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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回は紙の品質を管理する項目とは?
基本的な物性と独自の物があるというお話。
紙の品質管理について。
これがそんなに簡単じゃない。
製造、ということになれば
どんなものでもそうですが。
それで。
管理人は基本的に技術系で
紙の品質設計担当でした。
といってもそんなに大した
ことはしてませんでしたけどね。
それでも基本的な考えはあるので
それをお話しさせてもらおうかなと。
ということで。
この記事では、紙の品質を
管理する項目について
管理人が調べたことを
お伝えしたいと思います。
紙の品質管理項目。印刷用紙なら基本は6つ
では紙の品質管理項目を。
管理人はいくつかの紙の担当を
やりましたが基本は印刷用紙。
なので、とりあえず印刷用紙の
品質管理についてお話します。
管理人が常に考えていた項目は6つ。
米坪、厚み、平滑度、白色度、不透明度、色調
これに加えてコート紙なら白紙光沢とか
薄い紙なら紙力強度を考えるとか。
こういう品質管理項目を満足させるために
どのパラメータを変えるのかですね。
そういうことを考えるわけです。
こういうのを考えるときに
全く新しいものなのか
既存品を少し変更することで
目新しく見せるのかがあります。
管理人が担当していたのは
既存品をちょっと変更でした。
これが簡単そうでややこしい。
管理人が困ったのは目的の
品質にする方法が少ない場合。
どういうことかと言うと。
たとえば上質紙を白くしてくれとか。
かなり無理難題なんですよね~
なぜか。
上質紙って基本のパルプ配合は
全部、晒クラフトパルプなんですね。
今は古紙入り品もありますが
基本は晒クラフトパルプ。
業界的にはBKPと呼ばれます。
内訳としては針葉樹のNBKP
広葉樹のLBKPがあるんですが。
いずれにしても白色度の高いパルプ。
あの上質紙の白い色になるんですから。
問題はすでに白いのに
もっと白くというところ。
はっきり言って一番白いパルプを
使うのですから無理なんですよね。
そこをなんとか、と言われたら
たとえば蛍光染料を使うとか。
紫系の染料を使ってなんとなく
白い感じがするようにごまかすとか。
正直あまり気が進まない。
たとえば蛍光染料は確かに
光があると白くなるんです。
しかし、紫外線があまりないところだと
かえってどす黒く見えたりもする。
会議室で紙を見ていて窓際なら白いのに
入口付近で見るとそうでもないとか。
管理人なんかは、見る場所で色が
そんなに違っていいの?って思う。
品質設計といってもバランスを
崩して無理やり対応って
どうにも腑に落ちないというのが
正直なところでしたね~
既存の紙がそうなっているのは
落ち着くところに落ち着いているから。
そのバランスを打ち破るにはなにか
新技術が出てこないと難しい。
なにか特徴を出そうと思えば
なにか別の部分が犠牲になる。
分かってくれない人が多かったですけど。
紙の品質管理項目の詳細
せっかくなので紙の品質管理項目を
いくつかお話してみたいと思います。
米坪(g/㎡)
これは本当の基本です。
単位はg/㎡。
1㎡あたり何gになるかということ。
管理人の品質設計の感覚で言うと
米坪へのアプローチは2つあります。
一つは、たとえば米坪64g/㎡の
上質紙なら紙厚、平滑はこれくらい、
という感じのアプローチ。
もう一つは紙厚と平滑が決まっているので
そのためには米坪をいくらにする
という感じのアプローチ。
実際には両方を行ったり来たり
しながら妥協点を見つける。
そういう感じでしたね。
管理人の経験でいうと米坪って紙の基本
ですけど厳守という品種は少なかった。
郵送するカタログや通販のチラシは
重さにうるさかったですけど、
それ以外の紙で米坪をうるさく
言われることはなかったですね。
郵便の紙はちょっとした重さの
違いで送料が変わるからうるさい。
でもそれ以外の紙はあまり言わない。
商売としては重さで取引するので
製紙会社側からすると表示米坪より
極端に高い実米坪の紙はコスト高になるし
表示米坪を下回るのは商道徳上気になる。
実際には表示米坪64g/㎡なら実米坪
64-65g/㎡くらいで製造してました。
いずれにしても。
米坪が決まらないと紙の製造は始まらない。
それくらい重要な管理項目ということです。
紙厚(μm)
これも基本項目です。
紙の厚さをどれくらいにするのか。
管理人が一番紙厚管理が面倒だ
と思ったのは書籍ですね。
分かると思いますけど。
過去記事で書いたことがありますが
漫画の本は厚いほどよく売れる。
ページ数が同じなら紙厚は厚いほうがいい。
実際、コミックなんて厚いほうが
得した気分になるんですよね。
電子書籍が増えてこの感覚は
もう薄らいだかも知れませんが。
それで、この紙厚なかなかクセモノ。
基本的には米坪と平滑度で
決まるんですが同じ米坪で
紙厚だけ上げてくれとか
言われるわけですよ。
もちろん平滑度は変えないでねと。
同じ意味で紙厚は変えずに
米坪だけ下げてくれとか。
こういうのって基本的には無理。
なんですが、色がグレーとか
茶色っぽいかみなら可能性はある。
ひとつは嵩がでやすい
機械パルプを配合する。
白色度が下がったり色調が変わったり
そのあたりは目をつぶってもらう。
コート紙や微塗工紙なら
白色度の高い塗料を使う。
艶のある光沢度の高い紙なら
光沢が出やすい塗料にする。
一応嵩高剤という薬品もありました。
それで、色々やってみたところ
今まで通りの紙で表示米坪を
下げたほうが安いとか
そういうのありましたね。
同じ紙厚で米坪だけ下げたら
実質は値下げしただけのこと。
下手な対応ならしないほうが
マシというのが多かった。
管理人の勉強にはなりましたが。
平滑度(秒)
これは指定されることはない項目。
しかし、手触りとか印刷上がりに
とても影響するんですよね。
高ければいいというものでもないし。
この項目の難しいのは紙厚と
反対方向になるというところ。
同じ米坪でも紙厚を厚くするなら
平滑は下げたほうがいい。
しかしそうすると表面がザラザラになる。
これも妥協点が難しい項目です。
白色度、不透明度、色調
白色度、不透明度、色調は
紙の見た目を決めるもの。
これが難しいんですよね~
紙なんて白しかないと思いますが
実はその白も微妙に色が違う。
青味、赤味、黄色味、など
よく見たら色々あるんです。
それから。
白色度と不透明度は反対の関係。
白い紙ほど透けやすい。
紙が黒いと不透明度はごまかしやすい。
紙が厚ければ気にならないのですが
薄い紙だと随分気にしてましたね~
典型的なのは新聞紙。
紙は薄くしないといけないが
裏抜けしてはいけない。
だからあの色、というのもあるんですね。
それと面倒なのは情報誌。
就職情報とかですね。
今ならネットが多いでしょうけど
かつては薄っぺらい本でした。
その紙が新聞紙と同じように
薄くて裏抜けしてはいけない。
不透明度対策として酸化チタンを添加
したりしてましたがこれがまた面倒。
辞書の紙のようなコストは掛けられない、
だけど営業製作的にやるしかない。
そういうこともありました。
今思えばいじめみたいなものでしたね~
それから色調なんですが。
管理人のいた会社はモノマネが多かった。
たとえば出版社が複数社購買をする。
そのときに、先行している他社が
すでに紙のスペックを決めている。
だけど、1社だけというわけには
行かないからこちらに話が来る。
そういうときに、同じ紙を
作らないといけないわけです。
同じ本なのに見た目が違うとか
それはまずい、となりますので。
そこで出てくるのが色合わせ。
見た目の色調を他社品に
合わせて下さいということ。
こんなの合うわけないんですよね~
だけどなんとか数値だけでも同じ
ようにしようと頑張るわけです。
実際には混ぜて使わない限り
分かるものではないんですけど。
しかし、神経使ってましたね。
そうそう。
同じ紙なのに色が違うという
クレームもそこそこありました。
でもこれはこちらが悪いのではなく
ユーザーの勘違いも多かった。
色調は見る人によっても変わるし
見る場所や時間帯でも変わってくる。
意味がわからない人に説明するのが
大変な管理項目には違いありません。
紙の品質管理で独自のものは?
ここまでは紙の品質管理の基本。
実際にはこれ以外に品種によって
重要とされる管理項目があります。
独自のものになります。
たとえば。
身近な紙だったらダンボール。
これは当然強度が一番です。
先程お話した基本的な品質を
抑えた上で強度が重要です。
もしもライナーの強度が不足なら
米坪を上げてでも対応する。
包装用紙もそうですね。
強度不足はだめですから。
印刷用紙の中でも筆記用紙なら
ペンで書いてにじまないかとか。
にじむような紙ならNGです。
情報用紙ならプリンタ適性。
基本品質がOKでもプリンタで
詰まるようなら話にならない。
こんな感じでその紙の用途に合わせた
独自の品質管理項目があります。
これはその紙が高価だとか安価だとか
そういうこととは無関係です。
その紙として必要な管理項目は守る。
そういう事になってるんですね~
ただし。
そこまで厳しく守る必要の
ない品質もあります。
たとえばチラシの紙の色調とか。
全然外れていたらだめですが
若干外れる程度なら使ってもらう。
一枚一枚で見るから色の違いを
比較することはないですから。
もしも基準を外れても使える用途で
使ってもらうのも品質管理かなと。
管理というのはそういうものだと
管理人は考えていますので。
管理人のまとめ
今回は、紙の品質を管理する項目とは?
基本的な物性と独自の物があるというお話。
管理人の考えている紙の基本品質。
米坪、紙厚、平滑度、白色度、
不透明度、色調といったところ。
これが最低限でそれ以外に品種に
よって独自に必要な項目がある。
ということでした。
実のところ、どの項目も独立しているようで
あちらを立てればこちらが立たずという
バランスの上で成り立っているもので
その妥協点を探すのがなかなか難しい。
それがうまく行けばちょっと
嬉しかったりするんですけど。
この記事が紙の品質管理の
参考になればと思います。
紙の品質は微妙なバランスで
成立しているということですね!
(参考)
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