古本に茶色い点がある!紙の斑点は酸性紙についたホコリか?

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古本の茶色い点

 

管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。

今回は古本に茶色い点がある!
その原因と正体は?というお話。

最近の学生さんがどうか分かりませんが
管理人は学生の頃は古本をよく買いました。

状態のいいものもあれば悪いものもあって
黄ばんでいたりシミがあるのも味がある。

そんな風に思ってました。

誰だかわからない前の持ち主の
書き込みなんかも面白かったです。

古本ですから色々汚れはあるわけで、
今回の茶色い点もそのひとつ。

本の最初と最後のページ付近、
端から2cmくらいのところにあると。

この原因は何なんでしょうか?

この記事では古本の茶色い点が
発生する原因と正体について

管理人なりの見解を
お伝えしたいと思います。

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古本の茶色い点の原因と正体

古本の茶色い点の正体は何か?

現物を見なければ明確ではないですが
その正体はホコリでしょう。

まず本自体に問題があるのなら
本の内部にも発生するはず。

しかし発生しているのは
最初と最後のページの端の方。

ということは外から入ったもののはず。

古本屋で陳列されていたなら
外から本に入ってくるのはホコリ。

ということで正体はホコリと思われます。

ではなぜホコリが茶色くなるのか?

これはその古本が酸性紙か中性紙か
というのが問題になります。

特に古い本は酸性紙が多いんですね。

その本が中性紙ならホコリが茶色くなる
ということはないのですが、

酸性紙の場合は紙に含まれている
硫酸バンドが湿気で硫酸になるんです。

この硫酸は微量ですが硫酸は硫酸。

長い年月触れていると触れたものを
徐々に酸化してしまう。

ホコリがあるということは
その一点だけ回りより強く接触するわけで

他の部分よりホコリが酸化されやすい
ということになります。

そしてホコリの成分は古本屋なら
紙粉になるでしょう。

紙粉はセルロース繊維ですから
硫酸に接触すれば黄変化します。

それが進むと茶色になるわけです。

これが古本にある茶色い点の
原因と正体ということになります。

もうちょっと言うと、
これはせいぜい紙粉なわけですから、

少々手で触れたからと言って
そんなに危険というわけではありません。

ちょっと気持ち悪いかもしれませんが。

古本の茶色い点 修復は可能か?

ここからは元製紙会社社員として
お話させて下さい。

今回問題になった古本の茶色い点。

その正体はホコリで、
茶色くなった原因は酸による劣化でした。

この場合修復できるのか?

結論から言うと修復は無理でしょう。

ホコリ自体を取り除くことは
できるとしても

ホコリがついていた紙の部分は
紙自体が硫酸で変色しており、

コーヒーが汚れたというのとは
わけが違うからです。

コーヒーや紅茶のシミなら
漂白剤で消すことも出来ますが

硫酸によるパルプ繊維の劣化は
漂白剤でどうにかなるものではありません。

細かいことを言うと硫酸は酸化剤であり、
かつ強力な脱水剤でもあります。

脱水というのは蒸し焼きみたいなもの。

セルロースに含まれる水分が抜けて
炭になるような感じですね。

この場合紙が茶色くなっていくのは
焦げているようなものなんですね。

焦げたものをもとに戻せるか?
と言われるとさすがに無理でしょう。

この説明、厳密性に問題はありますが
イメージとしては間違ってないと思います。

実際これが修復できるなら
茶色くなったボロボロの本でも

修復できることになるんですが
それが困難だから

図書館は古い文献の保存に
苦労しているというわけです。

(参考)
紙の黄ばみが気になるならこちらもどうぞ。

⇒紙の黄ばみを取りたい!汚れている古本を綺麗にする方法

酸性紙と中性紙について

今回のお話。

古本に付着したホコリが酸化して
茶色い点になったということなんですが

酸性紙は何故問題になるのか?
というところを説明したいと思います。

日本の場合、明治以降に
洋紙が導入されました。

この時の製紙技術では
サイズ剤(インクのにじみ防止)薬品を

パルプ繊維に定着させるため
硫酸バンドを使っていました。

このシステムが非常に優秀だったんですね。

しかしその後、
この硫酸バンドに水分に出会うと

硫酸になってパルプ繊維を劣化させる
という問題が発生しました。

欧米で国家的に重要な書類が
ボロボロになってしまったわけです。

その後、原因が硫酸バンド由来の
硫酸だと分かりました。

それでその対策として硫酸バンドを
使わない中性紙が開発されました。

しかし中性紙は酸性紙よりも
技術が難しくコストも高い。

日本では昭和の終わり頃まで
まだまだ酸性紙だったと思います。

その後、紙の劣化問題とか
古紙リサイクル率の向上とか

複数の理由で徐々に中性紙化が
進んだという感じです。

書籍用紙や文庫本の場合は
ユーザーからの要望で

退色しない紙を開発しなければならず
中性紙化したところもありましたね。

ですからここ15年くらいの書籍なら
そんな変色はしないでしょうが

それ以前の書籍の場合
酸性紙が多いので

古本にホコリが付着して
その部分が茶色い点になる

ということがあっても
不思議ではないわけです。

管理人のまとめ

今回は、古本に茶色い点があるが
その原因と正体は何か?

というお話でした。

結局、茶色い点の正体はホコリで、
原因は酸性紙由来の酸による変色でした。

それからこれは酸性紙が使われている
古本だから発生した話で

最近の書籍用紙ならほぼ中性紙なので
こういう問題は起こらないということでした。

またこの茶色い点のようなシミは
繊維自体の劣化になるので

汚れをしみ抜きするようには
修復出来ないということです。

こういう古本に対する対応は
人それぞれだと思います。

内容が貴重なものだから保管したいなら
コピーとかスキャンしてデータ化するとか

そういう方法で保管するのが
良いと思います。

管理人としてはスマホで写真撮影し
データとして保管しておくのがおすすめ。

データをUSBに入れておくとか
クラウドサーバーにアップしておけば

劣化することはありませんし
いつでも必要なときに印刷もできますし。

いずれにしても。

古本にこの手の問題は付きものです。

しかし原因と正体が分かれば
むやみに危険だと思う必要もありません。

管理人は古本には新刊とは
違った味があると思っています。

ぜひ古本を楽しんで下さいね!

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