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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回はバージンパルプと再生紙の違い?
木材由来か古紙リサイクルかというお話。
管理人は元製紙会社社員。
しかし、製紙会社に入るまで
バージンパルプ、知りませんでした。
その意味はなんのことはない
木材から作ったパルプのこと。
一度も紙になってないということですね。
再生紙は分かりやすい。
一回は紙として使われたもの。
それがリサイクルされて古紙パルプになる。
この説明は分かりやすいし
ああそうですかとなりやすい。
しかし。
バージンパルプ100%と再生紙の
境目を考えると意外とややこしい。
それはどういうことか?
ということで。
この記事では、バージン
パルプと再生紙の違いについて
管理人が調べたことを
お伝えしたいと思います。
バージンパルプ100%は本当にパルプだけなのか
バージンパルプ100%と言われても
本当にパルプだけなのか?
ときどきこれを疑問に思う人がいます。
たとえば。
紙の場合、必ずサイズを揃えるために
スリットやカットをするんです。
当然そのときには不要なものとして、
損紙とか断裁くずとか呼びますが、
そういうものが出くるんですが
それらはどうなっているのか?
実は紙の場合は一定の割合で
出てくる損紙を原料に戻します。
通常の木材由来のパルプに
配合して使用するわけです。
損紙自体は水に入れてかき混ぜれば
パルプに戻ってくれるわけですから。
現実にはそういう処理をしないと
製造ロスが多くて大変なことになる。
もしも燃やすとなると焼却設備も
増強しないと回らなくなる。
ここでですね。
気がつく人がいるわけですよ。
その損紙、一回紙になってるんだから
古紙扱いにしないといけないんじゃ?
とかですね。
この判断、実は結構曖昧だったりします。
古紙処理設備で処理したものだけ
古紙として認めるのかとかですね。
もしも、こんな製造直後に出てくる
損紙まで古紙にカウントしたら
なんでも再生紙になって
しまうわけじゃないですか。
一般的にはバージンパルプ100%の紙でも
再生紙です、と言えてしまうわけですよ。
実際、一時期再生紙ブームがあったとき
それでもいい、というユーザーもいました。
さすがに今はそんな無茶はしてないですが
ごまかすと言うなら出来るんですよね。
バージンパルプ100%と同じ品質の
再生紙です、とか言えてしまう。
これは良くないわけです。
でもこのあたりは製紙会社の
都合で言い逃れが出来るんです。
実はその境界線は曖昧だということ。
そんなに明確に線引して
決めることは出来ないし
それを決めて見たところで
あまり意味はないと思います。
管理人の本音ですね。
再生紙は古紙が入っていればいい
今度は再生紙。
バージンパルプ100%の場合は
古紙は使っていないんです。
もうちょっと厳密に言うと古紙処理設備で
処理した古紙は使っていないということ。
逆に再生紙は古紙が1%でも
配合されていたら再生紙。
さすがに1%で再生紙ですとは
言わないのかも知れません。
しかし一応はそれでも通るわけです。
実際、上質コート紙に古紙を配合するとき、
管理人がいた頃は5%でも厳しかった。
そんな数%の古紙配合でも
再生コート紙で販売してました。
今はコンプライアンスが厳しくなったし
古紙の技術も上がっているでしょうけど。
コート紙の場合は古紙を配合すると
塗工時に欠陥が多発するんですよね。
スクラッチとかストリークと
呼んでましたけど異物があると
そこを起点に筋が出来てしまう
という問題がありました。
古紙が5%も入っているとその欠陥が
結構な割合で発生してしまう。
なかなか厄介でしたね。
欠陥が発生したコート紙はB級品。
安値で叩き売られるわけです。
本来古紙など配合すべきでない
上質コート紙で古紙配合したら
欠陥が増えてB級品になって
コストが掛かるのに安値になる。
正直踏んだり蹴ったりでしたね~
当時は、ですが。
まあ、そもそも古紙を配合して
製造している紙は問題ないんです。
新聞紙とか、ダンボールとかですね。
こういうのは安い再生紙をメインで
使うことで成り立っている紙ですから。
しかし、上質紙や上質コート紙のような
白い紙はそもそも古紙を入れない紙。
今でこそ古紙入り品が増えてますが
かなり無理をしているのは確か。
色調がグレーになると言うのもあるし
黒点などの欠陥が出やすいのもある。
管理人が困ったのは古紙を漂白するのに
バージンパルプ並のコストかかったこと。
コート紙の売値が一般品も再生紙も
同じだと利益が出なくなるじゃないか。
再生紙がブームのときはいいですが
今のように当たり前になると困る。
無理をして生産する再生紙は
品質が悪くなるし生産もしんどい。
いいことないので本当はやめた
ほうがいいと思うんですよね。
その方が社会的にはメリットが大きいので。
バージンパルプと再生紙の違いは曖昧
ここまでバージンパルプ100%の紙と
再生紙の違いについてお話しました。
両方は全く違いようなんですが
境界は結構曖昧なんですね。
極端な話、工場で発生した損紙を
大量に使用してもバージンパルプ。
印刷会社に出荷した製品でも
印刷されなかった部分だけ集めて
同じ品種の紙に使えばバージン
パルプとでも再生紙とでも言える。
または1%でも古紙が入っていれば再生紙。
常識的にはそんなことしませんが
出来ないわけではないということ。
このあたり、外部からのチェックでは
絶対に確認することは出来ません。
内部の製造条件になりますからね。
もしも何らかの不正があったとしても
内部告発以外分かる方法はありません。
ラベルの表示はモラルへの信用が
あるから意味があるということ。
ユーザー側もグレーゾーンがあると
わかって使うべきだと思いますね。
管理人のまとめ
今回は、バージンパルプと再生紙の違い?
木材由来か古紙リサイクルかというお話。
バージンパルプは木材由来で
初めて紙になるパルプのこと。
再生紙は一度使われた古紙をパルプに
してそれを原料に製造した紙のこと。
一応はそういう違いになるんですが。
しかし、実際にはグレーゾーンがあって
バージンパルプ100%と言っても損紙を
配合して製造するのが普通だし
再生紙と言っても1%でも古紙を
配合していれば再生紙と
言うことも出来るわけで。
意外に境界部分は曖昧なんですね。
使う方はそのあたりはわかった上で
常識的な判断をすべきではないかなと。
そうそう。
製紙会社としては再生紙だからといって
品質が悪化してもいいとは考えてません。
いくらエコでも使えない紙を
作っては本末転倒ですから。
この記事がバージンパルプと再生紙の
違いの参考になればと思います。
エコという言葉に踊らされずに
コストと品質をよく見て下さいね!
(参考)
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