雑誌にわら半紙が使われる理由とは?安くて軽くて厚いから!

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雑誌 わら半紙

 

管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。

今回は、雑誌にわら半紙が
使われる理由についてのお話。

漫画雑誌や週刊誌に使われる紙は
今も昔もわら半紙というか更紙ですよね。

これってずっと変わってません。

もちろん、その更紙の品質は
色々変わってるんですけど、

更紙を使っているという部分は
変わっていないということです。

管理人はこのブログでは何度も
わら半紙よりコピー用紙が安い、

というお話をしているんですが
それでは何故いまだに更紙なのか?

そのあたりを考えてみたいと思います。

ということで。

この記事では、雑誌にわら半紙が
使われる理由について

管理人なりに調べたことを
お伝えしたいと思います。

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雑誌にわら半紙が使われるのは安いから?

わら半紙というか更紙は上質紙より安いのか?

これは結構難しい問題です。

パルプの原料価格だけで言うと
更紙のほうが安いです。

更紙はあまり漂白していない
古紙パルプと機械パルプがメイン。

なので、上質紙に使われる晒クラフト
パルプよりは安いんですよね。

あまり漂白していないというのがポイント。

古紙パルプや機械パルプでも無理に
漂白すると価格が高くなりますから。

だから同じようなマシンで製造すれば
更紙のほうが安いことになります。

しかし、上質紙が大型マシンで
大ロットで製造されると逆転します。

特に輸入紙は安いんですよね。

じゃあその上質紙を使えばいいじゃないか
となるんですがに出版社はそうはいかない。

雑誌を作る人は紙にもこだわりがあって、
基本ライバル社と同じ紙は使いません。

そうするとロットはどうしても小さくなる。

それでは輸入紙は割に合わない。

そうなると、更紙の方が有利になる。

価格的にはそういう感じで落ち着きます。

それに、雑誌は出版社の細かい要望に
対応していかないといけません。

それを海外の紙でやろうとすると
なかなか小回りがきかない。

製紙は装置産業ですから今日の
要望を入れて明日製造とは行きません。

本当は出来るんですけどやりません。

現状製造している製品を取り終わってから
テストなり製造なりをすることになります。

オーダーを受けているわけですから
納期があるし製品の順番もありますので。

よほどのことがあれば急遽製造
というのもあるんですが普通はない。

国内でもこんな感じで、日程変更は
かなりやりにくいんですが

海外の大型マシンだとなおさら
製造予定の変更は難しいでしょう。

管理人の努めていた会社では製造品種を
変更することを紙替えと呼んでいました。

これが予定通りならいいんですが、
予定外になるとロスは避けられない。

それは直接製造原価に響くので
現場はやりたがらないわけです。

予定外の紙替えを嫌がるのは
どこでも同じだと思います。

製紙の場合は同じ品種を
なるべく長く製造したい。

装置産業というのはだいたいそういうもの。

だから、雑誌の紙のようにロットが
小さいものは小さなマシンで製造します。

それなら大型マシンよりも小回りがきく。

それで、同じような小さなマシンで
抄造するなら上質紙より更紙の方が安い。

この個別対応力の有無は大きいです。

価格以上のものがあるんですね。

実際、更紙も輸入紙が入ってますが
細かい対応は難しそうです。

感覚的には、作った紙をそのまま
使うならどうぞという感じですね。

これ、いくら品質が良くても、もうちょっと
こうしてくれというのには対応できない。

だから今でも国内品が多いと思います。

雑誌にわら半紙が使われるのは軽くて厚いから

もう一つ重要な問題は品質の問題。

これは上質紙ではなくて更紙で
なければいけない理由になります。

どういうことかというと。

「本は厚いほうがよく売れる」

ということがあります。

本屋で平積みにしている雑誌がありますが
同じ冊数でも高い山から売れていくんですね。

実際、自分が本屋で本を手に取る時
山の高い方と低いほうがあったら?

わざわざ取りにくい低い方の本よりも
取りやすい高い方の本を取ります。

これが結構売れ行きを左右します。

当然出版社はライバル雑誌よりも
少しでも厚い本を作ろうとします。

しかし、ページ数を増やせるわけではない。

漫画雑誌なら漫画家の数と割り当てた
ページの分しかページ数はないですから。

ではどうするか?

1枚の紙を厚くして下さいとなるわけです。

製紙会社は出版社から
嵩(かさ)を上げてくれと言われます。

紙厚を維持して米坪を下げてくれとか、
米坪は同じでいいから紙厚を上げてくれとか。

結構、無理難題なんですよね。

ただ、上質紙よりは更紙の方が
機械パルプが配合されて嵩が出やすい。

どんな感じかと言うと、

上質紙:米坪64g/㎡→紙厚80μm、嵩1.25cm3/g
更紙:米坪49g/㎡→紙厚82μm、嵩1.67cm3/g

嵩で比較すると約1.3倍。

かなり違いますよね。

もしも同じ米坪、同じページ数として
上質紙と更紙で本を作ったとする。

上質紙で作った本の厚みが3cmだったら
更紙で作った本の厚みは3.9cmになる。

この本を10冊積めば、30cmと39cm。

本屋の店頭の平積みで高さにこんなに
差があったら勝負あったという感じです。

この紙厚の問題は売れ行きに影響するので
結構シビアな話になっていました。

今は状況が変わっているかも知れませんが、
当時はそういうことでうるさかったですね。

どうしても紙厚がクリアできないときは
米坪を上げて製造していました。

目付けと言ってましたけど、
表示米坪49g/㎡なのに

実米坪60g/㎡とか無理やり
紙厚を合わせるという。

製紙会社としては一方的に損するので
情けない話ですが仕方なくやってましたね。

はっきりしているのは、上質紙では
更紙のような紙厚は出ないということ。

このボリューム感も雑誌には重要なので
やっぱり更紙を使うのでしょう。

雑誌に輸入紙が入ってくるかどうかについて

ここからは余談です。

紙は基本的に国内生産国内消費。

輸出も輸入も少ないです。

コピー用紙のように輸入紙が
多い紙もありますが少数派。

やっぱり国内品が多いです。

品質的にも国産品がいいです。

ただし、更紙は輸入紙で
品質の良いものがあります。

チラシ用のコート紙も安くて
使える紙はあります。

しかし、輸入紙は安定して入ってこない。

その一つには、中国の存在があります。

どういうことかというと、中国の景気が
よくなると中国国内で紙が不足する。

そうすると中国が東アジアの紙を買う。

すると日本向けの輸入紙は入らない。

中国の景気が悪くなると逆のことになって
東アジアで紙が余るので日本に輸入紙が来る。

こういう構造があるようです。

管理人が製紙会社にいた頃は
輸入師の脅威などと言ってましたが、

中国があれだけ経済大国になれば
紙もそちらに行っているでしょう。

本格的に東アジアの安い紙が日本に来れば
国内メーカーはやっていけなくなるでしょうが

もうしばらく中国があんな感じだったら
まだ大丈夫だと思います。

現段階では紙の需要が減ってますから
その前に淘汰されるかも知れませんが。

管理人のまとめ

今回は、雑誌にわら半紙が使われる
理由についてのお話でした。

雑誌に使うわら半紙は更紙のこと。

結論から言うと、出版社向けの紙は
小ロットであり、小ロットであれば

更紙は上質紙より安いということ、
さらに嵩という点から見ても

更紙が有利であることなどから雑誌には
更紙が使われるということでした。

雑誌にはボリューム感が重要なんですね。

この記事が雑誌にわら半紙が使われる
理由について考える参考になればと思います。

どんなものでもそうですが、
紙も理由があって使われています。

厚い雑誌が売れやすいことなんかも、
たまには思い出して下さいね!

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