管理人の紙コンサルこと、
べぎやすです。
このカテゴリでは本の紙質
についてお話したいと思います。
管理人が学生だった頃
スマホも何もなくて
電車の中では漫画を読んでいる人が
たくさんいました。
今では考えられない光景です。
ジャンプだったら北斗の拳、
サンデーだったらタッチ、
そういう漫画が人気で
漫画雑誌にも勢いがありました。
それで駅の売店で
ジャンプ買って電車で読むんですが
あの分厚い漫画を持ち歩いても
それほど重くないんですよね。
管理人は学生の頃はそのことに
大した疑問も持たなかったですが
製紙会社に入ってから本の重さは
紙厚では決まらないんだと知りました。
それにしても。
漫画はあんなに軽いのに
写真集なんかはとても重たい。
この違いは何なのか?
このカテゴリでは本の紙質について
管理人の体験を交えてお伝えします。
【本の紙質 漫画雑誌は何故軽い?】
先程もお話しましたが
漫画雑誌はとにかく軽い。
言い方を変えると
紙厚が厚くても米坪が低い。
ここで米坪というのは
1㎡あたりのグラム数のことです。
では漫画雑誌に使われている
紙の分類や品種は何なのか?
漫画雑誌の紙は印刷用紙の中では
下級印刷紙と呼ばれるもの。
品種は更紙になります。
印刷用紙の場合は
上級、中級、下級と分類されていて
その基準は白色度(紙の白さ)で
白いほど上級になります。
上級印刷紙は白色度75%以上、
中級印刷紙は白色度75%-55%
下級印刷紙は白色度55%程度
となっています。
下級印刷紙は白色度が
低くて値段も安い。
もちろんパルプも安いものを使います。
そのパルプは古紙パルプと機械パルプ。
古紙パルプは白色度を
上げるために漂白をしますが
白色度が低くてよければ
それほどコストはかからない。
更紙にはちょうどいいんですね。
それから機械パルプ。
機械パルプは木材を機械的に
すりつぶしてパルプにします。
この方法は歩留まり
(木材からパルプがとれる比率)が高い。
機械パルプも白色度を
上げるために漂白しますが
白色度がが低くてよければ
それほどコストはかからない。
結局白色度が低いということは
原料が安いということになります。
また機械パルプは木材成分のリグニンを
残すので嵩(かさ)が出やすい。
(リグニンというのは木材でセルロースの
接着剤的な働きをしている成分です。
紙の中ではセルロース同士の結合を
阻害する働きをするので嵩が出ます)
漫画雑誌に使われる紙は
安い機械パルプを使うので
結果的に嵩が出て軽くなる
ということになります。
ちなみに古紙パルプは
あまり嵩が出ません。
米坪が軽くて紙厚が厚い紙を
要求されたときの対応は
結局いかに機械パルプを
上手く使うかという問題になります。
もちろんマシン特性や表面の平滑性を
どうするかというのもありますが
パルプ配合の影響が大きい
ということなんですね。
それから余談ですが。
白色度が低いということは
不透明度が高いということになります。
不透明度というのは名前の通り
どれくらい不透明かということ。
不透明度が高ければ
裏側に印刷しているものや
次のページが見えてしまうという
裏抜けが起こりにくいんですね。
通常米坪が下がれば
不透明度も下がりますが
白色度が低ければ
不透明度があまり下がらない。
ということは低米坪に出来る
ということにつながります。
何が言いたいかというと、
紙は重量取引なので
米坪が低いほど購入側の
支払金額は少なくなるということ。
下級印刷師はとにかく安い紙
というわけですから
ギリギリまで米坪を下げて
購入コストを減らすんですね。
こんな感じで漫画雑誌の紙は
安く作る努力をしているんですが
ユーザーからのkg単価はそのままで
米坪を下げて紙厚を維持してくれ
というような目に見えない
コストダウン要求は厳しく
ボロ紙のはずなのに対応は大変だった
という記憶があります。
【本の紙質 写真集は何故重い?】
今度は逆に重い方のお話。
写真集は重いんですよね。
特に美術品なんかのやつは重い。
使われている紙の高級品ですが
なんでこんなに重いのか?
それはコート紙だから。
コート紙は塗料を塗工していますが
この塗料が重いんです。
紙の緊度で考えると
新聞紙なら0.55-0.65(g/c㎥)
上質紙なら0.80-0.90(g/c㎥)
コート紙は1.10-1.35(g/c㎥)
という感じ。
新聞紙とコート紙だと約2倍違います。
ここの緊度は密度みたいなものです。
単純に同じ厚みの本があれば
2倍重いということです。
その原因は塗料なんですが
塗料の成分は炭酸カルシウムとかクレー。
土というか泥というかそういう
鉱物が主成分です。
鉱物ですから密度は重い。
炭酸カルシウムなら約2.7g/c㎥
クレーなら約2.6g/c㎥
ということでほぼパルプの新聞紙と
比較すると約5倍重いわけです。
たとえば157g/㎡のコート紙で
塗工量が両面で40g/㎡なら
塗料は紙の中の25%を占めるわけで
そりゃ重くなるだろうということです。
ちょっと計算してみます。
コート原紙の密度が0.8g/c㎥
塗料の密度が2.6g/c㎥
だったとしたら
コート紙の密度
=0.8g/c?x75%+2.6c?x25%
=1.28g/c㎥
となります。
厳密には塗料密度はもう少し軽いですが
そんなに大きく外れていないはず。
写真集などはこういう高級コート紙が
全ページに使われています。
印刷上がりを良くするために塗料を
塗工するので重くなるんですね。
【管理人のまとめ】
今回は本の紙質について
お伝えしました。
普段、本の紙質なんてそんなに
気にしないと思いますが
漫画雑誌が軽かったり
写真集が重かったりというのは
パルプ配合や塗料など
それなりに理由があるんですね。
高級印刷用紙のコート紙への
品質要求が厳しいのは当然としても
更紙のような紙でも品質を下げずに
コストダウンしてほしいという要求がある。
管理人としては現在の本の紙質は
そのようなユーザーからの品質要求に
応えてきた結果だということを
理解してもらえればありがたいかなと。
本の紙質に色々あるということも
たまには思い出して下さいね!