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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は、カレンダーの
紙の名前は?というお話。
この場合は、カレンダーといっても
キレイな写真が印刷されているやつ。
名前はコート紙になります。
多いのは厚物のA2コート紙ですね。
それからアート紙やスーパーアート、
ダルアーとといった高級コート紙。
日めくりカレンダーの場合は
片艶晒クラフト紙や上質紙ですが、
これらはポスターのようなキレイな
印刷はされませんよね。
カレンダーというのは大した枚数は
印刷されませんが、品質は厳しい。
使用される紙はポスターや写真集に
使用される紙と同じ品質になります。
ではなぜコート紙はキレイに印刷できるのか?
これはちょっと専門的なお話になります。
ということで、
この記事では、カレンダーの
紙の名前とその品質について
管理人なりに調べたことを
お伝えしたいと思います。
カレンダーの紙の名前はコート紙
先程もお話しましたが、カレンダーの紙の名前は「コート紙」と呼ばれるものです。
このコート紙というのは、表面に塗料を塗って加工された紙で、印刷適性が非常に高く、写真やグラフィックなどを美しく再現できる特性を持っています。
実際にカレンダーに使われるのは、厚物のA2コート紙やアート紙と呼ばれる種類が中心です。これは、見た目の高級感やしっかりとした手触り、耐久性を求められるためです。
ここで「コート紙の厚物」と言いましたが、コート紙には「米坪」という単位があり、紙1平方メートルあたりの重さ(g/㎡)によって分類されます。この米坪によって、塗工量──つまりどれだけ塗料を塗るか──も変わってくるのです。
塗工量とは、文字通り、塗料をどれだけ紙に塗布しているかを示す指標で、単位はg/㎡で表します。米坪と同じ単位で示されることで、紙の重さに対してどれだけ塗料が乗っているのかを比較できます。
コート紙の印刷が美しく見えるのは、この塗工によって紙の表面がなめらかになり、インクがきれいに定着するからです。
この塗工量が多いほど、紙の表面がより平滑になり、結果として鮮明な印刷が可能になります。
イメージとしては、女性の化粧に近いものがあり、化粧品をしっかりと塗れば塗るほど、肌の凹凸が隠れてなめらかに見えるというのと似た発想です。
もちろん、塗る塗料の種類やバランスも大切で、ただ多く塗ればいいというわけではありません。しかし、同じ種類の塗料を使うなら、やはり塗工量が多いほうが表面の仕上がりは美しくなります。
ちなみに、何も塗工されていない「非塗工紙(上質紙など)」では、表面にパルプ繊維がそのまま見えてしまっています。これらの繊維は、どれだけ平滑にしても直径が20μm程度あります。
一方で、塗料に使われる無機顔料の粒子径はかなり小さく、一般的には2μm以下が用いられます。これらの小さな粒子を紙の表面に均一に塗り広げることで、紙の表面はなめらかになり、印刷品質が向上するのです。
実際には、単一サイズの顔料だけでなく、やや大きめの粒子と組み合わせたり、細長い形の粒子や、平板状のものを混ぜたりすることもあります。
こうした顔料は、主に無機顔料が使用されますが、用途によっては柔らかさや弾力性を持たせるために有機顔料を併用することもあります。
また、塗工は1回塗れば終わりではなく、より均一で高品質な仕上がりを求めて、2回塗り、あるいはそれ以上の多層塗工を施すこともあります。
これは、家の壁にペンキを塗るときと同じように、1回で厚く塗るよりも、薄く何度も重ねるほうがムラなくきれいに仕上がるという理屈です。
このような塗工工程を支える設備がなければ、紙を何度も塗工機(コーター)に通す必要があり、その分だけ生産効率は落ちてしまいます。しかし、その分品質は確かで、見た目にも美しく高級感のある紙が得られるのです。
高品質のコート紙を作るためには、原紙の凹凸を塗料でしっかりと覆い隠す工夫がなされています。塗工量を増やすことで白紙光沢が高まり、それに伴って印刷後の光沢も美しく出るようになります。
そして、このコート紙の表面をさらに整える工程として「スーパーカレンダー」と呼ばれる機械で仕上げを行います。
このスーパーカレンダーは、金属ロールとコットンロールの間に紙を通して、圧力をかけながら表面を磨き上げ、さらに平滑性と光沢を向上させる機械です。
具体的には、紙をロールの間に挟んで、金属面を紙に押しつけ、すべらせるように圧力と摩擦を加える仕組みです。
塗料に使われる粒子が細かければ細かいほど、最終的な表面もよりなめらかになります。ただし、粒子径を小さくしすぎると、塗料の製造が難しくなるうえ、光の波長よりも小さくなることで透明になってしまうという問題も出てきます。
透明な塗料は、それはそれで特殊な用途に使えますが、印刷用のコート紙にはあまり向いておらず、コストも非常に高くなってしまいます。
そのため、一般的には2μm以下、例えば1μmや1.5μmあたりの粒子が多く使われており、そこに少し大きな粒子や形状の異なる粒子を混ぜてバランスをとる工夫がなされています。
このような塗料設計の工夫と、何度も塗工する工程によって、高品質なコート紙が完成するのです。
それで、話を最初に戻すと、紙の米坪が高い、つまり重くて厚い紙であれば、より多くの塗料を塗ることができます。
逆に、紙の米坪が低ければ、それに比例して塗工量も減ってしまいます。
これは市場の需要と関係があり、厚い紙には高品質が求められる反面、薄い紙にはそこまでの品質を求めないという現実があります。
例えば、A2コート紙も厚さが薄くなると、使用される用途がチラシや簡易印刷物に移っていきます。
それ以上に薄い紙になると、A2ではなくA3コート紙という別グレードの紙が使われることが多くなります。
このA3コート紙になると、たとえ塗料のレシピ(処方)が同じでも、塗工量がぐっと減るため、印刷後の品質は明らかに下がります。
当然、そのような紙は広告や宣伝などの用途に使われることが多く、印刷の精度や色の再現性よりも、コストや発行部数のほうが重視されます。
ちなみに、スーパーや家電量販店などが配布するチラシには、A3コート紙が使われることが圧倒的に多いです。
一方で、自動車や不動産といった高単価の商品、あるいは学習塾やスポーツクラブなどの広告では、A2コート紙が多く使われています。
これは、紙の質感や印刷の美しさが、商品のブランドイメージに直結すると考えられているためです。
例えば、もしスーパーや家電量販店がアート紙を使ってチラシを配っていたとしたら、印象として「高そうだな」と思われてしまい、かえって消費者の購買意欲を下げる可能性もあるのです。
管理人のまとめ
今回のお話は、カレンダーの
紙の名前についてでした。
カレンダーに使われる紙はコート紙。
基本的にA2コート紙の厚物、アート紙、
スーパーアート紙、ダルアート紙など。
印刷がキレイなのは
塗料を塗工しているから。
というか、塗料を塗工することで
印刷品質を向上させているんですね。
それから、コート紙は紙表面を粒子径の
小さい塗料で覆うことで表面をなめらかにして
紙を平滑にして白紙光沢を出す、
ということもお話させていただきました。
この記事が、カレンダーの紙の名前や
印刷品質の参考になればと思います。
キレイに印刷されたカレンダー、
楽しんで下さいね!