管理人の紙コンサルこと、
べぎやすです。
このカテゴリでは紙の厚さと重さや
連量の意味などをお伝えします。
紙にとって厚さと重さは重要で
最も基本的な物性です。
厚さは紙厚ともいいますが、
単位はμmですから長さです。
重さは米坪とか坪量といいますが、
単位はg/㎡で表されます。
1㎡当たりのグラム数のことです。
そして紙を厚くしたければ
重くすれば良いという相関があります。
いずれにしても、
紙の製造では最初に決める数値。
この紙は米坪何g/㎡で
紙厚を何μmに設定するのか。
またはライバルの紙厚が何μmなので
米坪は何g/㎡になりそうだとか。
管理人が技術部にいた頃は
ずいぶんそんなことをやりました。
一方営業や印刷会社だと
連量が重要。
連量は米坪とサイズから決まる
紙1000枚の重さのことですが、
この数値が商取引に使われるし、
紙厚も代用してますね。
このカテゴリでは
紙の厚さと重さの関係や
紙厚が連量で示される理由などを
お伝えしたいと思います。
【紙の厚さと重さの関係】
紙の厚さと重さには
正の相関関係があります。
単純に米坪が重くなれば
紙厚も厚くなるということです。
ただし、これが成立するのは
同じ銘柄のときだけで、
品種の違うもので比較しても
意味はありません。
たとえば上質紙とコート紙の紙厚を
同じ米坪で比較した場合、
コート紙よりも上質紙の紙厚が
厚くなります。
理由は以下の通り。
上質紙の成分はほぼパルプですが、
コート紙の成分はパルプと塗料。
パルプと塗料を比較すると
パルプの方が塗料よりも厚い。
だから、ほぼパルプの上質紙の方が、
コート紙よりも厚いことになります。
また、コート紙の場合は、
表面の光沢を得るために
カレンダーで紙を圧縮しますから、
なおさら紙厚は薄くなる。
これは比較としては
分かりやすい例ですが、
このように品種や銘柄が違えば、
同じ米坪でも紙厚は違うわけです。
【紙の厚さと重さと連量の関係】
紙の重さを示す数値として
連量というのもあります。
kg連量とも言われます。
これは商取引でよく使われる数値で、
紙1000枚あたりの重さになります。
ちなみに段ボールなどの板紙の場合は
紙100枚あたりの重さです。
紙の具体的な計算法は、
連量=米坪(g/㎡)x紙の面積(㎡)x1000枚
となります。
一般的にはこの面積は
四六判が使われることが多いです。
たとえば、米坪64g/㎡、四六判を計算すると、
四六判の面積
=788x1091mm
=0.788×1.091m
=0.860㎡
なので、
連量
=64g/㎡x0.860㎡x1000枚
=55040g
=55kg
となります。
連量の単位はkgで
端数が出た場合の取り扱いは、
小数点1位を二捨三入七捨八入して
整数又は0.5kg単位とする、
ということです。
紙の寸法が四六判でなくても、
四六判換算の連量を使うことが多いので、
今はどの連量で話をしているのかは
常に確認したほうがいいですね。
前提条件が違っていると
話が合わなくなりますから。
それからもう一つ。
先程計算したとおり、
連量は米坪から算出されます。
だから連量と紙厚には
相関関係があります。
しかし、それは同じ銘柄、同じ寸法で
比較した場合に限ります。
銘柄が違ったり寸法が違う時に
紙厚を連量で代用することはできません。
たとえば、
連量は薄いからにしてくれ、
という会話があったとします。
その場にいる人は
銘柄も寸法も分かっているから
こんな会話が成立しますが、
部外者は確認が必要なわけです。
ここで品種とか銘柄とか
用紙のサイズとか
そういうことを確認せずに
あとでトラブルに巻き込まれる。
お客さんの意図と
違うものを納入したりとか。
ちょっと嫌なことを
思い出してしまいました・・・
【紙の厚さと重さと品質設計】
ここからは元製紙会社社員の
技術部だったときの体験談。
紙は重さで取引されます。
kg連量が重要なのは、
紙の取引が重さだから。
この時の重さは
実重量ではなくて定貫重量。
定貫重量というのは、
定められた重さということ。
実際にはたとえば
米坪64g/㎡で連量なら
その紙の実際の米坪が
70g/㎡であったとしても
64g/㎡で連量として
取引されるということ。
定貫はあくまでも64g/㎡だから
もしも実重量70g/㎡の紙だったら
製紙会社は大損する、
というわけです。
ではなぜこれが技術的な問題なのか?
ちょっと説明してみます。
たとえば、ライバルの紙がある。
ユーザーは、
この紙と同じ紙厚の紙が欲しい。
米坪はAg/㎡だから
これと同じにしてほしい。
こんな要求が来たとします。
それで品質設計をしてみると、
どうみても自社で作ると
こんな厚い紙は出来ない
ということがわかる。
じゃあどうするんだとなったとき、
ユーザーが重要顧客でなければ
出来ませんと断るんですが、
問題は相手が長い付き合いだったとき。
無理やりでもいいから
合わせて作れと言われたら、
所定の紙厚になるまで
米坪を上げて対応するしかない。
当然コストは上がって大損します。
しかし、ライバルと同じ米坪で
同じ紙厚を出す技術がないので、
コストが上がって損をしてでも
対応するしかない。
こんなことがよくあったんですね。
お客さんはいい紙が出来たと
喜んだのでしょうが、
元製紙会社社員としては苦い思い出。
一方ユーザーは定貫重量で購入しても
枚数で商売するので、
実重量が重くて定貫重量が軽いほど
オトクな買い物というわけです。
出版用紙のように本になる紙は
そういう要求が多かった気がします。
【管理人のまとめ】
今回は紙の厚さと重さのお話でした。
紙の厚さと重さには相関があります。
同じ銘柄なら重いほど厚い
ということです。
ただし、品種が違えば
それは成り立ちません。
だから注意が必要ということでした。
また紙厚の代用として
連量が使われることもありますが、
これも銘柄や寸法を確認しないと
話がおかしくなるとお伝えしました。
元製紙会社社員としては、
要求された紙厚にするために
ずいぶん重い紙を作ったという
思い出が、、、
いずれにしても。
紙厚はユーザーにとって重要なもの。
特に本を作る場合、
薄すぎると手で持ったとき頼りないし、
厚すぎると一冊が分厚くなりすぎて
段ボール箱に入らなかったりする。
紙を選ぶときは銘柄は当然ですが、
連量や紙厚にもご注意を。
紙を正しく選んでもらえれば
ありがたいことですし、
自分の失敗談を
お話をした意味もあったかなと。
紙の厚さと重さのこと、
理解した上でうまく選んで下さいね!