この記事は約 12 分で読めます。
管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回のお話は、古紙配合率の
確認方法はあるのか。
ずいぶん専門的なお話ですが。
以前、古紙入りPPC用紙で
古紙配合の偽装問題がありました。
はがき、でも偽装があったと思います。
管理人が会社をやめてから
発覚したお話なんですけど。
偽装の内容は、古紙配合率が低いのに
古紙配合率が高いように言っていたこと。
ただこの問題、普通の
偽装問題と違うところがある。
それは、偽装してもユーザーには
品質で迷惑をかけていないということ。
一般的な話をすると。
古紙を配合すると紙の品質は
落ちるものなんですね。
だから、古紙が入っていない方が
紙の品質は良いという事ができる。
そこをあえて環境に配慮するため
古紙配合率を高く表示していた。
他の偽装問題の場合はたとえば
食品の賞味期限を変更するとか
そういう品質が悪いのに良いように
偽装するのがだめということですよね?
しかし、この古紙配合率の場合は
品質が良いのに悪いように偽装した。
偽装には違いないのでユーザーを
裏切っていた、嘘をついていた
そういう意味ではダメなんですが、
じゃあその紙使って問題あるか?
というと全く問題はなくて
むしろ品質がいいわけです。
こういう感覚は製造側にもあって
良いものを売ってるのに、となるわけ。
偽装だからモラルはダメですけどね。
まあ、そんな問題があったので
古紙配合率の確認方法はあるのか?
ということになるんですが、
これはなかなか難しい。
実際のところを元製紙会社社員として
意見を述べたいと思います。
ということで。
この記事では古紙配合率を
確認する方法はあるのかについて
管理人の調べたことを
お伝えしたいと思います。
古紙配合率を確認する方法はあるにはあるが
結論から言うと古紙配合率の
確認方法はあるにはあるが難しい。
まず大前提ですが、バージンパルプと
古紙パルプの区別は付きません。
バージンパルプというのは
チップから出来たパルプです。
これの区別が出来れば
いいんですがそれは無理。
洋服を1回着たか、2回着たか
判別できるか、というようなもの。
明確な違いは出てこないんです。
だから古紙配合率の確認は
そんなに簡単ではありません。
それで。
管理人の調べたところでは
大きく2つの方法があるようです。
それぞれを紹介したいと思います。
古紙配合率を蛍光染料から確認する
まず1つ目。
それは古紙配合率を
蛍光染料から確認する方法。
どういうことか。
まず古紙パルプなんですがこれは
色んな紙が混ざっているわけです。
生産量として多いのは新聞紙。
そしてそこに混入するチラシ。
印刷用紙に使われるものは
これらがメインになります。
また、チラシだけを集めてなるべく
白い古紙パルプにするのもある。
このとき、新聞紙は非塗工紙だし
白色度もそんなに高くない。
蛍光染料も使いません。
しかし、チラシはほとんどコート紙。
色は白いし、白く見せるために
塗料の中に蛍光染料を入れます。
つまり、古紙パルプにはチラシ由来の
蛍光染料が結構入っているというわけ。
結局、古紙配合率を確認するのに
蛍光染料の量を測るというのは
このチラシ由来の蛍光染料を
測定しているということになる。
なるほど、古紙配合率が
多ければ蛍光染料も多いのか!
ということで古紙配合率の確認が
出来ますよねということなんです。
じゃあこれでOKなのか?
というとそんな簡単ではありません。
これには抜け道があるからです。
簡単に言うと、もしも製紙会社が
古紙配合品だと言い張りたければ
原料に蛍光染料を配合して
紙を生産すれば良いわけです。
測定する項目が蛍光染料なら
それに見合う蛍光染料を添加する。
そうすればその蛍光染料が
チラシ由来の古紙パルプか
製紙会社が意図的に配合した
蛍光染料なのかは判別できない。
たとえば、古紙100%で生産した紙の
蛍光染料の付着量を調べて
それと同じ程度になるように
蛍光染料を入れたら良いわけです。
それは紙の色調を調整するのと
やることは同じですから簡単なんですね。
だからこの方法は製紙会社からすると
対策が簡単に出来てしまう方法。
第三者が古紙配合率の監視を
したいと思ってもこれでは難しい。
製造している製紙会社としては
蛍光染料をわざわざ配合するのは
コストがかかるのでやりませんが
どうしてもとなったら抜け道はある。
この方法は抜き打ちでやらないと
本当のことは確認できないでしょう。
事前に知らせてしまったら
簡単に対策できますので。
こういう方法で検査するぞという
牽制にはなると思いますけどね。
古紙配合率を機械パルプから確認する
先程は古紙配合率を蛍光染料の量で
確認するという方法をお話しました。
この方法は悪くないんですが
簡単に対策できるということです。
それから、いい忘れていましたが
紙によっては紙を白く見せるため
蛍光染料を配合する品種もあり、
そんな場合は役に立ちません。
たとえば、競馬新聞なんかは
青白い紙になってますが
あのような紙には大量に
蛍光染料が入っています。
だからもし、あの紙の古紙配合率を
蛍光染料で測定しようとしても無理。
意図的に蛍光染料を入れているので。
では他の方法はないのか?
ということで考えられたのが機械パルプ。
すでに述べましたが、印刷用紙用の
古紙パルプは新聞紙とチラシがメイン。
蛍光染料はチラシ由来でした。
では新聞紙はというと、新聞紙は
古紙、機械パルプ、がメインなんです。
半分以上は古紙なんですが
数十パーセントは機械パルプ。
その機械パルプの配合量で
古紙配合量を確認しようというわけ。
パルプの判別方法としてC染色液で
染色したときに着色される色で
化学パルプ、機械パルプを
判別する方法が確立されています。
だからこれを利用して機械パルプが
含まれている量で古紙配合率を
確認できるじゃないか
ということになるんですね。
この方法なら蛍光染料を意図的に
配合していても大丈夫だろうと。
しかしながら。
これも製造する側から言わせると
分かっていれば抜け道がある。
機械パルプ含有量で確認するなら
機械パルプを配合すればいいだけ。
こんなことは簡単に出来るわけです。
蛍光染料の配合と同じで
普段の操業でやることですから。
抜き打ちでやったなら
効果はあるでしょうが
事前に調査されると分かっていれば
抜け道はあるということですね。
もしもその製紙工場が機械パルプを
持っていなかったとしたら購入する。
小さな製紙工場がパルプを
購入するのは普通のこと。
だから、抜け道は簡単なんです。
ただ、こういうイレギュラーなことは
コストがかかるので普通はやらない。
しかし、絶対に配合率を高く見せる
というのなら対策は出来るということ。
この方法も牽制にはなっても
本当のことは分からないんですね。
抜け道があるわけですから。
古紙配合率遵守は製紙会社のモラル
ここまでお話してきたように紙から
古紙配合率を確認する方法は
あるにはあるんですが
抜け道もあるんですよね。
だから本当に確認したければ
製紙会社の操業日報を確認するとか
そういう生産条件まで見ないと
実際のことは分からないと思います。
しかし、これでさえ製造側が
虚偽の記述をしていたら・・・
こうなると絶対に分からないんですよね。
極端な話、その場に立ち会っていても
配合率の表示が偽装されていれば
その数値を信じるしかないわけで
本当のことは分かりません。
そこまでのことはしないでしょうが
隠すつもりならやれるわけです。
そういうことがバレるとしたら
内部告発くらいでしょう。
そういうことで第三者が古紙の
配合率を検査しても分かりません。
結局、製紙会社のモラルの問題。
いくら官公庁がメンツにかけて
リサイクルやると言っても
技術的に出来ないことは
出来ないと言い切れるかどうか。
お客さんが、「表示さえしてくれたら
何%入ってるかなんて気にしない」
といったとしても、正確な配合率で
製造しますと言えるかどうか。
そういうモラルに関わってきます。
偽装問題が起こる前は、
誰にも迷惑かけないんだし
まあこれで高値で買ってくれるなら
いいじゃないの、という感じかなと。
技術屋としてはコストを掛けて品質の
悪いものを作るのは許せないのですが。
いずれにしても今は
そんなことやってなさそうです。
問題が発覚してからは技術的に
出来る範囲の配合率になってますから。
管理人のまとめ
今回は、古紙配合率の確認方法は
あるのかというお話でした。
結論から言うとあるにはあるが
抜け道もあるということでした。
パルプ自体はバージンでも
古紙でも区別は付きません。
だから、蛍光染料とか機械パルプとか
古紙に由来するものを指標にしますが
それらは分かっていれば別途配合して
古紙が入っているように見せることが出来る。
極端な話、操業現場で立ち会っていても
計器の数値を変更することだって出来る。
だから、隠すつもりなら隠せる。
ここは製紙会社のモラルの
問題になってくると思います。
過去に偽装問題があってからは
製紙会社はもう偽装はしてないでしょう。
管理人が見る限り、技術的に無理のない
古紙配合率になっているようですから。
この記事が、古紙配合率の確認
方法の参考になればと思います。
古紙配合率、たまには
気にしてみて下さいね!