業務のデジタル化が進まないのは?書類にペンで署名が9割!

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業務 デジタル化

 

管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。

今回は「業務のデジタル化が進まないのはなぜか?」というテーマについてお話しします。実は現在でも、多くの企業が書類にペンで署名し、印鑑を押す文化から脱却できていません。その背景には、単なる技術の問題ではなく、組織文化や人の思考が深く関係しています。

管理人自身、かつて製紙会社に勤務していた経験があり、当時の紙文化にどっぷり浸かっていた一人です。今回は、その経験を交えつつ、なぜ日本企業ではペーパーレス化がなかなか進まないのか、いくつかの視点から考察してみたいと思います。

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かつての現場:紙と印鑑が絶対だった時代

私が勤務していた製紙会社では、それほど規模が大きいわけでもなかったにもかかわらず、社内のあらゆる業務が「紙と印鑑」で成り立っていました。何か一つの書類を作成するだけでも、複数の部署を回って、係長、課長、部長と順を追って全ての上司の承認印をもらう必要がありました。設備をほんの少し調整したり、試験を行ったりするような小さな変更でさえ、計画書を回覧し、上層部の決裁を仰ぐ必要があるのです。書類が机の上で止まってしまえば、数日間は何も進まないことも珍しくありませんでした。

また、技術部や開発部で新しい試験を始めようとすると、内容がまだ具体的に固まっていない段階でも、まず関係各所の許可を取ることが求められました。中には、内容を十分に確認せずに形式的に印鑑を押すだけの上司もいましたが、一方で「俺の承認がないと進められない」と言わんばかりに威圧的な態度を取る人も少なくありませんでした。そうした姿勢からは、業務の改善や効率化よりも、自分が責任を問われないことを最優先している空気が感じられ、組織としての柔軟さやスピード感を失わせていました。

デジタル化が進まない本当の理由

現在では多くの企業が「業務のデジタル化」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を掲げていますが、実際の現場では思うように進んでいないのが実情です。では、なぜこれほど便利なはずのデジタルツールがなかなか定着しないのでしょうか。ここからは、私自身が現場で感じたリアルな理由を、いくつかの視点から掘り下げていきます。

仕事のやり方を変えたくないという心理

業務のデジタル化が停滞する最大の原因は、「変化への抵抗感」にあります。特に長年同じ職場で働いてきた人や、組織の上層部に位置する人ほど、これまでのやり方に対して強い愛着や信頼感を抱いている傾向があります。たとえば、部下に報告書を紙で提出させ、自分の前で口頭で説明させるというスタイル。これには、報告内容よりも「部下を直接見る」「直接管理する」ための儀式的な意味合いも含まれているのです。

こうした文化の中では、メールやチャット、あるいはオンライン会議などは「味気ない」「人間味がない」と捉えられてしまいがちです。しかし、そうしたこだわりが結果的にペーパーレス化や業務効率化の妨げとなっています。本来であれば、情報伝達が正確かつ迅速に行われる手段こそが優先されるべきですが、「形式」や「慣習」に縛られる風土では、それが難しくなってしまうのです。

本当の意味でデジタル化を実現するためには、このような文化的・心理的障壁を取り除く必要があります。若い世代には、物理的な場所に縛られずに仕事を進める感覚が浸透していますが、そのような価値観が組織の上に届くまでには、まだ時間がかかるでしょう。

デジタルデータの保管・管理への不信感

もう一つの大きな要因として、「デジタルデータの信頼性に対する不安」があります。特に年配の従業員にとっては、紙の文書は手に取って目で確認できるため、「確実に存在している」という実感が得られやすいのです。そのため、いくら保管スペースを圧迫しようとも、紙のファイルで管理することが安心感につながるという意識が根強く残っています。

一方で、デジタルデータは「見えない」「消える可能性がある」というイメージを持たれがちです。実際には、クラウド上にバックアップを取り、アクセス権限やログ管理を徹底すれば、紙よりもはるかに安全に保管できるのですが、そうした知識や理解が浸透していない場合、不信感が先に立ってしまいます。

さらに問題となるのは、保存ルールの不徹底です。せっかくのデジタル化も、ファイル名が意味不明だったり、フォルダの構造がバラバラだったりすると、かえって混乱を招きます。そして、こうしたルール違反をしがちなのが、意外にも役職の高い人たちである場合が多いのです。「自分は例外」という意識が無意識に働き、決められた手順を無視してしまうケースも見られます。

「停電したらどうする」という思考の壁

デジタル化に対する不安の中で、意外と根強いのが「停電への恐怖」です。「電気が止まったらシステムも使えない」「パソコンが壊れたらデータも消える」といった心配が、導入への障害となっているのです。こうした意見は、電力やネットワークへの依存が強くなる現代では決して無視できない問題ではあります。

しかし、実際にはこうしたリスクに備えるための技術や手段も確立されています。UPS(無停電電源装置)による一時的な電力供給や、クラウドストレージによる自動保存・自動復旧機能などがその代表例です。また、定期的なバックアップを行っていれば、万が一の際でも業務データを迅速に復元することができます。

にもかかわらず、「紙なら停電しても読める」「印鑑さえあれば処理できる」といった昔ながらの発想から抜け出せない人も少なくありません。これは単なる技術的な問題ではなく、むしろ心理的な問題であり、安心感をどこに求めるかという価値観の違いに由来します。このような思考の壁を取り払うには、実際の運用例や成功事例を通して少しずつ理解を深めてもらうしかないのかもしれません。

時代は変わった、でも人は変われない?

テクノロジーの進化は日進月歩で、クラウドストレージやビジネスチャット、電子署名など、かつては想像もしなかったような便利なツールが当たり前のように使われる時代になりました。しかし、それらの技術を業務に本格的に取り入れていくには、単なるシステム導入だけでは不十分です。実際に運用する側の「人」がそれを受け入れ、活用できなければ意味がありません。

特に、紙の書類での業務が当たり前だった時代にキャリアを積んできた人々にとって、新しいやり方に切り替えることは簡単ではありません。そのような世代がまだ多く管理職や経営層を占めている場合、現場でいくらデジタル化を推進しても、上からの理解と支援がなければ浸透は難しいでしょう。

結局のところ、本当の意味での業務のデジタル化を進めるには、世代交代によって価値観そのものが変わっていくのを待たなければならないのかもしれません。これは単なる技術革新の問題ではなく、「価値観の交代」という根深い課題です。

歴史を振り返れば、かつて地動説が真実であると証明されながらも、長い間天動説が支配的だった時代がありました。地動説が一般に受け入れられるようになるまでには、天動説を信じていた世代が引退し、新たな視点を持った人々が主導権を握るようになる必要があったのです。これと同様に、紙文化からの脱却もまた、同様のプロセスを経なければならないのかもしれません。

管理人のまとめ:紙文化からの脱却には時間がかかる

この記事では、なぜ日本企業を中心に業務のデジタル化が思うように進まないのか、その背景について管理人自身の体験や視点をもとに掘り下げてみました。実際に現場で見てきたこと、感じてきたことを踏まえると、そこにはいくつかの大きな理由が存在していると考えます。

  • 上層部が変化を拒む文化
  • デジタルデータへの根強い不信感
  • 仕事のやり方そのものを変えたくない心理

これらの課題は、単にデジタル技術を導入すれば解決できるというものではありません。むしろ、問題の本質は人間の思考や価値観にあります。つまり、技術の問題ではなく「人の考え方」に起因する壁が立ちはだかっているのです。

だからこそ、変化には時間が必要です。一度や二度の研修で意識を変えることは難しく、日々の業務や環境の中で少しずつ意識を変えていくような長期的な取り組みが求められます。業務効率化や生産性の向上、さらには働き方改革を進める上でも、この意識の転換は避けて通れないテーマです。

今後10年は、デジタル化に対する価値観が大きく入れ替わっていく過渡期になると予想されます。新しい技術を受け入れ、それを活かせる人材が増えていくことで、ようやく本当の意味での業務のデジタル化が実現していくことでしょう。

この記事が、業務のデジタル化に向けた取り組みの中で立ち止まってしまっている方々にとって、少しでも考えるきっかけやヒントとなれば幸いです。

(参考)
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プロフィール
べぎやす

元製紙会社社員。
技術者として入社し16年間勤務する。
開発技術部門、営業管理部門、現場管理部門など様々な部署を転々としたあと独立。
紙に関するコンサルタントとして今に至る。

詳しい運営者情報はこちらからご確認いただけます。
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