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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は、つるつるの紙の
名前はなにというお話。
管理人は元製紙会社社員で
特に印刷用紙が長かったです。
印刷用紙の場合、つるつるの紙の
名前は?と言われるとコート紙ですね。
コート紙となるとちょっと範囲が
広いんですが身近な紙です。
たとえば。
新聞をとっている人なら
毎日見ているチラシ。
これはほとんどがコート紙です。
それからカレンダーの紙。
中には上質紙のものもありますが
きれいな写真があるやつはコート紙。
ポスターや写真集もそうですね。
だいたいみんな表面が
つるつるして光沢があります。
ではこのコート紙とはどういう紙なのか?
ということで。
この記事では、つるつるの紙の
名前はなにということについて
管理人の調べたことを
お伝えしたいと思います。
つるつるの紙の名前はコート紙。非常に一般的な紙です
先程からお話しているように
つるつるの紙はコート紙です。
特に印刷用紙の場合はそうですね。
それで、このコート紙の特徴なんですが。
第一には紙に塗料を塗工している。
当たり前のことなんですが。
でももしかすると、紙に塗料を
塗るのかと驚くかも知れません。
管理人も実は製紙会社に入るまで紙に
塗料を塗るなんて考えてませんでした。
塗料と言えばペンキのイメージでしたから
それをわざわざ紙に塗るのかと。
紙にそんなもの塗ってどうするんだと。
こんな感じで考えてましたね。
ところが、そんな簡単なものじゃない。
まあ、やってみたから分かる話ですが。
それで、何を塗っているのかなんですが。
あのつるつるした紙にするために
いったい何を塗っているのか?
実は紙に塗っているのはクレーと炭カル
という顔料が主成分になります。
クレー、炭カルと言われても
よくわからないかも知れません。
簡単に言うと泥です。
クレーも炭カルも基本的に
粘土みたいなものですね。
クレーは国内にはほとんど無いので
というか採掘で採算が合わない。
だからほとんど海外から輸入しています。
そのクレーにも色んな種類があって
色の白いものから黄色味がかったもの、
粒子径の大きなものから小さなもの
岩のようにゴツゴツしているもの、
扁平な板状になったものなど
色調、形状、粒子径など様々です。
もちろんそれに合わせて
価格も様々あります。
だいたいは色が白くて粒子径が
小さいものの値段が高かったですね。
もう一つの顔料の主成分は炭カル。
炭酸カルシウムのことです。
炭カル自体は色んな所で使われていて
医薬品だったり歯磨き粉だったりします。
とりあえず色が白いので使いやすい。
それから、日本国内で採掘できます。
炭酸カルシウムはもともと石灰石ですから。
これを掘ってきて、細かく砕いて使う。
もしくは、一旦焼いてから結晶を合成する。
石灰石を粉砕したものを
重質炭酸カルシウム、
合成で製造いたものを軽質
炭酸カルシウムと呼んでいました。
重質炭酸カルシウムも2種類あって
乾式粉砕しただけのもの、
湿式粉砕して粒子径をある程度
コントロールしたものがありました。
軽質炭酸カルシウムは合成で作るので
合成方法で様々な物がありましたね~
粒子の形状は丸いもの、
紡錘状、針状など色々です。
管理人がいた頃は丸いのが
多かったと思います。
それから粒子径も様々ありました。
結晶を合成するのである程度
粒子径も自由に選べるんですね。
主成分の顔料はこんな感じ。
それから重要なのがバインダー。
バインダーというのは接着剤のこと。
紙と顔料をくっつける役割です。
この薬品はだいたいSBRラテックスと
呼ばれるエマルジョンタイプのもの。
アクリル系のものとか中にはPVAを
使うこともありますがこれが多かった。
SBRというのはスチレンブタジエンゴム。
これがメインで使われていたのは
多分、安いんでしょね。
実際にはスチレン、ブタジエン、MMA、
アクリロニトリルの共重合とかでしたが。
まあそれはともかく。
そういう顔料とバインダーを混ぜて
水溶液にするわけです。
正確には水分散体ですけど。
あと、よく分からない助剤を入れてました。
印刷適性向上剤とか、蛍光染料とか
消泡剤とかレベリング剤とか。
黄色みを消すためにブルーとバイオレットの
着色顔料も入れてた気がします。
こんなものをいい感じで混ぜて
それを紙に塗るわけですね。
それで、これただ塗っただけではダメで、
塗料を塗ったあとにカレンダーを掛けます。
カレンダーというのは金属ロールと
コットンロールの間に紙を通して
押しつぶすと言うか、金属鏡面を
こすりつけると言うかそんな感じで
紙の表面をつるつるにする
工程のことをいいます。
管理人がいた当時はスーパー
カレンダーと呼ばれていました。
機械の仕組みは色々あるようでしたね。
金属ロールとコットンロールの
組み合わせが一番多かったんですが
金属ロールとプラスチックロールとか
金属を油で温めてホットロールにするとか、
蒸気を当てて水分をつけてから
圧力をかけるとかやってましたね~
必要とされる紙の品質に合わせて
色んなことをやっていたと思います。
あのつるつるのチラシの紙も
そんな感じで作ってました。
無料で配るチラシですから
とにかく安いものを使いたい。
それに応えるようにとにかく安く作る。
それでもコート紙で紙の上に塗料を塗れば
何もしてない上質紙より印刷品質はいい。
そういうことで開発をしていました。
ちなみに。
紙のつるつる度合いは平滑度と
光沢度で表しているんですが
塗料を塗ってカレンダーをかけると
光沢度が上がるんですよね。
特に顔料に粒子径の小さな物を使うと
白紙光沢が上がりやすかった。
それだけ表面のキメが細かくなるから
光が反射しやすくなるんでしょう。
だいたい、平均粒子径が2μ以下でしたか。
そういう小さな粒子を使うことで
つるつるの紙になるようにしてました。
あとはバインダーですね。
これも紙の品質には大きく関わってきて
光沢が高くなるものを選んでましたね~
まあ、本来必要とされる性能は強力な接着力。
なのでそのバランスは難しかったでしょうけど。
顔料にしても粒子径の小さなものばかりを
使えばいいのかと言うとそうでもなくて
白紙だけではなくて印刷後の光沢とかも
必要でこれもバランスが難しかったですね。
しかも。
こういう品質的なことも必要ですが
同じように操業性も問題になる。
塗工工程はコーターと呼ばれる
機械でやるわけですが
この機械が最速で回って生産して
もらわないとコストが安くならない。
なにしろ、紙パルプ産業は装置産業。
装置が最大限動かないと
固定費が稼げないわけです。
その高速で塗工するというとき、
塗料の性質が重要な問題になる。
マシンが汚れにくいとか紙に塗工して
欠陥が出にくいとかそういうのも重要。
ある意味、紙の品質より重要。
そういう塗りやすい塗料の
開発も常にやっていましたね~
紙に塗料を塗るなんてと思ってましたが
予想以上にやることが多くありました。
管理人も関わるまで知らないことばかり。
奥が深いものだと思いますね。
つるつるした紙はコート紙以外もある
ここまではつるつるした紙ということで
コート紙についてお話しました。
しかし、つるつるした紙というのは
印刷用のコート紙以外にもあります。
たとえば、剥離紙。
これはシールの台紙に使われる
捨てる方の紙ですね。
あれは表面にシリコーンという薬品を
塗っているのでつるつるしています。
クッキングシートやワックスペーパーも
表面がつるつるしていますね。
他には薄葉紙の片艶晒クラフト紙。
これは片面だけがつるつるしています。
片艶晒クラフト紙はヤンキーマシンという
機械で製造されるので片面だけつるつるです。
他にもあるんでしょうが
今思いつくのはこんなところ。
ただ、身近で目にすることが多いのは
コート紙ということになるでしょうね。
管理人のまとめ
今回は、つるつるの紙の
名前はなにというお話でした。
結論から言うと一般的にはコート紙。
身近だとチラシ、カレンダー、ポスター
写真集、なんかが多いと思います。
今回はこのコート紙の製造についても
少しお話させていただきました。
紙に泥というか粘土の成分を塗工して
スーパーカレンダーでつるつるにする。
今では当たり前になっていますが紙に塗料を
塗るなんてよく考えたものだと思います。
紙に塗料を塗っているということを
知らない人も多いでしょうけど。
この記事が、つるつるの紙の名前について
考える参考になればと思います。
チラシの紙でも色々工夫されて
いることを分かってい下さいね!