管理人の紙コンサルこと、
べぎやすです。
このカテゴリのお話は
紙の種類についてです。
紙には多くの種類があります。
普段は気にしていないと思いますが
考えている以上に色々あります。
身の回りだけ考えても、
新聞紙、段ボール、コート紙、
コピー用紙、インクジェット用紙、
包装紙、ティッシュペーパー、
トイレットペーパー、キッチンペーパー、
カレンダー用紙、ノート用紙、
本屋に行けば書籍用紙、
漫画は更紙、雑誌は中質紙。
ちょっと考えただけでも
このくらいの紙があります。
こんな中でも似ているのに違う紙、
というのもあります。
このカテゴリでは紙の種類や
その違いについて
自分の体験など例を上げて
お伝えしたいと思います。
【紙の種類と違いについて】
紙の種類はたくさんありますが、
見た目が似たものも多いです。
逆に品質特性だけ挙げていくと
同じように思えても、
実物はまったく違うということも
多々あります。
たとえば白ボールと画用紙。
この2つなら白ボールは板紙、
画用紙は筆記用紙。
種類はまったく違いますし、
実物も比較すればはっきり違います。
ところが色が白くて紙厚が厚い、
というところは共通しています。
だからといってそこだけ聞いて、
水彩画を描く時に画用紙の代わりに
白ボールが使えませんか?
とか、
カード類を郵送する時の補強に
画用紙が使えませんか?
と質問されても困るわけです。
種類が違うということは
使用目的や用途が違うわけですから
大抵の場合同じようには使えないし、
無理して使うとトラブルを起こします。
もう少し他の例も挙げてみます。
たとえばコピー用紙とノート用紙。
どちらも上質系の紙です。
しかしコピー用紙は情報用紙、
ノート用紙は筆記用紙。
種類が違います。
見た目はほとんど同じですが
品質設計の考え方が違います。
コピー用紙はコピー機で使える紙なので、
万年筆で書くことなどは想定外。
サイズ度など筆記用紙に必要な品質は
考慮されていません。
一方ノート用紙はコピー機で使うことは
想定していません。
ですから、ノート用紙をコピーに使うと
不具合が発生する可能性が高い。
枚数が少なければいいでしょうが、
枚数が多くなると搬送不良が起こる。
コピー用紙の場合は
トナーで印刷するわけですから、
トナーが正しく紙に乗るように
紙の表面抵抗のコントロールが必要。
食塩を添加したりしてましたね。
それからコピー機内で
紙詰りを起こしてはいけませんから、
紙の繊維の配向性(繊維の並び方)を
コントロールする必要もある。
これは抄紙機でジェットワイヤー比、
と呼ばれる比率を調整していました。
実は抄紙工程は約1%のパルプ分散液を
ワイヤーと呼ばれる網の上に広げて
そこから色んな工程で水分を抜いて
シートにすること考えられるのですが、
ジェットワイヤー比というのは
その最初の工程で出てくる指標で、
パルプ分散液の噴射速度(ジェット)と
ワイヤーの速度の比率になります。
この比率をどうすれば
搬送性が良くなるのかという調整のため、
大量のロスを出しながら
実機テストをした記憶があります。
一方ノート用紙の方は
コピー機に合わせることはないですが、
ペン書きサイズ度をコントロールするため
サイズ剤添加量を制御するとか、
書き味の関係で平滑度を調整するとか、
そういうことをしてました。
また表面を滑らかにするとか、
しなやかさを出すとかで、
紙にはパルプ以外に
タルクや炭酸カルシウムといった
灰分を添加するんですが、
その添加量も調整してました。
見た目が似ていてもぜんぜん違う
という例をもう一つ。
それはティッシュペーパーと
トイレットペーパー。
どちらも薄くて白くてフワフワです。
しかし両者には
決定的な違いがある。
ティッシュペーパーは水に溶けないが、
トイレットペーパーは水に溶ける。
見た目は似てますが全然違います。
用途がまったく違いますから。
もしもティッシュペーパーを
トイレに流したらトイレは詰まります。
逆にトイレットペーパーで
濡れたところを拭くと溶けてイマイチ。
大きな違いは
ティッシュには湿潤紙力増強剤、
という塗れても水に溶けなくなる薬品が
添加されているということ。
一方のトイレットペーパーは
濡れたら溶けるように出来ています。
紙の種類はその用途によって
細かく分かれているということです。
【紙の種類 用途を明確に】
ここまでいくつかの例を挙げましたが、
紙の種類は用途によって違っています。
見た目が似ていても使えない
ということがよくあるんですよね。
よくある他の例だと
折込チラシをインクジェットで使うとか。
これ確かに見た目は似てるんですが、
チラシの紙でインクジェット印刷は無理。
商業印刷の分野でも
グラビア用紙をオフセット印刷するとか。
塗工量の多いアート紙を
乾燥機の付いた輪転機で印刷するとか。
そういうのも無理。
用途が違えば紙の種類は違う。
目的に合った紙を使わなければ
トラブルを起こすだけですから。
【管理人のまとめ】
今回は紙の種類についてでした。
紙には種類が多いですが、
それぞれ用途があってのこと。
見た目が似ていても
用途にあった種類でなければ使えない。
元製紙会社社員としては
ここは本当に注意して欲しい。
技術者は紙をその用途に
どうやって合わせるのか、
という部分で苦心しているわけで、
それ以外の使い方をされて
トラブルが発生したと言われても
保証はできませんということ。
いずれにしても。
紙は用途にあった種類を使って欲しい。
具体例もいくつか挙げましたが、
それらが参考になればと思います。
紙は正しく使って下さいね!