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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は、紙のフリーネスとは?叩解度は
品質にどんな影響を与えるのかというお話。
管理人、フリーネスなんて言葉
会社に入るまで知りませんでした。
そりゃそうですよね、専門用語ですから。
多分、製紙会社でも営業員は
分かってないかも知れませんね~
ましてやそのフリーネスが品質や
操業性にどう関わるかなんて。
ということで。
この記事では、紙のフリーネスについて
管理人の調べたことをお伝えします。
紙のフリーネスは叩解度。ろ水度ともいいます
まずはフリーネスとは?
フリーネスは叩解度とかろ水度と言われます。
実は木材チップからパルプを製造しても
そのままではいい紙になりません。
パルプ繊維の表面を毛羽立たせて
絡み合いやすくする必要があります。
理想的には繊維はなるべく長く細く
その表面は毛羽立っているのがいい。
そうすれば強くてしなやかな紙になる。
そのために行われるのが叩解工程。
昔は実際に叩いてほぐしていたようです。
だから叩解。
今はそれでは効率が悪いので
リファイナーという機械を使います。
具体的には溝を切った2枚の円盤を
こすり合わせるように回転させる。
その間をパルプスラリーが通っていく。
溝のところでパルプのが擦れて
表面が毛羽立つと言う感じですね。
こういうことを機械的にやるので
繊維が切れて短くもなります。
こういう操作を適度に実施するというわけ。
そのときに、どの程度叩解したのか
という指標となるのがフリーネス。
ろ水度と呼ばれています。
なぜろ水度と呼ばれるかというと
それは試験方法を見れば分かる。
簡単に言うと金網のついた筒の中に
パルプスラリーを入れて一気に水を抜く。
そこから出てくる水量がフリーネス。
ということになります。
正確なことはこちらの
JIS規格のサイトをどうぞ。
かなり分かりにくいですけど。
それから実際にどんな器具かというのは
試験機メーカーのサイトなどでどうぞ。
これは株式会社安田精機製作所のもの。
それで。
フリーネスが高いとか低いとか
それはなにを意味するかですが。
まずフリーネスが高いというのは
パルプを叩解していないということ。
フリーネステスターの金網上で
パルプシートが出来るわけですが
そのシートがスカスカだと
水がたくさん落ちますよね?
叩解しないということは毛羽立ちが
少ないということになるわけですが
そういうパルプからできたシートは
絡まりが少なくてスカスカなんです。
そういうことでフリーネスが高くなる。
逆にフリーネスが低い場合は
それなりに叩解しているということ。
それなりに叩解していてパルプが
よく絡むのでシートが詰まっている。
だから水があまり落ちなくて
フリーネスが低いわけです。
なお。
このフリーネス基本的に化学パルプで
そこそこ叩解している場合に適応されます。
化学パルプというのは今はほとんど
クラフトパルプになると思いますが、
これはほとんど叩解しなければ
フリーネスは700ml程度になり、
叩解すると350ml-450ml
程度になると思います。
ただ、フリーネスが極端に低くなると
叩解度の指標として無意味になる。
というのは、ものすごく叩解していても
それほどフリーネスの数値が変わらい。
値が小さすぎて差が分からない
ということになるわけですね。
それから。
機械パルプや古紙パルプでもフリーネスは
測定しますが化学パルプより値は小さくなる。
機械パルプの場合はリグニンが残っているのと
繊維が短くなりやすいからだと思います。
また、古紙パルプは元々紙なので
すでに叩解されているわけです。
なので、フリーネスは小さくなりやすい。
といことですね~
紙のフリーネスが操業性と品質に与える影響
ここまでフリーネスについてお話しました。
ではフリーネスは操業性や品質に
どんな影響を与えるでしょうか?
まず操業性では抄速。
抄速というのはマシンの速度ですね。
フリーネスはろ水度ですから
高いほうが脱水が速いわけです。
つまり、乾燥工程が楽になる。
そうすると乾燥負荷が減って
抄速が上がるというわけです。
生産性が上がるんですおね~
じゃあ叩解なんてしなければいい
と思うんですがそうはいかない。
叩解しなければ繊維の絡みが
弱くなってゴワゴワの紙になる。
それから地合ですね。
地合はなかなか説明が難しいですが
紙の均一性といえばいいでしょうか。
窓ガラスの日差しに紙を透かして
ボコボコしてたら地合が悪い。
これがなめらかなら地合が良い。
そう言う感じですが、
かなり感覚的なものです。
管理人が居た頃は実際感覚的な
官能試験しありませんでした。
今は画像解析技術が進んで
いるので地合計もあるようですが。
いずれにしてもフリーネスは
地合に大きな影響があります。
フリーネスが高すぎても低すぎても
いい地合にはならないようです。
マシンの特性や紙の種類とも
関係するのでややこしいんですが。
ただ、こういう数値をどれくらいに
すればいいかが分かっているか
というのがオペレーターの腕がいいか
どうかにということになるんですよね~
それからもう一つ。
フリーネスが低くなると
紙の密度は高くなります。
なので紙厚は出にくくなる。
そして紙厚が低いと不透明度も低くなる。
通常の印刷用紙の場合は
不透明度は高いほうがいい。
しかし、グラシン紙なんかだと
半透明にするためフリーネスは低い。
そう言うのがありますね~
管理人のまとめ
今回は、紙のフリーネスのお話でした。
紙のフリーネスというのはパルプを
叩いてほぐした度合いになります。
そうやってパルプ繊維の表面を
毛羽立たせて絡みやすくする。
フィブリル化と言われますけど。
数値としてはろ水度ということで
パルプシートからどれだけ水が
落ちたかを測定してその時の
水の量をフリーネストいうんですね。
言葉だけでは分からないでしょうけど。
それでこのフリーネスは操業性や品質に
大きな影響を及ぼすということでした。
脱水性に影響するので抄速や
地合には相当影響します。
それから、紙厚、不透明度にも。
ただ、フリーネスの数値をどうするかは
マシンによっても品種によっても違うので
結局はこのあたりがいいのかなという
数値を探して妥協して決める感じですね。
切らないほうがいいとか切ればいいとか
そう言うものではありませんので。
逆に言うとこういう数値をうまく調整している
工場が腕がいい工場なのでしょう。
この記事が、紙のフリーネスの
参考になればと思います。
紙も色々細かい調整をしてるんです!
(参考)
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