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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は、コート紙の塗料の成分はクレー、
炭カル、バインダーがメイン、というお話。
管理人は元製紙会社社員。
その中で一番最初に担当したのがコート紙。
特に微塗工紙でした。
管理人が就職したのが平成元年で
当時はまだまだバブル真っ盛り。
紙も絶好調で売れてました。
管理人は給料がもらえるようになって
スーパーファミコンを買った記憶が。
当時はネットがありませんから
ゲーム雑誌や攻略本買いましたが
その雑誌や攻略本に使われたのが
管理人が担当した微塗工紙でした。
微塗工紙にも色々な用途がある中で
雑誌用にもかなり使われたということ。
微塗工紙やマットコート紙は白紙光沢が
低くて攻略本のような文字と画像の
組み合わせがメインの本とは
相性が良かったみたいです。。
それから、チラシの紙。
新聞の発行部数が増えてましたから
チラシの入る量も多かったんですね。
高級品だったコート紙が安いチラシにも
大量に使われるようになりました。
それで価格は安くなりましたが
ものすごく普及もしたんですよね。
それはそうとして。
ではそんなコート紙に塗工している
塗料はどんなものなのでしょうか?
管理人の知る限りにはなりますが
少しお話してみたいと思います。
ということで。
この記事では、コート紙の
塗料の成分について
管理人の調べたことを
お伝えしようと思います。
コート紙の塗料成分はクレー、炭カル、バインダー
結論から言うとコート紙の塗料の成分は
クレー、炭カル、バインダーがメイン。
それぞれ少しお話してみます。
クレー
クレーはカオリナイトクレー。
他にもあったと思いますがメインはこれ。
中にはもっと平板状に加工した
デラミネートクレーというのも。
デラミは流動性が悪くて
あまり使いませんでした。
網点再現性改善のためにグラビア
用紙に使ったくらいですかね。
それで、このクレーなんですが
石というか、泥というか、粘土ですね。
フェイスパックに使うこともありますね。
こういうものありますね。
b.glen (ビーグレン) 【公式】Clay Wash – クレイウォッシュ <洗顔料> 150g / 5.29oz.
これらは製紙に使う顔料よりも
精製されていると思いますが。
それで。
カオリナイトクレーと言っても、
実際には色々と種類があります。
原産地がどこかと言うのもあるし、
粒子径がどうか、色調はどうか。
漂白しているかどうか、
表面処理はどうかなど。
元々が天然の鉱物ですから
山によって組成は微妙に違う。
メインは同じでも微量成分が変わる。
資材部の人たちはクレーなんて
安ければいいだろう、でしたけど
実際にはここのものがいい、
というのがありましたね~
とはいえ、価格の圧力に負けて
無理して安いのを使ってましたが。
炭カル
正式名称は炭酸カルシウム。
石灰石です。
炭カルは安くて白いので使ってました。
紙は白い方が価値が高い
伝統的にそう思ってますから。
そういえば。
クレーは輸入でしたが
炭カルは国産でしたね。
日本は石灰石がかなり豊富。
もしかすると唯一国産でまかなえる
顔料なのかも知れませんね。
それはそうとして。
炭カルは大きく分けて3種類使ってました。
一つは合成物。
一つは鉱山から掘り出して
乾式粉砕したもの。
一つは鉱山から掘り出して
湿式粉砕したもの。
それぞれこんな感じ。
軽質炭酸カルシウム
合成物の炭カルは
軽質炭酸カルシウム。
製造方法は、炭カルを燃やして
酸化カルシウムにしてから
水と反応させてそのあと
炭酸ガスと反応させる。
化学式を見たほうが分かりやすいですか?
==ここから==
①CaCO3 → CaO+CO2
石灰石(CaCO3)を焼成し生石灰(CaO)を製造します。
この時、炭酸ガス(CO2)が発生します。
②CaO+H2O → Ca(OH)2
生石灰(CaO)と水(H2O)を反応させ、消石灰乳(Ca(OH)2)を製造します。
③Ca(OH)2+CO2 → CaCO3+H2O
消石灰乳(Ca(OH)2)に①で発生した炭酸ガス(CO2)を反応させ、合成炭酸カルシウム(CaCO3)を製造します。
==ここまで==
合成物のいいところは粒子径や
形状を制御できるところですね。
丸いもの、紡錘型のものなど。
キュービックとか針状とかもありました。
それから純度が高い。
これは合成物ですから当然です。
ただし値段も高い。
手間がかかってますからね~
コストエンジニアとしてはあまり
使いたくない顔料ではありました。
重質炭酸カルシウム
次に粉砕物。
重質炭酸カルシウムと呼ばれます。
これは乾式粉砕と湿式粉砕があります。
乾式粉砕は山から掘り出したものを
単純に粉砕しただけのもの。
手間がかかっていないので安いです。
増量剤みたいに使ってました。
形状が岩のように不定形で粒子径も
大きくて白紙光沢が出ないんですよね。
なので、マットコート紙に
よく使ってたと思います。
湿式粉砕は山から掘り出したものを
水に分散させて粉砕する方法。
このときのやり方は色々あるようで、
ビーズミルなんかがそうですね。
重質炭カルは白くて
安いのでよく使ってました。
特に湿式のほうが使いやすかったです。
湿式のほうが粒子径の
コントロールがしやすい。
一方乾式は粒子径3μ以下にすると
凝集してしまうという問題があり
小さなものが出来なかった
というのがあったと思います。
結局コート紙の塗料の顔料としては
湿式重質炭酸カルシウムが
品質、コスト的にメリットがあるので
優先して使うようにしてましたね~
バインダー
コート紙の塗料のもう一つの
メイン成分はバインダー。
これは主にSBRラテックスでした。
それと若干のデンプン。
最近はもうデンプンは使って
ないかも知れませんが。
SBRラテックスはスチレン
ブタジエン共重合体のこと。
さらにMMAやアクリルニトリルを
共重合させていたようです。
このあたりはラテックスメーカーによって
色々と工夫されているようですね~
このラテックスバインダーのメーカーは
日本でもトップクラスの化学メーカー。
もしくはその関連会社だったと思います。
技術力は相当ありますから色々
分析をお願いした記憶がありますね。
コート紙の塗料に使う
メインの成分はこんな感じ。
原料としてありふれたものですが
これがなかなか奥が深い。
分かっているようで分かっていないとか、
まだまだ課題が残っているとかあります。
印刷品質だけならなんとかなっても
操業性やコストが絡むと難しいとか。
それぞれの原料も、もうこのくらいで、
というわけにはいかないんですよね。
ものづくりは大変だなと思います。
それから、これ以外に助剤も色々
ありますが、これがまた難しい。
染料のように明確なものもあれば
印刷適性向上剤や消泡剤のように
効果があるような気がするものとか
ステアリン酸カルシウムのように
カレンダー汚れ対策と言われても
気休めにしか感じない薬品とか。
助剤なので量は少なくても数は多い。
これもそれぞれ奥が深いようです。
管理人のまとめ
今回のお話は、コート紙の塗料の成分は
クレー、炭カル、バインダーがメインでした。
クレー、炭カルは粘土、バインダーは
SBRラテックスということでした。
どの成分もありきたりなものですが
それぞれに技術的に奥が深い。
コート紙も単純ではないということ。
紙としても配合処方は品種で
色々と調整するし各薬品の
品質が向上すればまた
配合も変わってくる。
それに、コスト的なものもあるので
常に改善が必要になるんですよね。
実際に製造現場にどの程度反映されるかは
会社の体質によって違うでしょうが
研究開発レベルでは常に新規の
薬品を探っている感じだと思います。
コート紙なんて完成された紙なんですが
それでもやることは色々あるんですね~
この記事が、コート紙の塗料の
参考になればと思います。
コート紙の品質、たまには気にして下さいね!
(参考)
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