漫画本に酸性紙が多い理由。変色よりも厚みが大事だから?

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漫画 変色

 

管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。

今回のお話は、
漫画本に酸性紙が多い理由です。

漫画本にも色んな種類がありますよね。

たとえば紙の観点から見た場合。

週刊誌に使われる更紙、
単行本に使われるコミック紙。

これらは酸性紙で変色しやすい。

過去のヒット作は
文庫本や愛蔵版になりますが、

これらは長期保存するので
上質系の中性紙が多いと思います。

ではなぜ漫画本は変色しやすいのに
酸性紙を使うのか?

この記事ではその理由を
自分なりにお伝えしたいと思います。

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漫画本に酸性紙が使われる理由

まず漫画本は軽くて厚いほど売れる、
という法則があります。

なので紙は軽くて厚いものが良い。

軽くて厚い紙を作るためには、
嵩(かさ)が出やすいパルプが必要。

パルプにはいくつか種類がありますが、
その中で嵩が出やすいのは機械パルプ。

だから更紙やコミック紙には
機械パルプが配合されています。

それでこの機械パルプには
リグニンという成分が含まれるのですが、

リグニンがあるとパルプ同士が絡みにくく、
嵩が出やすくなります。

ところがこのリグニンは、
光や熱、酸で変色しやい。

また中性抄紙薬品と相性が悪く、
酸性抄紙で製造しなければならない。

このような理屈で、
漫画本には酸性紙が使われるのです。

漫画本に酸性紙が多い。保管出来るのか

ここからは元製紙会社社員の本音を
お話させて下さい。

漫画本は機械パルプを使うので、
リグニンが含まれ黄変化しやすい。

なので保存には向きません。

リグニンを含むパルプは、
中性抄紙がやりにくいので

昔ながらの酸性抄紙で製造するのですが
もし中性抄紙で製造したとしても

リグニンが含まれる限り
光、熱、酸には弱いです。

ですから、嵩を出すために
機械パルプを配合する限り、

黄変化を改善する根本的な
対策はありません。

冷暗所に保存すればマシだとは思いますが
余程気をつけないと黄ばみます。

更紙やコミック紙の中性紙化について

紙の保存という意味では、
更紙やコミック紙を中性紙化しても

機械パルプを含みますから
変色防止の効果はないと思います。

しかし古紙パルプに含まれる
炭酸カルシウムの有効活用という点では

中性紙化する意味がある
と言えるのかもしれません。

どういうことかというと、
紙の品質レベルが上がるとともに

古紙におけるコート紙の割合が
増えているんですね。

コート紙は紙に塗料を塗工しますが、
塗料には炭酸カルシウムが含まれています。

また中性紙の内添填料としても
炭酸カルシウムは含まれているんです。

ところが炭酸カルシウムはアルカリ性で、
酸性条件下では溶けてしまいます。

だからコート紙の損紙(不良品など)は
わざわざ硫酸で処理してました。

炭酸カルシウムが酸性抄紙系内に入ると、
溶けて泡を出したり、

スケール(水垢)になってマシンを汚したりして、
操業トラブルの原因になるからです。

しかし中性抄紙なら、
炭酸カルシウムは溶けません。

そうするとこういうトラブルも発生しないし、
炭酸カルシウムも有効活用できる。

こういう観点なら、
古紙を使う紙の中性紙化に意味はあります。

たとえば新聞紙の中性紙化が進んだのは、
このような理由だと思います。

技術的には更紙や中質紙でも、
中性紙化は出来るようですが問題はコスト。

酸性抄紙を中性抄紙に変更するには
それなりに設備改善も必要になる。

一つのマシンで中性抄紙と酸性抄紙を
切り替えて抄造できなくはないでしょうが、

系内洗浄は手間だし、
操業トラブルが起こる確率は上がる。

新聞用紙ならユーザーへのアピールとして
中性紙化はいい宣伝になるでしょう。

しかし更紙や中質紙を中性紙にしたところで
ユーザーは気にしない。

あの雑誌は中性紙だから読もう、
という読者はいないわけです。

古紙配合率が高くて環境に配慮しているから
あの漫画本を買いますという読者もいません。

そうなると安定して安い紙を
供給してくれたほうが良い。

現実的にかさばる漫画本を
長期間保管する人は少ない。

変色しているかどうか分かりにくいように
雑誌の紙は濃い色にもなっています。

企業が作っているのですから
ニーズも経済的メリットもなければ

面倒なことはやりたくない、
というのが本音です。

自分が会社にいた頃は
まだ機械パルプの中性紙化自体が、

技術的に難しかったし、
それをやってどうするの?

という感じでしたね。

何か大きな社会的変化があれば別ですが、
雑誌はどんどん減少している時代です。

減っていく紙のために新技術を導入する、
それはちょっとやりにくい気がします。

やっぱり漫画本はこれからも
酸性紙のままじゃないかと思います。

管理人のまとめ

今回お伝えしたのは
漫画本に酸性紙が多い理由でした。

漫画本は嵩が必要なので機械パルプを使う。

機械パルプにはリグニンが含まれるので
技術的に中性紙化が難しい。

従って酸性紙になる。

こんな理屈でした。

管理人は漫画本を中性紙にしても
メリットがないと思います。

技術的に難しいし、ニーズもない。

経済的利益もありませんし、
使用量も減ってる。

プラス要因が古紙の有効活用、
というだけでは弱いと思うからです。

使用量ということで調べてみると、
漫画雑誌発行部数は減少しています。

特に青年誌はスマホの影響なんでしょう、
ずいぶん減っているみたいですね。

紙で読もうがスマホで読もうが
面白いものが読めれば良い。

多分そういうことなんでしょう。

ただ付録の付いている子供向けは
それほど減少していないみたいです。

AKBのCDに握手券を付ける、
あれと同じようなものでしょうか。

雑誌については、
あまり明るい話がありません。

しかしやり方次第では、
売れないことはないはず。

ここはもう少し工夫をして
ネットと紙が共存共栄して欲しい。

昔、分厚い漫画本を手にとって、
面白いページは何度も読んだものです。

あんな気持ちになる仕掛けがあれば
まだまだ漫画本も生き残ると思うんですが。

コミケがあれだけ盛り上がるんですから、
なにかやり方はあるはず。

漫画本の紙は酸性紙でいいんで、
思わず手に取りたくなる本にしてほしい。

期待しています!

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