管理人の紙コンサルこと、
べぎやすです。
このカテゴリでは
紙のリサイクルについてお伝えします。
紙はリサイクルの優等生。
2015年の古紙回収率は
何と81.3%だそうです。
もうほとんど限界ですね。
ところが森林破壊とか
地球温暖化の話になると
製紙会社が木を切るから
紙が悪いということになります。
確かに以前はそうでしたが、
今は原料確保のために
各社世界中で植林をしていますから
森林破壊の原因みたいに言われるのは
ちょっと違うんだけどどうなの?
なんて思います。
逆にリサイクルなんてしてはいけない、
コストが掛かるばかりでメリットがない
という話をする人もいますが、
それもおかしい。
だいたい利益を追求する企業が
メリットのないリサイクルなどやりません。
このカテゴリではそのような
紙のリサイクルについて
元製紙会社社員の目から見た
本音をお伝えしたいと思います。
【紙はリサイクルされて何になるのか】
紙がリサイクルされたら紙になる、
それはそうなんですが、
紙にも色んな種類があるわけで、
意外に複雑なことになっています。
まず一番わかりやすいのは新聞紙。
これはほとんど新聞紙に戻ります。
新聞古紙の場合、
中身は新聞紙とチラシですから
古紙の品質が比較的安定していて
使いやすいんですね。
それと新聞紙は
製品の白色度が低いので
白色度の低い古紙を配合しやすい
というのもあります。
紙に限りませんが、白いものの場合、
黒いものを白くするのは大変ですが、
白いものを黒くするのは簡単です。
だから新聞紙には新聞古紙。
しかもリサイクルのルートが
確立されていて
数量も大量に集まりますから
設備的なスケールメリットもある。
大量に安定した原料が集まり、
大量に安定して製品も売れる。
しかも市況商品ではない。
ここも大事なところで、
新聞紙が市況商品で
毎日値段が変わるようなら
このリサイクルは成り立たない。
新聞購読料というのは、
新聞社が決めますが、
紙の値段も新聞社が決めて、
急激な変動は起こらない。
新聞社にとっては
新聞紙を買い叩くよりも
安定供給を保証させるほうが
余程重要なんですね。
そのため製紙会社としては
新聞古紙原料の安定供給は重要で
新聞古紙の相場は
他の古紙に比べれば高めだし、
大崩れしたら自分たちが困るので
無茶苦茶はしない。
そうなれば古紙回収業者も
安定したリサイクルが出来る。
こんな感じで循環しているので
新聞紙はリサイクルの優等生なんですね。
もうちょっと本音を話させて下さい。
実は新聞紙の場合、
安定供給が重要ですから
製紙会社に対して
基本的に値下げ要求はありません。
値下げ要求をすることで
製紙会社が無理なコストダウンをして
製品品質が悪化したら
元も子もないからです。
もう一つの理由は、
新聞社が製紙会社に値下げ要求をしたら
新聞購読料の値上げをするときに
顧客に説明できないと言うのもあります。
購読料は上げるが紙代は下げる、
こんな話になると
自分たちだけ儲けるのかと
反発を受けるわけです。
だから新聞紙の値段は下がらない。
紙のリサイクルについては
製紙会社の経営が安定していないと
上手く行かないわけですが、
新聞紙の価格安定というのが
非常に重要な役割を
果たしているわけです。
最近はスマホの出現で
新聞紙も減っていると思いますが、
今でもこの構造は変わってませんから
やっぱり新聞紙が製紙会社の屋台骨。
紙のリサイクルには
とても重要な存在なのです。
次に大きな分野は板紙。
段ボールですね。
これもほとんど古紙です。
段ボールの場合は、
多層構造になっていますから、
目に見える表層以外は
色調管理の必要はありません。
染料などを添加して
色調管理するのは表層部分だけ。
だから古紙の種類はなんでも良い。
ここは新聞用紙と大きく違うところです。
通常、段ボールに使われる古紙は
段ボール古紙ですが
紙にならないものは別として
選別されていなくても構わない。
製紙会社では紙をただ溶解するだけで、
脱墨も漂白もしません。
原料の古紙も選別しませんから
とにかく安いものを求める。
しかも段ボールは市況商品なので
原料価格には敏感です。
それであんまり価格が安くなると
中国に輸出されたりします。
国内をトラックで運ぶより
船に乗せて外国に売ったほうがマシ
というのは段ボール用の古紙には
よくあることなんですね。
それ以外の古紙は
分別ができていればもとの紙、
そうでなければ段ボールになる、
という感じですね。
【再生紙はコストが高いのか?】
ここまで古紙についてお話してきましたが
再生紙はコストが高いのか?
という問題について
管理人の見解を述べたいと思います。
結論から言うとケースバイケース。
新聞や段ボールは
コストメリットがあるから古紙を使う。
それは中質紙や更紙も同じことです。
しかし上質紙や上質系コート紙の場合、
再生紙にするとコストが上がる。
これは白色度が高い紙に
古紙を配合しようとするのが問題。
そもそも印刷用紙に使う古紙は
新聞古紙が多いですから白色度は低い。
白色度の高い製品に配合するには
漂白を強化する必要がある。
白色度を上げるために漂白を強化すると
薬品費が高くなり収率が落ちる。
新聞紙に対して新聞古紙を配合するなら
コストメリットはあるが、
新聞古紙の白色度を無理やり上げて
上質系の紙に配合してもメリットがない。
だから再生紙は値段が高い、
ということになります。
では無理して新聞古紙を漂白せずに
白い古紙を集めればいいじゃないか、
となるわけですが
これがなかなかうまくいかない。
白い古紙を集めたければ
オフィスのコピー用紙があるんですが、
新聞紙のようには
リサイクル出来ていないようです。
管理人は上手く行かない理由は
よく分かりませんが、
大した量が集まらないのではないか
という気がします。
リサイクルのルートも
確立しにくいのでしょう。
新聞の場合は
各自治体などが取り組みますし、
段ボール古紙はスーパーなどから
大量に出てきますが、
オフィスのコピー用紙は
そういう組織がない。
明光商会がリサイクルをしていますが、
シュレッダー後の紙は
トイレットペーパーのような
使い捨てる紙になっているようです。
高白色の古紙パルプが安ければ
安い再生紙が作れるはずなんですが、
現状ではそういう環境が
整っていないということなんでしょう。
それよりもっと問題なのは
白い紙に古紙を配合しているのは
環境に配慮しているという
企業イメージのため。
自分がユーザーの立場なら
白い紙の古紙配合品など求めないし、
製紙メーカーの立場でも
コストが上がって品質が下がる、
そんなことには納得できないと
思うわけで。
今後、環境問題が
改善されることはないでしょうから、
高い再生紙はこれからも
作られると思います。
しかし元製紙会社社員としては、
ユーザーを欺いているような気がして
値段の高い再生紙には
やっぱり納得いかない。
ただ古紙処理技術がもっと発達して
安くて高白色の古紙が出来るようになれば
本来の意味でのリーゾナブルな
再生紙が出来るかも知れません。
【管理人のまとめ】
今回は紙のリサイクルのお話でした。
紙はリサイクルの優等生。
古紙回収率は2015年で81.3%と
すでに限界まで回収されています。
そしてこのリサイクル、
支えているのは新聞紙で、
製紙会社も新聞紙のお陰で
成り立っているようなところがある。
そんな説明をしました。
また再生紙の値段が高いのは
白色度の問題で、
白い紙に配合するために
無理に漂白した古紙を使うから
値段が高くなるのであって、
白色度が低い紙はそうではない。
そういうこともお伝えしました。
今後も紙はリサイクルの優等生で
あり続けるのでしょう。
管理人としては紙のリサイクルが
今後も環境を守る役に立って欲しい。
そんなふうに思っています。