チラシにつるつるの紙が使われる理由。コート紙が安いから!

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チラシ つるつるの紙

 

管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。

今回はチラシにつるつるの紙が
使われる理由についてのお話。

チラシの紙、昔はもっと上質紙とか
キザラとかが多かったと思います。

しかし、今はほとんどコート紙です。

少し紙厚が薄いつるつるした紙。

グレートとしてはA3コート紙と呼ばれます。

特に、スーパーや家電量販店は
A3コート紙が多いですね。

ではなぜこんなにチラシには
つるつるのA3コート紙が使われるのか?

理由は簡単、安いからなんですが
どういうわけでそんなに安いのか?

管理人は元製紙会社社員で、かつて
A3コート紙の生産に関わったこともあるので

どういう理由で安くなっているのか
ある程度分かります。

ということで。

この記事では、チラシにつるつるの
紙が使われる理由について

管理人なりに知っていることを
お伝えしたいと思います。

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チラシに使われるつるつるの紙が安い理由

つるつるの紙、コート紙が安い理由について
管理人が知っている歴史的なところから

説明してみたいと思いますので
ちょっと前置きが長くなります。

管理人が製紙会社に入社した頃は
バブル絶頂期で会社も儲かってました。

製紙業界というのは構造不況業種で
景気が良くなると各社一斉に設備投資をして

設備が稼働しはじめると製品がダブつくので
ダブついた紙を投げ売りするという感じ。

バカみたいな話ですがこういうことを
繰り返していたんですね。

今は色々と状況が変わったので
こういうことは出来ないと思います。

日本の業界的には王子製紙と
日本製紙が完全に牛耳りましたから

勝手に設備投資をして馬鹿げた
増産をすることは出来ないでしょう。

しかし、昔はそういうことをやってました。

それで、当時どこも力を入れたのが
コート紙だったんです。

 

実はそれまでコート紙というのは
高級な紙だったんですね。

もともとアート紙から始まっているので
写真集とか高級カタログのように

印刷の見栄えが必要な特殊ものに
使うな紙というイメージでした。

しかし、そんなものは需要が少ない。

そのかわり値段も高くていい。

製造設備もそんなに無理して
稼働させなくても採算が取れる。

そういう紙だったんです。

 

ところが、バブルの頃に各社が
塗工機を増設したんですね。

これからはコート紙の時代だということで
高速のコーターがどんどん出来ました。

するとどうなるか?

製紙産業は装置産業ですから
設備は設置したら動かさなければならない。

それがたとえ赤字でも。

いわゆる自転車操業というやつです。

しかしそんな状態で高級なアート紙を
どんどん作ったところで需要がない。

しかも高級なアート紙は技術的に難しい。

それで目をつけたのがチラシ。

これは需要が大量にあるんですね。

上質紙をコート紙に置き換えれば
いくらでも売り先がある。

当時は新聞も好調でしたから
折込チラシはいくらでもありました。

世間的に景気がいいのですから
広告費もどんどん出てくる。

管理人が勤めていた
製紙会社は最後発でしたから

会社としては一番安く作ることが出来る
A3コート紙をガンガン売ったわけです。

印刷品質はアート紙のようには
なりませんが、上質紙よりはずっといい。

光沢感が全く違いますから。

これがよかったんでしょうね、
スーパーとか家電量販店用に売れた。

管理人は当時新入社員でしたが、
ちょっと上の人に聞いたところでは

毎日塗工薬品を山のように購入して
それでも足りないくらいだった

といってましたから本当に
飛ぶように売れたんだと思います。

おかげでマシンの稼働は保証された。

 

しかし問題はその後ですね。

景気が悪くなりはじめると
広告費は削られます。

しかし、一旦上がった印刷品質を
下げるかと言うとそうはいかない。

A3コート紙でチラシを印刷すれば
上質紙には戻れないわけです。

何が起こるかと言うと値下げ。

その頃にはコート紙は市況商品で
需給によって価格が決まっていました。

つまり、需要家が値段を下げろ、
と言えば従わざるを得ない。

稼働した設備はまだまだ最新鋭ですから
これを停止するわけにいきませんから

赤字でも動かして、無理矢理でも
販売することになるわけです。

いわゆるチキンレースの状態ですね。

どこが音を上げるのか?

管理人の記憶ではそのころに
神崎製紙が王子製紙に吸収され、

日本加工製紙が倒産した
ように思います。

どちらもコート紙の老舗ですが、
後発からの圧力に負けた感じですね。

設備投入のタイミングを間違えたか
構造的にコート紙に頼りすぎたか。

いずれにしてもアート紙の企業が
消えてしまったということです。

その後も大昭和製紙、山陽国策パルプなど
大きな会社が旧王子製紙系になりました。

飲み込まれたという感じですかね。

 

管理人の感覚では、
新聞紙のような収益の上がりやすい

製品を持っていなかった会社が
苦しくなったのかなと思っています。

大昭和製紙は同族経営の
失敗だったようですが。

ともかく。

そういう歴史をたどって今になるんですが、
世の中が変わって紙の需要は減っています。

製紙会社の設備というのは
数十年は稼働し続けますから

今でも当時のマシンが動いていて
止めるわけにはいかない。

そうなると、変動費以上の価格で
販売できるなら売るということで

限界利益と呼んでましたが、
それ以上の価格なら売るわけです。

マシンは止められないから
止めるよりマシなら販売する。

市況に左右されるA3コート紙の価格は
限界利益を上回ればそれでいい。

そんな感じで販売されているんですね。

だから本来であれば赤字であっても
マシンを動かすために無理やり売る。

その積み重ねで今の値段なわけです。

そうでなければチラシになんか使えない。

チラシは広告宣伝費ですから
安いほどいいわけですよね。

たぶん、あらゆる紙の中でもっとも
お金をかけたくない紙だと思います。

当然今でも市況商品。

スーパーのチラシでなんて
ほとんど保管されませんから

品質的に少々問題があっても
ユーザーは別に気にしない。

カタログの紙なら色が違えば大変です。

しかしチラシの写真の色が少々違っていても
そこにクレームを入れる人はいない。

商品の値段が違っていたら大変ですけどね。

だから品質がそこそこで安い
A3コート紙がチラシに使われるわけです。

チラシに使われるコート紙が安く製造できる理由

ここまでは歴史的にA3コート紙が
安くなったお話をさせていただきました。

ここからは製造側の問題を。

A3コート紙が安いというのは
製紙会社としても努力しています。

まずは設備なんですが
当時の最新鋭設備だったんですね。

だから塗工速度が速い。

またA3コート紙は塗工量が少なく、
乾燥工程での時間が短くていい。

だいたいコーターの速度は
乾燥能力で制限されるんですが

A3コート紙は塗工量が少ないから
その乾燥負荷が少ないわけです。

塗工速度が速いということは
設備での生産量が多いということ。

設備での生産量が増えると
固定費が下がり製品は安くなる。

特に、新設マシンの場合、
固定費が一番高いわけで

生産量を増やすことが
なにより重要なんです。

 

同じ設備を使用しても生産量が
増えれば固定費は下がる。

それはパルプ原料にも言えるわけで
パルプの生産量が増えれば

原料としてのパルプ費も下がる
ということになるわけです。

塗工薬品も、少しでも安いもの、
塗工速度を上げられるものに変わるし、

抄紙も製品にならなかったコート紙、
コートブロークと呼んでいましたが、

このコートブロークを再生しやすい
中性抄紙に変更していく。

品質は変わらないように
原料や製造方法でコストダウンを図る。

A3コート紙というのはそういうことを
極端にやった品種だったと思います。

 

バブル崩壊後、世間的に物価が安定し
値上げなどできそうになかったので

余計にそういうコストダウンを進めた
ということになるのかも知れません。

今後どうなるかは分かりませんが、
もうしばらくこんな感じが続くと思います。

管理人のまとめ

今回は、チラシにつるつるの紙が
使われる理由についてお話しました。

ここで出てくるつるつるの紙は
A3コート紙になります。

このA3コート紙が安い理由、
実は製紙業界の構造的なものもある。

歴史的には新設したマシンを無理やり
稼働させて安値で売った。

その販売先がチラシだった。

製造側としても必死でコストダウンした。

そういうことで値段と品質の
バランスがいいのでチラシに使われる。

管理人の知っている理由はこんな感じです。

この記事がチラシの紙について
考える参考になればと思います。

チラシ、有効活用して下さいね!

紙の製造
プロフィール
べぎやす

元製紙会社社員。
技術者として入社し16年間勤務する。
開発技術部門、営業管理部門、現場管理部門など様々な部署を転々としたあと独立。
紙に関するコンサルタントとして今に至る。

詳しい運営者情報はこちらからご確認いただけます。
>>https://kamiconsal.jp/profile/

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