この記事は約 10 分で読めます。
管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回のお話は、情報用紙と
印刷用紙の違いについて。
管理人は元製紙会社社員で印刷用紙も
情報用紙も担当したことがあります。
ただ、印刷用紙とか情報用紙とか
普通の人は気にしてませんよね?
そういう違いがあると言われて
そうなのかと思う程度でしょう。
管理人も製紙会社で働いたから
そういう区別があると知ってますが
関係なければ紙にそんなに種類が
あることさえ知らなかったでしょう。
それはそうとして。
情報用紙と印刷用紙の違いは
どうなっているのでしょうか?
ということで。
この記事では情報用紙と
印刷用紙の違いについて
管理人の調べたことを
お伝えしたいと思います。
情報用紙と印刷用紙の違いは用途による
まずは情報用紙と印刷用紙の定義。
情報用紙
情報用紙とは、コピー用紙、インクジェット紙、
ノーカーボン紙、フォーム用紙、感光紙、
感熱紙など、情報システム用の紙を指し、
各種OA機器でアウトプットされる紙。
印刷用紙
印刷用紙とは一般の
印刷会社で印刷され、
印刷物として見たり読んだり
することが主要目的である紙。
ということです。
もう少し大雑把に言うと
情報用紙はプリンタで使う、
印刷用紙は印刷機で使う
という感じですかね。
たとえば。
コピー用紙は情報用紙です。
これはコピー機、レーザープリンタ
インクジェットプリンタなどで使うので。
一方チラシは印刷用紙です。
これはオフセット印刷機で
印刷されますから。
それらの紙がそんなに違うのか?
これは製紙会社で製造していた
人間からすると全く違うんです。
見た目は同じようでも。
そこで、何がどう違うのかちょっと
お話させていただきたいと思います。
情報用紙はプリンタに特化している
まずは情報用紙。
管理人はこの情報用紙の中でも
インクジェット用紙に関わりました。
インクジェット用紙はインクジェット
プリンタに特化した紙なんですよね。
当たり前ですけど。
イメージとしては紙ではあるんですが
プリンタの「部品」という感じなんです。
消耗する部品ですね。
だからこの機械にはこの部品
という感じでの設計になります。
極端に言えばインクジェット
プリンタが変わると紙も変わる。
キヤノンとエプソンでは純正紙は
品質設計が違うんですよね。
キヤノンで使えてもエプソンでは
使えないとか一応そういうのあります。
だいたいは問題無く使えますけど。
ましてやインクジェット紙を
レーザープリンタで使うとか
その逆もそうですがちょっと
難しいものがあるんですよね。
普通紙タイプはまだいいんですが
コート紙タイプは絶対に無理。
品質設計のコンセプトが
全く違うので無理なんです。
レーザープリンタで使えるコート紙は
インクジェットプリンタでは使えない。
レーザープリンタで使うインクは粉体トナーで
インクジェットで使うインクは水性インク。
レーザー用には水を吸収する機能が
ないのでインクジェットでは使えない。
その他の情報用紙としてはたとえば
レシートに使われる感熱紙もあります。
これもサーマルプリンタ以外では使えない。
レーザープリンタで使おうとすると
ドラムの熱で真っ黒になるでしょう。
インクジェットプリンタで使おうとすると
インクを吸収しないのでにじむでしょう。
こんな感じで、情報用紙はプリンタに
特化して品質設計されているんですね。
印刷用紙は印刷機に対応している
一方の印刷用紙。
これも印刷機によって設計が違います。
印刷用紙の場合は、凸版、オフセット、
グラビア、スクリーン、あたりでしょうか。
管理人が担当していたのは
オフセット、グラビアが多かった。
今の主流はオフセットになります。
印刷の画像としてはグラビア印刷が
一番きれいだと言われてました。
今はオフセット印刷でも
相当キレイだと思いますが。
紙を作る側はこれらの印刷機用に
それぞれの品種を製造するわけです。
オフセット印刷は比較的どんな
紙でも印刷できる感じですかね~
ただ、表面強度はうるさかった。
管理人が担当していた頃は
印刷機の高速化が進んでいた。
印刷機が高速化すると紙の表面強度が
弱いと紙ムケが発生するんですよね。
紙粉、ピッキング、というクレームが来る。
これが起こると、印刷物で
白い斑点が紙面に出てくる。
少々白抜けがあったって良いじゃないか
と思うんですけどもちろんそうはいかない。
かなり怖いのは人の顔でしたね。
女優さんの顔に白抜けとか最悪。
ポスターなんかも怖いですけど
写真集が怖かったですね。
ほとんど採用されたことないですが。
本当に高価な女優の写真集で
紙粉があったら大変なことになる。
最悪本人からクレームが来る。
そうなるともう紙の補填とか
そんなレベルでは済まない。
べらぼうな補償が必要とか。
実際にはこんなことはなかったんですが
本当に怖いことがあると思いました。
管理人が実際に見たクレームは
社会党の選挙ポスターでした。
そのポスターの議員さんの顔が
紙粉だらけになっているというやつ。
その選挙では社会党惨敗してました。
今はもう、政党自体が消えましたが。
印刷用紙でもうひとつ多いのはグラビア。
グラビア用紙はオフセットとはまた
全く違うコンセプトになります。
違う理由はインクの違い。
オフセットインクはタックと言いますが
粘度が高い水飴みたいなんです。
一方のグラビアはシャバシャバで
水みたいな感じのインクです。
オフセットで表面強度が重要なのは
インクのタックに負けないため。
高速化するほど厳しくなります。
一方のグラビアインクはシャバシャバなので
表面強度はそれほどうるさくない。
そのかわり、紙にインクを押し付ける
というよりもインクを吸わせる感じ。
なので、表面の平滑性とかクッション性とか
吸油度というパラメータが重要になる。
塗料設計も優先度が違うんですよね。
オフセットはバインダーが
強力でないといけないが
グラビアはむしろ少なくして
クッション性を上げるとか。
グラビアの場合も白抜けのクレームは
あったんですがそれは原因が違う。
オフセットのように紙粉ではなく
インクの付きが悪いということ。
平滑度が低いとかそういうことでしたね。
まあ、こんな感じで印刷用紙は印刷機に
特化した品質設計をしています。
情報用紙がプリンタ特化しているのと同じく
印刷用紙も印刷機に特化しているんです。
この2つの紙は分野としては分けてますが
実はそれぞれの中でもかなり違います。
どうすればキレイに印刷できるか、
それを追求して細分化している感じ。
結局、情報用紙と印刷用紙の違いは
プリンタか印刷機かで分けているだけ。
本音を言うと業界の違いが
大きいように思います。
情報用紙は大企業が相手。
印刷用紙は超巨大企業2社と
ものすごい数の中小零細が相手。
作ったり売ったりする側は
どちらが相手でも大変ですけど。
管理人のまとめ
今回は、情報用紙と印刷用紙の
違いについてというお話でした。
結論から言うと情報用紙はプリンタ、
印刷用紙は印刷機に使う紙ということ。
現実には、情報用紙といっても
レーザープリンタ、インクジェット、
感熱紙、ノーカーボン紙なんかで
それぞれみんな設計が違う。
印刷用紙も凸版、オフセット、グラビア
スクリーン印刷などで設計が違う。
だからこの分け方は便宜上分けているだけで
本当はそれぞれの紙で品質は違うんです。
あえて本音を言えば。
業界が違う。
どちらがどうとは言えませんが。
情報用紙は電気屋さん。
印刷用紙は印刷屋さんとか
出版会社という感じですかね。
生産する側はそれぞれ
対応の仕方が違ってました。
管理人は印刷用紙が長かったので
印刷屋さんが気楽な感じでしたけど。
この記事が、情報用紙と印刷用紙の
違いの参考になればと思います。
情報用紙にしても印刷用紙にしても特別に
設計されていることを分かって下さいね!