紙に繊維の方向がある!製造方法を考えれば当然の理由とは?

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紙 繊維の方向

 

管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。

今回は、紙に繊維の方向があるというお話。

横紙破り、なんていう言葉がありますが。

紙には縦目と横目があります。

薄い紙でもティッシュペーパーなんかは
縦と横では破れ方が違いますよね。

紙によって分かりやすいものと
そうでないものがありますけど。

では何でそんな物ができるのか?

これは製造方法を考えれば分かるんですが、
知らないと理由がよく分からないと思います。

管理人も元製紙会社社員だから
分かるだけですから。

ということで。

この記事では、紙に繊維の
方向があるということについて、

管理人なりに調べたことを
お伝えしたいと思います。

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紙に繊維の方向がある理由

結論から言うと、紙に繊維の方向が
あるのはその方向に引っ張るから。

どういうことか説明してみます。

紙の主成分はパルプ繊維。

繊維というくらいですから細長です。

イメージとしては爪楊枝とかマッチ棒。

鉛筆とかでもいいですけど。

まあ、そういう感じの細長いもの。

それで、そいつらが水に分散されて、
分散液がワイヤーの上に乗って

そこからどんどん水分を除いて
最終的に水分率6%ぐらいまで乾かす。

それで、洋紙の場合、製品は
ロールに巻き取ります。

巻き取る、というのがポイントですね。

徐々に乾かして行くときに
引っ張りながら巻き取るわけです。

引っ張っている方向を流れ方向といいますが
これが紙の縦方向になるわけです。

マッチ棒のようなものをワイヤーに乗せて
強く引っ張ったらどうなるか?

マッチ棒は縦方向に並ぶわけです。

繊維が縦にキレイに並ぶほど
横方向からの引き裂きには強いが

縦方向からの引き裂きには
弱くなるということになります。

大まかに言うとこんな感じ。

結局製造するときにどれくらい
引っ張ったかということで

引き裂きやすさが変わってきますから
中には縦横の違いが少ないものもあります。

専門的に言うと、パルプ分散液の
噴出速度をジェット速度(J)、

ワイヤーの速度をワイヤー速度(W)として
ジェットワイヤー比(J/W)というので

繊維配向を管理する
ということになります。

ジェットが遅くてワイヤーが速ければ
J/W比は1以下になるんですが、

これは繊維が縦方向に揃うので
横からは破りにくい紙になります。

逆にJ/W比が1より大きくても
やっぱり繊維は縦方向に並びやすい。

J/W比がちょうど1になれば
繊維の方向がバラバラになります。

このJ/W比、縦横の引き裂きもそうですが
紙の地合いに対して重要な意味があります。

この比率の微妙な調整ができるかどうかで
いい地合いの紙になるかどうかが決まる。

非常にデリケートなんですね。

ちょうど1が良さそうなんですが
マシンによってそれは変わる。

たいていは若干ずらしたほうがいい。

そこは操業現場の腕だったりします。

ほんの1%程度の差でも
地合いは大きく変わります。

この部分は製紙会社も機械メーカーも
非常に苦労しているところですね。

ちなみに。

巻取りを作らない手漉き和紙でも流し漉きと
呼ばれる方法だと紙の目はあるそうです。

それは、パルプ分散液を縦方向に揺すって
紙にするからなんだそうです。

結局、一定の方向に揺すると
その方向に繊維が揃うわけですね。

管理人も実験で紙を手漉してましたが
それは溜め漉きという方法でした。

パルプ分散液を容器の中でかき混ぜて
下から水分を抜くだけという方法。

この場合は繊維に方向性がなく
縦目とか横目はありません。

いずれにしても、紙を引っ張るとか
揺するとかで繊維に方向性を与えると

縦目や横目という紙の目が出来て
縦方向には破りやすいのに

横方向には破れにくいという
紙が出来上がるというわけです。

紙の繊維に方向があるようにフィルムにも方向がある

ここからは余談です。

ここまでは紙の繊維には方向があって
それは製造方法によるものとお話しました。

結局のところ、紙の引っ張り具合で
繊維の並び方が変わるわけです。

これ、実はフィルムでも
似たようなことがあります。

フィルムの場合は延伸と言われますが
縦方向にも横方向にも引っ張る二軸延伸、

縦方向だけ引っ張る一軸延伸
まったく引っ張らない無延伸があります。

これも引っ張る方向に繊維が並ぶので
引っ張った方向は強くなるんですね。

たとえば、OPPテープと呼ばれる
透明な安物のテープがありますが

あれは二軸延伸なので、縦も横も
強くて手で破るのは無理です。

しかし、焼肉のタレなんかの袋で
「こちらのどこからでも切れます」

と書かれているやつがありますが
あれは一軸延伸のフィルム。

だから引っ張っていない方向からは
簡単に引き裂くことが出来ます。

フィルムの場合はほとんどが
強度を持たせるために二軸延伸ですが

特別な用途の場合は一軸延伸や
無延伸のものもあります。

液晶の保護フィルムに使われる
TACフィルムは延伸すると

光学特性が変わるので無延伸とか
そういうのもあるそうです。

こちらも縦横比をどうするかなど
結構奥が深い物だそうです。

管理人のまとめ

今回は、紙に繊維の方向が
あるというお話でした。

その理由は製造過程で引っ張るから
繊維がその方向に揃うというものでした。

繊維が一定の方向に揃うと言っても
100%揃うわけではありませんが

揃っている縦方向は破れやすく
横方向は破れにくくなる。

これは専門的にはジェットワイヤー比という
数値が大きく関係しているということでした。

トイレットペーパーのように縦方向を
強くしておかないといけない紙もあれば

縦横比よりも地合いを良くすることが
重要な印刷用紙のような紙もあります。

このあたりの調整はマシン特性と
製造している品種で変わってきます。

このあたりの条件調整の上手い下手が
その操業現場の腕とかレベルなのでしょう。

この記事が、紙に繊維の方向がある
理由の参考になればと思います。

紙の目にも深いものがあること、
分かって下さいね!

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