裏差は殆どなくなりました。
情報用紙の場合は印刷する面が
片面か両面かで状況が違います。
片面の場合は裏表があるし
両面だと裏表は分からないです。
晒クラフト紙やキャストコート紙は
乾燥方法に特徴があって
大きな金属ドラムに紙を押し付けて
乾かすのでその面がツルツルになります。
これらの紙は表裏差があるのが
前提の紙ということになります。
ライナーの場合は多層抄紙なので表と
裏ではパルプ配合も薬品配合も違います。
また裏側はダンボールになったときは
目に見えませんからあまり気にしません。
という感じで、紙の裏表は
なかなか奥が深いんですよね。
この記事が、紙の裏表の
参考になればと思います。
紙の裏表、たまには気にしてみて下さいね!