管理人の紙コンサルこと、
べぎやすです。
このカテゴリのお話は
インクジェット印刷について。
最近ではインクジェットプリンタは
かなり普及してますね。
管理人も一台持ってます。
ほとんどは年賀状印刷用で、
たまにコピーするくらいです。
主婦なんかで似たような人、
多いんじゃないでしょうか。
ところでこのインクジェット、
専用紙を使わないと駄目なんですね。
管理人は元製紙会社社員で
インクジェット用紙の開発に
関わった事がありますから
チラシの裏が使えないとか
コート紙タイプのハガキがだめとか
そういうのは良くわかります。
では何故それが駄目なのか?
このカテゴリでは、
インクジェットの印刷では
専用紙しか使えない理由について
お伝えしたいと思います。
【インクジェット印刷では
専用紙しか使えない理由】
コート紙タイプのチラシの裏とか
ハガキとかをインクジェットで印刷。
やってみると分かるんですが、
にじんで印刷できません。
画像を指でこすると
ひどいことになります。
管理人は元製紙会社社員で
インクジェット用紙の開発にも
関わったことがありますから
色んな紙で試しました。
印刷用紙だと
コート紙はもちろんのこと、
キャストコート紙とか、
マットコート紙とか、
上質紙、中質紙、更紙、微塗工紙
そういうのも試しました。
包装用紙でクラフト紙なんかも
試したことがあります。
ほとんどの紙は
インクがにじんで駄目でした。
クラフト紙などは
印刷できたような気がしたんですが
にじんでいないというだけで、
ちょっと水がかかると駄目でした。
コート紙は最悪で、
まったくインクを吸収しませんから
インクが浮いてしまって
プリンタが汚れてましたね。
インクジェット用紙の場合は
インクがにじんではいけませんし、
ある程度印刷後の
耐水性も要求されるので
やっぱり一般紙では無理なんだ、
と思ったものです。
これは当然のことで、
一般紙は通常オフセット印刷されるので
オフセット印刷用のインクに
対応しているわけですが、
オフセット印刷インクと
インクジェット印刷インクでは
その組成はまったく違うので
同じようにはいかないということ。
たとえば組成の比較をしてみると、
オフセット印刷用インクの組成は
顔料と樹脂で約50%。
インクジェットインクの組成は
水が80%、着色剤5%
こんな感じで組成が違う。
オフセット印刷用の場合は
インクに水は入っていませんから
その部分での吸水性は
あまり考えなくていい。
厳密にはオフセット印刷では
湿し水という水を使う工程があるので
ある程度の耐水性は必要なんですが
それは大したことはありません。
一方のインクジェットインクの方は
80%が水ですから
これを全部紙に
吸わせなければいけない。
塗料を塗らない普通紙タイプなら、
にじまないように定着剤を添加するとか
繊維を短くするとか、
内添灰分を増やすとか色々やってました。
マットコート紙タイプなら
吸水性の良いシリカゲルを主成分にする。
紙にくっつけるためのバインダーは
水と親和性の良いもの、
たとえばPVA(洗濯のりの成分)とか
アクリル樹脂(接着剤の成分)を使う。
助剤に耐水化剤とかインクの定着剤とか
そんなものを配合して塗工してましたね。
管理人は光沢紙の開発は
出来ませんでしたが、
一般的にはマット調インクジェットの上に
水が浸透する透明層として
コロイダルシリカという
薬品を塗工してました。
見た目が似ていても
吸水性と定着性が全く違うので
インクジェット印刷には専用紙を
使用しないと駄目なんですね。
【インクジェット印刷用紙とその他の紙】
ここからは元製紙会社社員の本音を
お話させて下さい。
ここまでインクジェット印刷には
専用紙が必要な理由をお話しました。
しかし多くの人は専用紙が必要な理由が
分からないと思います。
だから知っている人から見ると
使い方間違ってますよと言うことを
知らずにやってしまって
トラブルを起こす。
インクジェット印刷の場合だと
コート紙タイプのハガキの裏などは
インクを吸収しないので
印刷するとインクが紙面に浮いてしまう。
どうでもいい紙ならいいんですが、
なにか大切な書類なんかだと
汚れて使い物にならなくなる、
という危険があるわけです。
インクが乾きませんから触ると流れるし、
重ねると次の紙にインクが移ってしまう。
それが年賀状だったらもったいないし、
学校や役所への提出書類だったら大変。
そういうこともあるので
本当にインクジェット印刷には
インクジェット対応している専用紙を
使って欲しいと思います。
【管理人のまとめ】
今回お伝えしたのは
インクジェット印刷についてでした。
インクジェット印刷は紙を選びます。
他の印刷方式とはインクが全く違うから
というのがその理由です。
特に家庭で使われる
インクジェットプリンタの場合は
インクの組成は80%は水なので
吸水性が必要なんですね。
そして水に濡れても流れないように
インクの定着性も必要。
開発していたときも
この吸水性と定着性には苦労しました。
いずれにしてもそれくらい一般の紙とは
品質が違うということ。
このあたりを理解していただいて
インクジェットでのトラブル防止になれば
この記事を書いた
意味もあるのかなと思います。
インクジェット印刷では専用紙。
紙を正しく選んで使って下さいね!