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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回のお話は、上質紙より
再生上質紙の方が高いことについて。
主婦の方で新聞古紙の回収に
協力している人も多いと思います。
再生紙を使う方が環境に
やさしいんじゃないかとか。
それに古紙を使う方が
コストが安くなると思いますよね。
でもそれってケースバイケース。
正直に言うと古紙を使った方が安い紙と
古紙を入れると高くなる紙があります。
今回お話する上質紙については
古紙を入れると高くなるケース。
ではどんなケースで価格が安くなって
どんなケースで高くなるのか?
この記事では上質紙よりが再生上質紙の
コストが高い理由について
管理人なりに調べたことを
お伝えしたいと思います。
上質紙より再生上質紙のコストが高い理由
元製紙会社社員の立場で言うと
古紙配合を考える場合、
まず紙の白色度がどれくらいなのか
ということを考えます。
白色度というのは紙の白さですね。
白い紙にしたければ
白いパルプを使えばいい。
しかし古紙パルプは
通常白色度が低いわけです。
回収されてくる紙が上質紙なら
白色度は高いですが
古紙は色々混ざっているし
数量的には圧倒的に新聞紙が多いので
新聞紙と同じくらいの
白色度の古紙パルプになる。
それで白色度の低い紙
たとえば雑誌に使われる紙なら
白いパルプと古紙パルプを
混合することが出来るんですが
上質紙のように白いパルプ100%だと
白色度の低い古紙パルプは入らない。
そもそも、上質紙の定義は
晒クラフトパルプ100%の紙。
古紙パルプを配合したらそれは
上質紙ではないはずなんです。
しかしそれでも古紙パルプを配合して
上質紙を製造しなければならない。
それでどうしたかというと
古紙パルプをさらに漂白したんですね。
通常古紙パルプは若干は漂白します。
しかしそれは薬品の効果が高い
白色度までしかやらない。
それ以上漂白すると薬品費が
ハネ上がってしまうんですね。
それに、新聞紙や更紙など白色度が
低い紙に使うならそこそこ漂白すればいい。
ところが上質紙に配合するとなると
目一杯漂白しないと配合できないわけです。
そういう古紙パルプを生産すると
薬品費はかかるし漂白時間もかかる。
古紙パルプ設備も改造する必要がある。
こんなことをしていると
高白色の古紙パルプは
晒クラフトパルプとコストが変わらないか
逆転することになるんですね。
管理人の経験では高白色の古紙パルプは
環境問題のPRにはよかったものの
現実には需要が少なく、
非常に割高なパルプになってました。
多分どこの製紙会社でも
似たようなものだと思います。
ただでさえコストがかかるパルプなのに
生産量が少なくて割高になりますから
そのコストが製品にかかってしまい
再生上質紙は上質紙より高くなるんです。
それに品質的にも古紙パルプより
バージンパルプの方がいい。
バージンパルプというのは
リサイクルしていないパルプのことです。
ユーザーとしては再生上質紙を
使う理由はイメージだけだと思います。
製紙会社としても高く売れるならいいですが
そうでなければやりたくはありません。
企業として高くて品質が悪い製品を
作るメリットはないですから。
上質紙と再生上質紙を見分ける方法
ここまで上質紙よりも再生上質紙の方が
値段が高くなる理由をお話しました。
ではそれぞれの違いを
見分ける方法はあるのでしょうか?
正直に言うと製紙会社に
古紙が入っていると言われたら
本当に入っているのかどうかを
証明することは難しいです。
その製品の古紙配合率ともなれば
操業日報でも見ない限り分かりません。
ただそれでも目安になる
確認方法はあります。
管理人がよくやっていた方法は2つ。
ひとつは蛍光染料を確認する方法
もうひとつは機械パルプを確認する方法です。
ではひとつずつ説明します。
蛍光反応を確認する方法
この方法は紙にブラックライトをあてて
蛍光反応を見るというものです。
ブラックライトというのは
紫外線を出すライトのこと。
蛍光染料には紫外線が当たると
青紫色とか赤紫色の発色をするという
性質があるんですがそれを利用して
蛍光染料の有無を調べる機械です。
それで古紙が入っていると
ブラックライトが光るんです。
どういうことか?
新聞古紙を回収すればチラシも混ざりますが
そのほとんどがコート紙がなんですね。
またコート紙の塗料には見た目を
白くするために蛍光染料が使われます。
ということは、コート紙を含む古紙パルプを
配合していれば蛍光反応が出るということ。
本物の上質紙の場合蛍光染料は
使いませんから蛍光反応も出ない。
ただしこれは簡単に偽装できます。
バージンパルプ100%なのに
再生上質紙に見せたい場合は
製造するときに蛍光染料を
添加すればいいわけです。
だから絶対に識別できるわけではなくて
あくまで目安ということですね。
まあ、元製紙会社社員の立場で言うと
こんなコストのかかる偽装はしないですけど。
機械パルプを確認する方法
もうひとつは機械パルプチェックペンで
機械パルプの有無を確認する方法。
「アストロ上質・中質紙チェックペン」
という名前で市販されていますが、
このペンで紙をチェックすると
機械パルプが入っていると
チェックしたところが赤紫色になります。
この方法で機械パルプが入っているかは
簡単に確認できます。
ではなぜこれが古紙パルプの
確認になるのか?
実は古紙パルプのメイン原料は
新聞古紙になるんですが
新聞紙には一定量の
機械パルプが使われるんです。
だから新聞紙を原料とした古紙パルプは
機械パルプが入っているというわけ。
ただしこの方法も欠点があります。
もしも製紙会社が原料として
機械パルプを使っていない上質紙や
コピー用紙だけを使った古紙パルプを
使いましたと主張した場合ですね。
これが本当なら機械パルプは
存在しなくて当然ということになります。
現実にはレアケースだと思いますが。
とりあえずこの2つが古紙配合品かどうかの
確認方法となりますが抜け道はあります。
たとえば、高白色に漂白した
機械パルプを配合して
サイズプレスの澱粉に蛍光染料を
添加して紙に塗工する。
そうすれば上記の方法では
見分けがつきません。
製紙会社としては古紙が無くても
古紙入り品に見せかけることは出来る。
これはコストが高くなるのでやりませんが
その気になれば出来るということです。
管理人のまとめ
今回は上質紙より再生上質紙の値段が
高い理由についてのお話でした。
再生紙と言っても白色度によって
コストは変わってくる。
白色度が低ければ古紙パルプは安いが
高白色にすると古紙パルプは高くなる。
薬品費が高くついたり
生産量が少ないと割高になるとか。
だから再生上質紙の値段は高い
ということでした。
古紙配合品かどうかの見分け方を
2種類紹介しました。
ひとつはブラックライトで
蛍光反応を見る方法。
もうひとつは中質紙チェックペンで
機械パルプの有無を見る方法。
どちらもある程度目安になると思います。
この記事を読んで再生上質紙の価格が
高い理由を理解してもらえればうれしいです。
リサイクル品とはうまく付き合って下さいね!