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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回のお話は、
万年筆に合うコピー用紙はあるのか?
自分の知り合いに文具好きがいます。
もちろん万年筆も集めています。
最初は万年筆を買うだけで良かったのが
書き味がなどと言い始めて、
軸、ペン先、インク、紙と凝り始める、
ということだそうで。
紙ならもっと書き心地のいい紙を
ということで文具屋で探すんだとか。
自分は元製紙会社社員ですから、
紙はちょっと気になります。
万年筆でメモ書きに使える
安いコピー用紙があるのかとか。
ということでこの記事では、
万年筆とコピー用紙について
自分なりに調べたことを
お伝えしたいと思います。
万年筆に合うコピー用紙はない!
万年筆と相性のいい
コピー用紙はありますか?
こう聞かれると
元製紙会社社員の立場としては
それはないでしょうね、
と答えます。
もしかすると上手く調整すれば
気持ちよく書けるコピー用紙が
あるのかもしれませんが、
紙の品質的には難しい。
それには理由があります。
まずコピー用紙というのは、
トナーで印刷するための紙。
トナーが画像を形成するための
紙の表面抵抗値(電気抵抗のこと)や
コピー機内での搬送性を
重視して品質設計をします。
しかしペンで書いて
にじむかどうかは考慮しません。
一方筆記用紙の場合は、
万年筆などで書いてにじまないよう、
にじみ防止薬品(サイズ剤)の
添加量などを調節します。
実際に書いてみたときの感触とか、
そういうことも考慮します。
しかしコピーの適性は考えません。
コピー用紙と筆記用紙、
見た目は似てますが
品質設計の考え方は全く違うんです。
だから元製紙会社社員としての回答は、
両立する紙はないでしょう、となります。
しかも万年筆と紙は、
筆記用紙であったとしても相性が難しい。
使う人によっていい悪いがあるし、
インクの種類によっても変わる。
ペン先からの吐出量でも違うし、
軸の形状で筆圧も変わる。
そんなことを考えだしたらキリがない。
ですが、文具好きな人はそれが楽しみ、
ということで色んな紙を探すようです。
なので、これなら大丈夫という紙はない。
ですが一応、
管理人おすすめの紙はあります。
どちらもコピー用紙ではありませんが、
メモ用にということであれば、
長門屋商店のホワイトペーパー中厚口、
巴川製紙所「トモエリバー ルーズシート」
(超軽量印刷用紙)
が候補となります。
他にも色々あると思いますが、
とりあえず良さそうなものということで。
なお、どちらも通販で購入可能。
しかし、ホームセンターで売っている
コピー用紙と比較するとかなり高い。
このあたりはその人の価値観。
安ければいいのなら、
ホームセンターのコピー用紙。
書き味とか裏抜けなどにこだわるなら、
上記のような紙を使ってみてもいいかなと。
万年筆がにじむかどうかは紙のサイズ度で決まる
ここからは元製紙会社社員として
お話させて下さい。
先程ちょっと書きましたが、
万年筆のにじみ対策について、
元製紙会社社員の立場から
もう少し詳しく説明します。
万年筆の使い方で
変わっては来るんですが、
万年筆のにじみは紙の「サイズ度」、
というもので決まってきます。
ここでいうサイズ度というのは、
紙のにじみやすさの指標です。
大きさの話ではありません。
ちょっとややこしいですね。
それで、このサイズ度が小さいと
にじみにくいということになります。
測定方法はいくつかありますが、
万年筆の場合はペン書きサイズ。
試験方法は単純で、
(1)製図ペンにインクを入れ、
インクの出具合を確認する。
(2)平らな板の上に試験片を置く。
(3)紙の縦方向または横方向に沿って、
約5mm間隔に定規を用いて罫線を引く。
(4)約5分後にこれらの線に
直角に交差するよう線を引いて、
網目状の模様を描く。
(5)インクのにじみの大きさを測る。
こんな感じで測定し、
にじみが少ないほどいい。
製紙会社ではにじみコントロールのために
サイズ剤という薬品を使用します。
紙の繊維はセルロースで親水性なので
水は広がってにじむ。
だから疎水性のサイズ剤を添加して、
にじまないようにするというわけ。
ただ、にじまないようにするために、
サイズ剤を沢山入れたらいいのかというと
薬品の効果にも限界があるし、
コストもかかるのでそうは行きません。
また微妙なにじみはパルプ繊維に沿って
インクがにじんだりもします。
その場合はパルプ繊維の長さや太さが問題。
紙に添加している炭酸カルシウムや
タルクなどの影響も受けます。
単純に水が広がらないようにするだけなら
サイズ剤で決まるのですが、
実際にはその他の要因もあるので、
なかなか難しいんですね。
万年筆のインクの裏抜けは米坪と内添填料で決まる
もうひとつ万年筆と紙で重要なのは裏抜け。
これもインクの状態で変わってきますが、
紙で重要なのは米坪と内添填料。
米坪とは、1㎡当たりの紙の重さのこと。
g/㎡で表します。
当たり前のことですが、
米坪が重いほど裏抜けはしにくい。
それから内添填料。
内添填料は紙に添加している薬品。
炭酸カルシウム、タルク、クレー、
といった薬品で土の成分ですね。
紙の平滑性や不透明度を上げるために
このような薬品を添加しているんですが、
この内添填料が多いほど
裏抜けしにくくなります。
内添填料がインクを止めるイメージ。
これも入れれば良いというものではなくて、
入れすぎると紙の強度が落ちるし、
薬品によっては操業性も悪くなるので、
添加量には限界があります。
こんな感じでコストとのバランスを見ながら
品質のコントロールをしてましたね。
管理人のまとめ
今回は、万年筆に合うコピー用紙について
お伝えしました。
管理人はコピー用紙ではありませんが、
長門屋商店のホワイトペーパー中厚口、
巴川製紙所「トモエリバー ルーズシート」
これら2銘柄をおすすめしておきました。
ただし、万年筆と紙の相性は難しいので
これでうまくいく保証はありません。
この万年筆でこの紙に書きたい、
というのがあるのなら、
万年筆屋さんに現物を持ち込んで
調整してもらうのが良いと思います。
いずれにしても万年筆と紙は永遠のテーマ。
好みの組み合わせを見つけるのも
文具好きの楽しみの一つでしょう。
是非お気に入りの紙を見つけて下さいね!