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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は、パルプの性質と紙の強度の関係!
長さと引張フィブリル化と引裂というお話。
紙は私たちの日常生活に欠かせないものですが
その強度は単に「紙が厚いか薄いか」で
決まるわけではありません。
紙の強度は原料であるパルプ繊維の
性質に大きく左右されます。
特に、パルプ繊維の長さ・引張強度・
フィブリル化の程度・引裂強度などの要素が
紙の耐久性やしなやかさを決定づけます。
ということで。
この記事ではパルプの性質と紙の強度の関係!
長さと引張フィブリル化と引裂、について
管理人が調べたことを
お伝えしたいと思います。
パルプ繊維の長さと紙の強度
繊維が長いほど紙は強い?
パルプの繊維は、大きく分けて
長繊維パルプ(主に針葉樹由来)と
短繊維パルプ(主に広葉樹由来)が
あります。
- 長繊維パルプ(針葉樹):繊維の長さは約2〜5mmと長く、紙に強度や引裂抵抗を与えます。また、繊維が長いほど紙の内部での絡み合いが強くなり、繊維同士がしっかりと結合することで引裂強度や耐久性が向上します。そのため、包装紙やクラフト紙など、引張強度が求められる用途では長繊維パルプが多く使用されています。
- 短繊維パルプ(広葉樹):繊維の長さは約0.5〜1.5mmと短く、滑らかな表面の紙を作るのに適しています。短繊維パルプは繊維の密度を高め、表面の均一性や印刷適性を向上させます。これにより、コピー用紙や印刷用紙など、滑らかな仕上がりが求められる製品で活用されています。
長繊維と短繊維の役割
長繊維は、絡み合うことで紙の
引張強度や引裂強度を向上させます。
繊維同士がしっかりと結合することで、
紙の強度が飛躍的に向上します。
一方で、短繊維は紙の密度を高め、
滑らかな表面を作ることで印刷適性を
良くします。
短繊維の密集度が高いほどインクの滲みを
防ぎ文字や画像の鮮明さが向上します。
そのため、多くの紙製品は長繊維と
短繊維をバランス良く配合して
作られておりそれぞれの特性を
最大限に活かすことで、
引張強度と印刷適性を
兼ね備えた紙が作られます。
引張強度とフィブリル化の関係
引張強度とは?
引張強度(Tensile Strength)とは、
紙が引っ張られたときに破れるまでに
耐えられる最大の力のことです。
引張強度が高い紙ほど、引っ張りや
折り曲げに強い特性を持っています。
引張強度が重要な用途には、包装紙、
段ボール、コピー用紙などがあります。
特に配送や梱包時に耐久性が求められる場合、
引張強度の高い紙が使用されます。
フィブリル化とは?
フィブリル化(Fibrillation)とは、
パルプ繊維の表面がほぐれて
細かい繊維が露出し、繊維同士が
強く絡み合う現象です。
フィブリル化が進むことで、
繊維間の結合が強化され、
紙の引裂強度や結合力が
向上します。
また、フィブリル化された繊維は
表面積が増加し、より多くの
水素結合が生じることで
紙の強度がさらに向上します。
その結果、紙の引張特性だけでなく、
耐折強度や耐水性も向上します。
叩解処理とフィブリル化
パルプのフィブリル化は、
叩解処理(Beating)や
リファイニング(Refining)に
よって促進されます。
これにより繊維が適度に摩耗し、
紙の結合力が強化されます。
叩解処理では繊維が細かく裂け、
内部構造が変化することで
フィブリル化が進行します。
ただし、過度な叩解処理は繊維を
短くしてしまい、紙の引裂強度を
低下させる可能性があります。
そのため、叩解処理の加減を
適切に調整することが重要であり、
引張強度と引裂強度のバランスを
保つ必要があります。
引裂強度と繊維の絡み合い
引裂強度とは?
引裂強度(Tear Strength)は、
紙に小さな裂け目が生じたときに、
それが広がるのを抑える力のことです。
引裂強度が高い紙は、ちょっとした
傷や切れ目でも破れにくく、
耐久性が向上します。
引裂強度は特に、包装紙、
トイレットペーパー、
段ボールなど、摩耗や引き裂きに
耐える必要がある製品で重要です。
繊維の絡み合いが引裂強度を左右する
引裂強度は、パルプ繊維がどれだけ
絡み合っているかに大きく影響します。
特に長繊維パルプは、繊維同士がしっかり
絡み合うことで高い引裂強度を持ちます。
長繊維同士が複雑に絡み合うことで、
繊維ネットワークが強化され、
紙の引裂強度が向上します。
逆に、短繊維パルプだけでは
繊維の結合が弱く、引裂強度は
低くなります。
長繊維と短繊維の配合比率が適切なら、
引裂強度と印刷適性の両立が可能です。
引裂強度とフィブリル化のバランス
引張強度を高めるための叩解処理は、
引裂強度には逆効果になる場合があります。
繊維が短くなりすぎると繊維同士の
絡み合いが減少し引裂強度が
下がってしまうからです。
さらに叩解処理でフィブリル化が進みすぎると
紙の内部構造が密になりすぎて引裂強度の
低下を招くことがあります。
そのため、叩解処理の適度な調整が、
紙の強度バランスを保つ上で重要です。
適切な叩解処理によって、引張強度と
引裂強度のバランスが最適化され、
紙全体の耐久性が向上します。
管理人のまとめ
今回はパルプの性質と紙の強度の関係!
長さと引張フィブリル化と引裂という
お話でした。
紙の強度は、パルプ繊維の長さ・
フィブリル化の程度など、
多くの要素によって決まります。
- 長繊維パルプは、引張強度と引裂強度を向上させる
- 短繊維パルプは、滑らかな紙面を形成して印刷適性を向上させる
- 叩解処理によるフィブリル化は、引裂強度を高めるがやりすぎると逆効果になるリスクもある
このように、紙の性質はパルプの選択や
処理方法によって大きく変わります。
最適な紙を作るためにはこれらのバランスを
理解してコントロールすることが重要ですね!
この記事がパルプの性質と紙の
強度の参考になればと思います。
パルプの性質、面白いですね!
(参考)
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