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管理人の紙コンサルこと、べぎやすです。
今回はケント紙のお話。
ケント紙って何でしょうか?
ケント紙とは製図用紙の一種で
表面が硬くて平滑なため
消しゴムをかけても毛羽立ちが少なく、
筆記特性に優れているため
製図やデザイン用に
よく使われている紙のことです。
名刺にもよく使われています。
基本的に晒クラフトパルプ100%。
表面に塗料などは
塗工されていない上品な白い紙です。
色調は青白いとか赤白いとか
紫系とかの色ではなくて、
ナチュラルなクリーム系の
白になっています。
昔の名刺で、紙がしっかりしていて
ちょっとクリームっぽい上品な
白さの名刺はケント紙が
多かったですね。
この記事ではケント紙が何かということで
由来や用途について解説したいと思います。
ケント紙の由来
ケント紙はもともとイギリスの
ケント(KENT)地方で
製造されていたのでこの名前に
なったんだそうです。
ところがこの「ケント紙」と言う名前、
なんと日本でしか通用しない名前だそうで、
英国では同じような紙質のものは
「ブリストル・ボード」と
呼ばれているんだとか。
国産品は1918年に日本海軍用の
海図用紙として三菱製紙で
製造されたものを始まりとする、
ということだそうです。
ちょっと面白いのは特種製紙
(現在は特種東海製紙)に
「クラーク・ケント」という銘柄の
ケント紙があるんですね。
だからスーパーマンが由来じゃないのかと
勘違いている人がいるとか。
スーパーマンの主人公クラーク・
「ケント」は新聞記者で「特種」を
追っているには違いありませんが
それは単なる洒落だそうです。
そもそもスーパーマンは
1938年登場なので、
国産品ケント紙の始まりである
1918年よりあとですから。
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ケント紙の用途 製図用紙や名刺に使われる理由
ケント紙の用途が何かというと
多くは製図用紙です。
少なくとも自分が大学生だった
昭和の終わり頃はそうでした。
今では信じられないかもしれませんが
当時パソコンで図面を描くCADは
まだなかったんですね。
図面を引くといったらT定規とか
ドラフターという道具を使って、
鉛筆でケント紙に図面を描くものと
相場は決まっていました。
鉛筆で書いて間違えたら消しゴムで消して
という作業をするわけですから、
製図用の紙は表面が滑らかで
消しゴムで消しても毛羽立たないような
強い表面強度を持つ紙で
なければ使えない。
その用途にマッチしたのが
ケント紙だったということです。
ただし最近は美術系など
特殊な用途は別として、
製図はみなパソコンに
置き換わってしまいました。
CADを使えば線の太さが
どうこうとか言われることもないし
書き損じた時の修正も簡単ですし、
データなら図面の管理も簡単ですから
ケント紙の出番は
減っているんだろうと思います。
漫画やイラストなんかでさえも紙に描くより
ペンタブを使って描く人が増えていますから
ケント紙が使われるシーンは
減っているんでしょう。
製図用紙以外では名刺用途も
多かったと思います。
自分の感覚では名刺はケント紙かなと。
紙質がしっかりしていて
折れ曲がるようなことはなくて、
下品なピカピカしたような
白ではなくて上品でナチュラルな白。
特徴はありませんが初対面の挨拶で
名刺交換する時には大手企業にとっては
最適だったと思います。
それに昔は凸版印刷が多かったので
印刷する時に表面強度が強くなければ
紙ムケしてしまって使えなかったんですね。
そういう意味でもケント紙は
都合が良かったんだろうと思います。
ただ、名刺についても最近は
事情が変わっているようです。
事情が大きく変わったのは
個人ベースで印刷できる
インクジェット印刷の登場でしょう。
ケント紙ではなくて
名刺用インクジェット用紙を使って
自分でカラー印刷をする。
そうすれば自分でスマホ撮影した写真を
自由に入れることも出来ますし、
急ぐ時にわざわざ名刺印刷を頼む必要も
ないし数枚からでも作ることが出来る。
実際自分の手元にある名刺を見たところ、
企業の名刺はケント紙が多いんですが
個人の名刺のほとんどはインクジェット用紙か
コート紙になってました。
こういうのも時代の流れというか
IT化の影響ということなんでしょう。
なお、ケント紙の印刷についてはこちらに
記事を書きましたので参考にして下さい。
(参考記事)
⇒ケント紙の印刷。インクジェットやレーザーでも使えるのか?
ケント紙の種類と厚さ
ケント紙の種類は様々です。
管理人が調べたところではこんな感じ。
銘柄
- KMKケント
- バロンケント
- BBケント
- ホワイトピーチケント
- クリームケント紙
- MSケント紙
また、色調、米坪、紙厚はたとえば
MSケント紙ならばこんな感じ。
色調
- ホワイト
- ナチュラル
- クリーム
米坪、厚さ、kg連量(四六判換算)の関係
- 104.7g/㎡(0.11mm)<90>
- 127.9g/㎡(0.15mm)<110>
- 157g/㎡(0.17mm)<135>
- 209.4g/㎡(0.24mm)<180>
- 261g/㎡(0.3mm)<224.5>
基本的に厚紙になります。
ケント紙の品質設計は何がどうなっているのか
ここからは元製紙会社社員としての
本音をお話させて下さい。
自分はケント紙の製造に
関わったことはないので、
ケント紙はの品質設計は
何がどのようになっているのかを
調べてみました。
まずケント紙は白い上質紙ですから
パルプ配合は晒クラフトパルプ
100%が基本です。
製図に使われるので
黒点などの夾雑物はNGです。
最近はエコということで白色度の高い
古紙パルプを使用した再生紙もありますが、
その場合は夾雑物は
我慢しないといけないですね。
酸性紙か中性紙かというと上質紙で
保存が必要な紙なので中性紙が多い。
そしてあの表面性をどうやって
出しているのかですが、
どうも「ゼラチン」を表面に
塗工することがあるようです。
実は非塗工紙と呼ばれる紙の表面というのは
何も塗っていないように見えますが、
印刷で表面強度が必要な紙には「表面サイズ」
と呼ばれる薬品を塗っています。
これは塗工紙の塗料とはまた別で、
印刷用紙の多くは「デンプン」を
表面強度対策やにじみ防止の
ために塗っています。
あの食べ物のデンプンです。
たとえばご飯粒を潰して糊に出来ますが、
そういうものを塗っているということです。
実際に自分が関わった時は
「コーンスターチ」つまり
トウモロコシ澱粉が
よく使われていました。
紙に塗ったデンプンが乾けばパリッとして
表面強度も強くなるんですね。
同じように表面強度を強くしたいケント紙には
ゼラチンが使われているのだろうと思います。
ゼラチンは古くから接着剤としても
使われていますから使いやすいのでしょう。
管理人のまとめ
ここまでケント紙とは何だろうか
ということで色々調べてみました。
ケント紙は高級紙で
販売価格が高いんですが、
厚手の上質紙で表面にゼラチンを
塗っているなら製造原価も
高いのだろうなと思います。
ケント紙自体は一般的にあまり
馴染みのない紙ではあるのですが、
最近は使用されるシーンが
さらに減っているので需要も
減っているようです。
しかし根強いファンもいるし
上品で良い紙なので
もっと増えてほしいものだと
思っています。
(参考)
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