紙の製造コストダウンについて。変動費より固定費削減が重要

記事内に広告が含まれています。

この記事は約 11 分で読めます。

紙 製造コストダウン

 

管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。

今回は紙の製造コストダウンについて。
変動費より固定費削減が重要というお話。

管理人は元製紙会社社員。

開発部とか技術部とか現場もやりました。

営業はやらなかったので基本技術系ですね。

しかし。

画期的な新商品開発とか
そういうのとは無縁。

基本はコストエンジニアでしたね~

品質の向上なんて言ってみても
実態はいかに安く作るかの一点。

企業ですから利益が重要なわけで
それはそれで重要なことなんですが。

しかしながら。

コストダウンを追求する技術で
品質からのアプローチはイマイチ。

パルプ配合、歩留まり向上、薬品低減
色々やりましたけどあまり報われない。

装置産業では増産が最大のコスト削減。

それに比べれば品質設計の
見直し、イマイチなわけです。

ということで。

この記事では、紙の製造コストダウンについて
管理人が経験したことを伝えたいと思います。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

紙の製造コストダウン。増産が最重要

製紙会社は装置産業。

マシンが紙を生産します。

もちろんそれに付随する原料とか
機械を動かす人間とかいますけど。

これは化学会社ならみな似たようなもの。

特に大量生産大量消費型の
メーカーはそうなりますね。

単純な話。

日産100トンのマシンが頑張って
日産110トン製造してくれたら

製品の製造原価は単純に考えれば
1割下がるということになる。

実際にはそんな簡単ではないですが
考え方としてはそういうことです。

マシンにかかっている固定費は
生産量の変動に関係なく一定。

ならばたくさん作れば固定費は
その分薄まるということですね。

まあ、工場で働いた経験の
ある人には常識だと思います。

それで。

例えばですけど、抄紙機の速度が
700m/分だったものが770m/分になった。

1割、つまり10%増産です。

コストは丸々1割にはなりませんが
固定費の中の10%は下がってくる。

製品の単価が安いほど
こういうのがきいてくる。

製品の単価が安いということは
固定費の占める割合が高いので。

そうですね、kgあたり100円の紙で
その中の固定費が30円なら3円/kgになる。

大雑把な計算ですけど。

でですね、薬品や配合なんかの
品質見直しで数円/kgはない。

ありえない。

そもそも品質設計段階で
コストを削ってますから。

余程画期的な技術が導入されれば
あるかも知れませんが普通は無理。

管理人が担当していた当時は
1円/kg安くできれば大成功でした。

通常は1円/kg以下のコンマ何円/kg。

本当に微々たるものでしたね~

まあ、製造業ってそういうことの
積み重ねというところありますが。

ただ、品質的にちょっとずつというのは
やりすぎると品質が悪化することがある。

開発当時と比較して悪くなる
ということがあるんですよね。

だからこの匙加減が難しい。

オーバースペックになっていたものを
最適化するというならいいんですけど。

こういうのは、会社の体質もあります。

管理人のいたところはそうだっただけで
他の会社はそうではないかも知れません。

これはなかなか難しい問題で
製品としては変えないのが

正解だったとしても企業としては品質を
犠牲にしてもコストダウンかも知れない。

企業には信用と利益どちらも必要ですから。

紙の製造コストダウン。物流費も大問題

ここまでは工場のお話でした。

固定費削減、特に新しいマシンは
減価償却費も大きいので増産は大きい。

人件費を固定費に入れるかどうかは
業種によって色々あるでしょうが

人数は減らすことが出来るなら
それに越したことはない。

減らしすぎてトラブルに対応できない
というのは見たことありますけどね。

それはそうとして。

もう一つの大問題は物流費。

これがバカになりません。

ただ物流費と一口に言っても色々ある。

単純に運賃なんかは積載効率が
いいかどうかが重要でしょう。

4トントラックを走らせるなら
最大の4トン積むのがいいわけで。

積載量が2トンしかなかったら
運賃が2倍にかかりますからね。

でも。

管理人が気になったのは在庫。

倉庫費用の負担も大きいんです。

しかもこの問題とても根が深い。

どういうことか?

まず、営業が取ってくる仕事が
マシンに合っていないことがある。

どの部分が良くないかというと紙幅。

品種や米坪ではありません。

そのマシンに合った幅があるんですね。

ここでちょっと解説を。

マシン幅って変更できませんから
規格寸法の取り合わせをします。

たとえば3250mm幅のマシンだったら
788mmx4丁=3152mmで効率がいいなとか。

880mmだったら4丁とれないので
880mmx2丁+625mmx2丁=3010mm

まあこんなものか、とか。

そういう計算をするんですよね。

それで。

このときに、880mm幅の巻取りは売れるが
625mm幅は不要ということがあるんです。

そうなると625mm幅は売れ残る。

最終的には不良在庫になって残る。

では処分できるかというと
これは資産なんですよね。

規格品なので普通に売れますから、

しかし現実には売れなくて困る。

で、どうなるかというと倉庫行き。

紙の場合、製造スパンが長いので
下手すると何年も在庫になる。

長期間在庫になるほど倉庫費用がかかる。

悪循環なわけです。

もちろん在庫ゼロが理想なんですが
装置産業ではなかなか難しい。

同じ製品を大量に作るほうが
効率も品質の安定しますから。

なのである程度の在庫は仕方ない。

仕方ないんですがこれがコストを
圧迫してくるんですよね。

この不良在庫の問題根が深いのは営業が
仕事を取るところから始まるということ。

工場側ではどうにもならないんです。

品質不良で在庫になっているのは
工場の責任で損紙に出来ます。

しかし、品質はOKなのに仕上げ
幅が悪くて売れないのはどうする?

つまり、全社的な問題なんですね。

営業員がこういう事がわかっているなら
不良在庫が増えて物流費アップは少ない。

しかし、こういうのってある程度
年季が入ってないと分からない。

メインでとってきた商品の相方の
売り先まで考えられる営業員、

管理人のいた会社ではそういう人
いたけど数は少なかったですね~

そういう理屈を教える人もいませんでしたが。

いずれにしても。

この物流費も簡単に数円/kgレベルで
製造コストに跳ね返ってきます。

値段の安いものをアマゾンや楽天で買って
送料のほうが高かったみたいなもの。

こういうのは気にはなっても担当外の
自分ではどうにもならないわけですが。

コストダウンと言っても色々ありますね~

管理人のまとめ

今回は、紙の製造コストダウンは変動費より
固定費削減が重要というお話でした。

製紙会社は装置産業。

結局はマシンが効率よく生産する、
つまり増産が最大のコストダウン。

この部分は変わることはないですね。

それから大きいのが物流費。

これも一応固定費と考えた場合
効率よく運び不良在庫を減らす。

それが大きなコストダウンになります。

品質の見直しで薬品費を削っても
それほどコストダウンにはならない。

管理人は技術部だったのでその
品質見直しが担当でしたけど。

そうそう。

コストダウンには増産が一番と
いいましたけど売れないと意味ない。

マシンが増産できたからと言っても
商品に需要がなければ在庫が増えるだけ。

在庫を増やして帳簿の上ではコスト
ダウンというのでは本末転倒です。

今だったら印刷用紙は減っているので
下手な増産は収益悪化になるでしょう。

一方、通販が増えて段ボールはが増加、
衛生関係でティッシュやトイレット増加。

製紙会社の抄紙機は何十年も使うもの。

簡単に品種を変更することは出来ません。

装置産業はどこもそうですが
経営者の先見の明が重要になる。

管理人的には。

目先のコストダウンより10年先の紙需要
予測のほうがずっと重要な気がします。

誰にでも出来るわけではないですけどね~

この記事が、紙の製造コスト
ダウンの参考になればと思います。

企業の存続、どこも大変なんですね!

(参考)
こんな記事も読まれています。

「紙の製造」一覧
https://kamiconsal.jp/category/kamiseizo/

紙はなぜ白いのか?光の乱反射や屈折率の違いが関係します!
https://kamiconsal.jp/kaminazesiroi/

「紙のサイズ」一覧
https://kamiconsal.jp/category/kamisaizuokisa/

タイトルとURLをコピーしました