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本が軽いのは古いから?図書館にあった60年以上前の紙の話

管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。

今回は昔の本が軽いというお話。

昔の本と言っても60年以上前の本。

戦後すぐくらいになるでしょうか。

図書館などではそういう古い本が
保管されていますよね。

持ってみるととても軽い。

紙が軽いからなんですね。

ではどういうわけでそんなに紙が軽いのか?

元製紙会社社員としては
そういうことに引っかかる。

ということで。

この記事では、戦後すぐくらいの
古い本が軽い理由について

管理人なりに調べたことを
お伝えしたいと思います。

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戦後すぐくらいの本が軽い理由

まず大きな違いは灰分だと思われます。

昔の紙には灰分があまり入っていない。

一方、現在よく使われている紙は
灰分が多いんですね。

特にコート紙は塗料を塗っていますが、
この成分のほとんどは灰分です。

昔は灰分を内添するにしても
多量に配合する技術がない。

ましてや紙に塗工する技術もない。

だから昔の本に使われている紙は軽い。

なにしろ、灰分は重いですから。

ということで、昔の本が軽い理由は
灰分があまり使われていないからです。

ではなぜ灰分が使われるようになったのか?

それを説明してみたいと思います。

現代の紙に灰分が使われるのは性能アップのため

それで灰分なんですが。

その成分はクレー、タルク
炭酸カルシウム(炭カル)といった鉱物。

簡単に言うと粘土というか土とか砂です。

こういう粘土を何のために紙に入れるか?

紙に灰分を配合する理由は色々ありますが、
管理人の知る限りでは以下の通り。

紙の平滑性を上げる。
紙の不透明度を上げる。

紙の白色度を上げる場合がある。
紙のコストダウン。

ただし、灰分を入れすぎると
米坪が同じでも紙厚が下がる。

また、抄紙マシンが汚れやすくなり、
操業性が悪くなる。

こんな感じです。

性能面から言うと、灰分が入ると
紙は平滑になります。

灰分は大きさは色々ありますが
パルプ繊維の隙間を埋めるんですね。

それが表面に出てくれば表面の
平滑性が上がるというわけです。

表面が平滑でなめらかになると
印刷適性が良くなります。

インクがしっかり乗るということですね。

印刷技術の点からみると、
昔は凸版印刷が多かった。

凸版印刷はそこまで平滑性に
こだわらなくてもいいんですね。

インクを紙に押し付けるような
印刷方式ですから。

しかし、現在主流のオフセット印刷や
グラビア印刷は平滑性は重要。

特にグラビア印刷は平滑でないと
紙がインクに接触できません。

そうなると網点が飛んで印刷出来ない。

オフセット印刷の場合は
そこまでではありませんが。

いずれにしても紙に灰分を内添することで
印刷適性が改善されるわけです。

筆記用紙の場合は、表面がなめらかだと
筆記特性がよくなります。

紙に引っかからずにスラスラ書ける。

それから、パルプのみだと紙が硬いんですが
灰分を配合すると紙がしなやかになります。

印刷適性に関してはいいことが多いですが
もちろんデメリットもあります。

それは、強度が落ちること。

パルプだけで構成されているなら
絡んでいるパルプの強度が出ますが、

灰分はパルプと絡みませんから
強度に関してはマイナスに働きます。

表面強度が弱くなれば
印刷したときに紙粉が発生します。

内部の強度が弱くなれば
引張や引き裂きの強度が下がります。

印刷用紙でも表面強度が必要な場合、
添加量は制限されるということです。

次に不透明度への影響です。

紙が白く見えるのは
パルプと空気の屈折率が違うから

光が乱反射して白く見える
ということなんだそうです。

ここに灰分を入れるとさらに
屈折率が違うので光をもっと

乱反射して裏までまっすぐには
通りにくくなるということだそうです。

印刷用紙の場合、紙が厚ければ
不透明度は十分高いので

特に気にすることもないんですが
紙が薄いと裏抜けしやすいんですね。

たとえば辞書に使われるような紙。

あれはとても薄いですが
裏抜けしてはいけません。

だから酸化チタンのような
粒子の細かい屈折率の高い

灰分を内添して不透明度を
上げる工夫をしています。

ただし、不透明度に関しては灰分を
入れたら入れただけ上がるかと言うと

そういうわけではなくてある程度の
ところで効果は頭打ちになります。

それと、不透明度を上げるためには
粒子が細かいほど効果があるんですが、

粒子が細かくなるほど紙への
歩留まりは悪くなっていくんです。

歩留まりというのは、添加量に対して
どれだけ紙に含有できたかということです。

細かいほど抜け落ちやすいんですね。

しかも、灰分の粒子が細かいほど
スラリーとして均一に分散するのが難しい。

また、灰分が増えるほどマシンも汚れますが、
粒子が小さいほど汚れやすくなります。

ということでこれも性能アップになるんですが
色々と制限があるということになります。

次に白色度への影響ですが。

これは紙と灰分の種類によって変わります。

紙のもともとの白色度が低いとき白色度の
高い灰分を配合すれば白色度が上がる。

しかし、元々の紙の白色度が高いと
白色度の高い灰分を配合しても効果がない。

こんな感じです。

管理人の経験では白色度調整は
パルプ配合でするべきもので

灰分に頼ってもうまくいかない
という感じでしたが。

ただし、白いものを黒くするのは簡単ですが
黒いものを白くするのは難しいので

なるべく白色度が高くなる方向で配合して
基準値に入るようにパルプ配合を調整したい。

あくまでもイメージですが現場では
こんな感じで操業していたと思います。

あとはコストダウンのためですね。

通常はパルプより灰分の方が安いですから
できるだけ灰分を使った方がいいわけです。

品質、コスト、操業性のバランスを見ながら
灰分率を設定するということです。

ちなみに。

コート紙に使われる塗料の成分は
ほとんどが灰分になります。

それが表面に塗工されるから
印刷適性がいいんですね。

それで、このコート紙がリサイクルされて
古紙になったらその古紙パルプには

大量の灰分が含まれている
ということになります。

それで、この灰分の成分の多くは
炭酸カルシウムなんですね。

ところがこの炭酸カルシウム、
酸性では溶けてしまうんです。

この古紙や灰分を有効利用したい
と考えると中性紙にするのが都合がいい。

製紙会社としては新規に添加する
灰分の節約にもなるわけですから。

これが中性抄紙化が進んだ
一つの理由でもあります。

エコロジーなどといいますが
そんなことより経済性なんです。

そしてこれを実現するには
歩留まり向上システムが必要でした。

抜けてしまう灰分をいかに
効率よく紙の中に留めるか。

こういう技術を大々的にやり始めたのは
昭和の終わりくらいからだったと思います。

戦後すぐにこんな技術はありませんでした。

古い本が軽くて新しい本が重い理由は
こういう技術の違いにあると思われます。

管理人のまとめ

今回は、昔の本が軽い
理由についてお話しました。

大きな理由は戦後すぐには
灰分を使いこなす技術がなかったこと。

現代はコート紙が増えていて
灰分を大量に使っていること。

このあたりが紙の重さの
違いだろうと思います。

灰分を使う理由は色々あるのですが
コストと品質と操業性のバランスを見て

どの程度の配合率にするかを
決めていくという感じでしょうか。

管理人はコスト優先でしたけど。

この記事が昔の本が軽い理由について
考える参考になればと思います。

古い本を手にとるのも楽しみだと思います。

そういう機会を大切にして下さいね!

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